枯れ枝ミイラに名付けられる
木漏れ日が差し込む長老の間。
部屋の最奥には、樹木に半分飲み込まれたような干からびた人間の姿があった。
両腕を胸の前で交差させ、ミイラのようにそこに立っている。幾重にも絡みついた根が身体を抱きしめ、背中から頭まで、ほとんどが巨木に埋まっていた。
幅もわからぬ巨大な木の一部。その中に、ハイエルフと呼ばれる人間がひとり、樹木に取り込まれたまま立ち続けていたのだ。
術長と長老たちがその周りに静かに集まる。
『始祖たるハイエルフ様、お声を賜ることはできますか?』
枯れ枝のようなミイラに長老たちが問いかける。
<ああ―― 声は出せぬので念話に頼るが―― そのまま報告を――>
『はい、筋肉の訓練中に額の接続結晶が外れ意識が半覚醒しました。その後、へその緒に指が絡まり窒息状態となりましたため、胚膜切開がおこなわれ⋯⋯』
<仔細は生命の木の枝を継ぐように―― バイタルデータを―― >
長老たちが奥で報告と作業を続けている。
部屋の入口から、手術着を着せられた少女が運ばれてきた。
木製の術台に乗せられ、ハイエルフの前に置かれる。
まるで捧げられる生贄のようだ。
力なくだらりとした上半身が起こされ、長い前髪がかき分けられた。
側にいたエルフが指先に光を灯し、虚ろな目の前で光を左右にゆらす。
「目で追うことはできますか?」
まぶしさに瞳がうごく。
「意識、確認!」
一同の視線が少女に集まる。
「ハイエルフ様。再誕の儀を⋯⋯」
ひときわ年齢のいったエルフが低い声を広間に響かせた。
部屋に居た者たちはまるで祈りを捧げるように一様に膝まずく。
<お主の脳に直接話しかけておる―― わたしの声は聞こえるか?>
瞳をきょろきょろと動かし、声の主を探す。
側にいたエルフがそっと首を支えてくれる。
<聞こえたか お互い体も動かぬ 声もだせぬ 情けない状態じゃ――>
目線の先には、ミイラ。もしかして、このミイラ?
<わたしは800年以上を生きている――>
いや、そのカピカピ状態で生きているとはいわないだろ⋯⋯
<お主のオリジナルが死んだのは800年以上前だ―― >
死んでいたのは、こちらでした。ごめんなさい。
<細かくはこのものらに聞くがよい―― >
エルフの長老たちが頷く。
<お主は勇者として この世界に蘇った――
『勇者アンパト』 その名を授ける――>
平伏する長老たち。
勇者は混乱するも、すべてがどうでもよくなり、眠ってしまうのだった。




