第二十六話:それから
1話の長さは、大体1000~4000文字程度です。
この話の文字数:4045
視点:シエル
その日、ギルド本部に行くと、「白と黒」の二人の姿が見えた。
二人はいち早くこちらに気付き、近付いてきた。
ちなみに、今日はキセキ以外の4人が同伴している。キセキはエクラの特訓(言わばレベリング)の手伝いをしている。
巨大魔物の一件があったため、シン、アキラも冒険者登録をしてある(勿論レベルは偽装して)。偽装していると言っても、あの魔物を倒しているのは周知されてしまっているので、低いレベルを装うのは難しかった。なので、レベル60という事になっている。本来のレベル87は流石に不味いが、このくらいなら人間でもギリギリ有り得る範疇だろう。二人とも、見た目は人間の少年少女なので、変な振る舞いをしなければ大丈夫…だと思う。
…レベル60の少年少女なんてだいぶおかしい、と言う話は置いておいて。
「こんにちは、シエルさん。今日はキセキ様はご一緒では無いんですか?」
「おかえりなさい、ヴァイスさん、シュヴァルツさん。今日はキセキは用事があって。すいません。」
「それより、仲間が増えたのか?今度はどんな化け物を連れてきたんだ?」
「化け物って…。この子達は化け物かもしれませんが、キセキは化け物じゃないですよ。」
「ちょ、大将、酷くない!?」
ワタシは抗議するシンをスルーし、仲間の紹介を始める。
「えーと、緑の女の子がシン。橙の男子がアキラ。青いのがミロ、藍色がモネです。」
「モネさんって、月魔法のスペシャリストっていう…?」
「あら?もしかして、月属性魔法を教えるのって、この方達?」
「この方達っていうか、シュヴァルツさんだね。彼は月属性に適正があるみたいだから。」
「…人間で月属性、か。エクラ君もそうだけど、結構苦労があったんじゃないかしら?」
「そうだな。ここまで上り詰めるのも大変だったぜ。それよりもだな…」
シュヴァルツさんが何かを話そうとした時、ヴァイスさんが話を遮った。
「あの…皆さん?ちょっとここだと周りの目があるので、場所を移しませんか?」
「確かに…ここでは込み入った話も出来ないわね。」
私達は、ギルドの個室を借りる事にした。
「…こちらも聞いていいでしょうか?そちらの方は誰ですか?」
個室に入る前に、二人が連れてきた謎の人物。小柄で、いかにも「魔法使いです」というような服装。帽子を深く被っていて、顔はよく見えない。
「ああ、これから紹介しようと思っていたんだ。この方は、「王立第三魔法学校」の校長先生だ。」
「よろしく。」
思ったより若い声が聞こえてきて、ワタシは少々驚く。そして、もう1つ驚く。
「王立第三魔法学校って…確か、来月からうちの兄様がお世話になるらしいです。」
「へぇ。君の兄か。少し気にかけてあげようかな。」
校長さんは、最低限の事しか喋らないようにしているように思える。こちらの出方を伺っているのだろうか。
「お前、兄貴が居たのか。化け物の兄貴、どんな化け物なんだろうな…。」
「兄様は化け物じゃないですよ。いずれそうなる可能性は否定できないですが。」
「自分が化け物だってのは否定しないんだな。」
「…人に向かって化け物、化け物って…失礼ですよ?」
ワタシはシュヴァルツさんを睨んだ。
「悪い、悪い。それよりだ、どうせそいつらも人間じゃないんだろ?改めて紹介してくれよ。」
「そうですね。私としては、ミロさんが一番気になります。私の感覚が間違っていなければ、貴女は…あの時の…?」
「…貴方達ほどの実力者なら、わたくしの正体を見破られても仕方ないとは思っていましたが。ましてや、一度戦った相手ですものね。」
「やはり、そうなのですね。」
「わたくしの名はミロ、第3級の悪魔ですわ。第3級というのは、10階級あるうちの上から3番目ですわね。そして今はシエル様の忠実なる僕…。お気づきの様に、あの時貴方達と戦った悪魔はわたくしです。」
「やはり…。あの時視えた色と同じ色を、貴女は纏っていましたから。」
「そうなのか。確かに、アレと同等の量の力が渦巻いて見えるが…。いや、前よりちょっと多いか?」
公式情報によると、ヴァイスさんは「色鏡」、シュヴァルツさんは「単黒」という特殊スキルをそれぞれ持っていて、それぞれ力の質、量を視る事が出来るという。ワタシの「集光魔眼」は、厳密に言えば視るものは少し違うが、一定量以上か以下か、くらいの情報しか見られないので、二人のスキルの劣化版みたいなものだ。
「それはそうと、他の奴らも異常だろう。モネさんは力の量がブレててよく分からん。シンとアキラは…明らかにレベル80以上あるだろ。で、何者なんだ?」
「モネは…正体を見ても驚かないで下さいね?」
ワタシは合図して、モネの「正体隠蔽」を解除させた。
「…これは驚いた。」
真っ先に反応したのは校長先生。驚いているというより歓喜しているような声色だったが…。
「人間じゃないなら、確かに、人間が知らない魔法を知ってても不思議ではない…な!」
シュヴァルツさんは苦笑いしながらそう言う。
「一応、従魔契約で縛っていますので、無駄に人を襲ったりはしないです。」
「本当に縛れてるのか?それは…。」
「あら、言われなくとも人間は襲わないわよ?だって美味しくないもの。」
「…そうか。」
恐らく、シュヴァルツさんは、「二人掛かりならモネを倒せるか」を考えている。多分、二対一なら流石のモネでも敵わない。この後月魔法も教えてしまうし。
「お二人にモネを倒させるような事にはさせませんので、ご安心を。」
「お、おう…。顔に出てたか?俺。」
「出てましたね、凄く。」
そういえば、ヴァイスさんがさっきから黙ったままだ。何かあるのだろうか。
「ヴァイスさん、すいません、驚かせてしまいましたか?でもモネは、ワタシの…」
「いえ、そうではないのですが。少し離席してもよろしいですか?」
「大丈夫か?すまんが俺も一旦着いて行かせてくれ。」
白と黒の二人が部屋を出て、部屋の中にはワタシ達5人と、校長先生が残った。
…お互いの直接の知り合いが居ない状態は、非常に気まずい。
「えーと。何か話しましょうか?」
「そうだね、それじゃあ、一番訊きたい事を訊こうか。月属性っていうのは、一体何だい?」
「月属性とは…」
と、ワタシが話そうとしたら、モネが口を塞いできた。
「それは私が説明するわ。まず月属性というのは…。」
あ、まずい、モネは火がつくと止まらない。これは長くなるぞ…。
視点:ヴァイス
「大丈夫か?…もしかして、蜘蛛、苦手か?」
「いえ、そういうわけでは無いのですが。彼らから視える「色」が、特異で、怖くなってしまって。」
「特異…?どう、変なんだ?」
「シエルさんは、混ざり切らない多数の色…。言うならば、「虹色」のように見えます。私が初めてシエルさんを見た時に感じた違和感はそれです。あのような色を他で見た事はありません。」
「…なるほど。続けてくれ。」
「キセキ様は、人の姿を取っている時は黄色と橙色が多く、そこに他の色が少し混ざるような感じだったのですが、天使の姿の時は、混じりけの全くない黄色です。純粋な、黄色。」
「それで?」
「キセキ様だけが特殊なのかと思っていましたが、ミロさんも、シンさんも、アキラさんも…皆、混じり気の無い純粋な色に視えました。モネさんは違うのか、と思っていたら、真の姿を現した後は、綺麗な藍色、一色でした。」
「純粋な…。なるほどな。」
「私達は、シエルさんの事を「魔王に近しい者」だと推測していましたが…もしかして、魔王本人なのではないかと思って。彼らは、かつての主の元に集い、従っているのではないかって。」
「…俺は難しい事はよく分からん。だが、あいつらは少なくとも俺達に友好的に接してきている…。最初の時なんて、ただの、冒険者に憧れる子供にしか見えなかった。悪意があるようには…、思えなかったな。」
「シュヴァルツさん、月属性魔法、本当に習うのですか?」
「どっちみち今の戦力じゃ、俺達があいつらをどうにかしようってのは無理な話だろ。あのモネってやつは正直よく分からん。だが、今利用できるものは全て利用したい。」
「…分かりました。それに私にも、シエルさんが悪い人には見えなかったんです。」
「まぁ、なるようになるさ。心配するな。」
「はい。」
私達は話を終え、部屋の扉に手を掛けた。
視点:シエル
「…と言う感じよ。」
モネの月属性語りがようやく終わった。10分くらい続いていたかな?
「…素晴らしい。あたしが進めていた「第七の属性」の研究のその先が見られるなんて。」
「満足してくれたようで何よりだわ。」
「第七の属性の研究とは、一体何をしていらっしゃったのですか?」
ワタシは何となく訊いてみた。
「あたしの研究か。まぁ、大した事じゃないよ。まず、うちの学校には、元々1学年に6つのクラスがあったんだ。ま、言ってしまえば各属性1クラスずつだね。それを7つに増やした。「適正無し」の子を入学させるために、新しいクラスを作ったんだよ。そのクラスでは、属性適正が関係ないアーティファクトの作成などを教える。そして、彼らの魔力からデータを取らせてもらっているんだ。その結果、彼らは皆似た質の魔力を持っている事が分かった。それと、あたしは、人間の属性適性が各属性ごとに7人に1人、残りの1/7は適正無し、ってのに違和感を感じていた。これらから導かれた結論は…」
「七つ目の属性がある、ってわけね。」
「そういうわけだね。ただ、属性の存在には気づいたものの、その属性がどんなものか分からなかった。だからその属性がどんな魔法が使えるかも分からず、研究は行き詰っていたんだ。そんな時に、「白と黒」の二人から噂を聞いてね。どうやら、「月属性」ってものがあるらしいと。」
「それで貴女はワタシ達に会いに来た、と言う訳ですか。」
「そうだね。それでだね、単刀直入に言うけど…」
部屋の扉が開いた。二人が戻ってきたらしい。校長先生は構わず続けて、こう言った。
「君たち!ウチの学校に来ないかな!?」
突然の誘いに、ワタシ達は困惑した。
26/50話です。
最近投稿していなかったのは「書くのが進んでいないから」ではなく「投稿する作業が面倒だから」です。
あとがき書くこと無いな今回。校長が新登場しました。あと文字数がちょっと長くなっちゃった。




