神様のいない日 4-1
その光景を見て、私は悲鳴すら出ませんでした。
巨大な化け物のように蠢き、森や丘を飲み込む炎に私は目が離せません。
ただ全身がかたかたと震えて、力の入らない手から傘と籠が地面に落ちてしまいました。
砂糖の包みが水を吸っても、店主様から頂いた飴の小瓶がヒビ割れても気にする余裕もなく、私はただ家に向かって走り出しておりました。
炎を見上げる人々を謝罪の言葉と共に押し退けて走り、足に何か引っかかって、水溜まりの上に転んでしまっても、構わず立ち上がり私は家に帰らなくてはなりませんでした。
全力で走っているのに、不思議と苦しさはありません。ですが、心臓が破裂してしまいそうなほどに鼓動は早鐘を打っています。
絶対に足を止めてはいけない気がして、走り続けたのですが、街を出るというところで誰かに腕を掴まれて無理やり止められました。
「キミ、あの丘に行くならやめなさい!ここからでもあそこがどれだけ危ないかわかるだろう!」
「否定!!解放希望!わたしあの地のシスター!わたしの家族、あそこいる!」
私を止めたのは鎧を着た兵士様でした。
無理に振りほどこうにも、私の力では兵士様の手は振りほどけず、私は無力感に苛まれながら教会を見上げます。
火が大きくなって、少しずつ、少しずつ崩れていくのがわかりました。
住んでいた家が形を変えていくごとに、胸が絶望で締め付けられます。




