表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/24

枯れ枝ミイラに名付けられる

木漏れ日が差し込む長老の間。

部屋の最奥には、樹木に半分飲み込まれたような干からびた人間の姿があった。

両腕を胸の前で交差させ、ミイラのようにそこに立っている。幾重にも絡みついた根が身体を抱きしめ、背中から頭まで、ほとんどが巨木に埋まっていた。

幅もわからぬ巨大な木の一部。その中に、ハイエルフと呼ばれる人間がひとり、樹木に取り込まれたまま立ち続けていたのだ。


術長と長老たちがその周りに静かに集まる。


『始祖たるハイエルフ様、お声を賜る(たわま)ことはできますか?』


枯れ枝のようなミイラに長老たちが問いかける。



<ああ―― 声は出せぬので念話に頼るが―― そのまま報告を――>


『はい、筋肉の訓練中に額の接続結晶が外れ意識が半覚醒しました。その後、へその緒に指が絡まり窒息状態となりましたため、胚膜切開がおこなわれ⋯⋯』


<仔細は生命の木の枝を継ぐように―― バイタルデータを―― >


長老たちが奥で報告と作業を続けている。


部屋の入口から、手術着を着せられた少女が運ばれてきた。

木製の術台に乗せられ、ハイエルフの前に置かれる。

まるで捧げられる生贄のようだ。



力なくだらりとした上半身が起こされ、長い前髪がかき分けられた。

側にいたエルフが指先に光を灯し、虚ろな目の前で光を左右にゆらす。



「目で追うことはできますか?」


まぶしさに瞳がうごく。


「意識、確認!」


一同の視線が少女に集まる。


「ハイエルフ様。再誕の儀を⋯⋯」


ひときわ年齢のいったエルフが低い声を広間に響かせた。

部屋に居た者たちはまるで祈りを捧げるように一様に膝まずく。




<お主の脳に直接話しかけておる―― わたしの声は聞こえるか?>


瞳をきょろきょろと動かし、声の主を探す。

側にいたエルフがそっと首を支えてくれる。


<聞こえたか お互い体も動かぬ 声もだせぬ 情けない状態じゃ――>


目線の先には、ミイラ。もしかして、このミイラ?



<わたしは800年以上を生きている――>


いや、そのカピカピ状態で生きているとはいわないだろ⋯⋯



<お主のオリジナルが死んだのは800年以上前だ―― >


死んでいたのは、こちらでした。ごめんなさい。



<細かくはこのものらに聞くがよい―― >


エルフの長老たちが頷く。


<お主は勇者として この世界に蘇った――

『勇者アンパト』 その名を授ける――>



平伏する長老たち。

勇者は混乱するも、すべてがどうでもよくなり、眠ってしまうのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ