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11 腐敗した無法地帯

 11 腐敗した無法地帯



 陽炎が王都を離れて三時間程、経った時、辺りを見回したら真夜中であった。

 氷に覆われた雪原が広がり、歩きにくい。思ったより、地方は無法地帯であった。

 違法に露店商売をしている爺さん婆さんに、物乞いが身なりの良い陽炎に高ってくるのだ。

 金貨を数枚渡すと、大喜びをしてはしゃいでいる物乞いを見て、この世界の闇を垣間見た。

 この瞬間、陽炎は悟った。自分は王都で何不自由なく育ったボンボンだと言う事に。


「想定以上だな……詩花を連れてこなくて正解だった」


 陽炎は東の大国の惨状を見て、大きく呟いた。詩花ならば到底耐えられないであろう。

 陽炎でさえ、目を背けたくなるような光景が広がっている。貴族の詩花には荷が重い。

 そんなことを考えていると野盗と思わしき集団が襲来し、周囲の物乞い達を襲っている。

 物乞い達には陽炎から金貨を惜し気もなく貰っているので、それに目を付けたのだろう。


「俺は大野盗集団のボス、換均(カンキン)見た所、金貨を持っているじゃないか?

 寄越せ! 全てだ! この換均様に全て寄越せ!」


 換均はその辺の兵士から剥ぎ取ったであろう、皮の鎧と錆びついた胴の剣を構えていた。

 他の部下たちはそれよりも質の更に悪いボロキレを身に纏っていた。

 王都の町並みに現れれば、憲兵団に速攻で取り押さえられるような出で立ちだ。


 ――蛮人共が……!


 弱者を挫く、野盗の非道な行いに陽炎の騎士としての矜持に火が付いた。

 そうと決めた陽炎は迅速に動き、野盗の部下の首を鷲掴みにし、蹴り上げて戦闘不能にさせる。

 その後も寄って攻めてくる部下たちを素手で、相手取り、次々と屠っていく。


「何だ……お前は?」


 野盗のボスである換均は無理やり、自分の物にした女を連れて、陽炎を興味深げに見ていた。

 換均の隣にいる珍しい深緑の髪の女性はやつれている。年は詩花と同い年くらいだろう。

 助ける義理はないが、陽炎は弱き者を見捨てる程、非情ではない。

 陽炎は女性を抱きよせている換均の顔面を一発、お見舞いした。

 換均は一瞬の内にノックダウンして地に伏す。他の部下たちも奇麗に片づけて、

 やつれた女性に駆け寄る。助けられて彼女は当惑していた。


「貴方様は……?」


「陽……いえ、隆景と申します。お怪我は無いですか?」


「はい……お助け下さり有難うございます。サラと言います」


「何処の村の娘ですか? 送り届けてあげましょう」


 サラは深々と頭を下げて礼を述べる。陽炎は敢えて前世の名前を名乗った。

 最早、守護騎士団長陽炎ではない。一介の旅人隆景だ。

 話しを聞くと彼女は一週間ほど掛かるクナ国の辺境に位置する村の娘だと言う。

 陽炎はサラを無事に村まで送り届ける事を承諾した。

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