結婚ですか? 気絶しますよ……。 3
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本日二回目の投稿です。
そんな欠陥伯爵令嬢であるわたしの元に、奇跡の縁談が舞い込んできたのは、冬も半ばのことだった。
縁談を探すと言ったものの、デビュタントパーティーで気絶してそのままフェードアウトしたわたしに、そう簡単に縁談なんて来るはずもなく、お父様が「いっそ適当なところの後妻に……」とうめきだした矢先のことだった。
ポンコツ、役立たず、無能……。そんな形容詞には事欠かないわたしに縁談が舞い込んできたことに、嫁ぎ先を探していたお父様のみならずお母様とシュザンヌも驚愕した。
「まあ、本当ですの? からかわれているのではなくて? そうでなければ、きっとお年を召した老人なのよ。いいことアナイス。夫が死んだからと言って我が家に舞い戻ってきては行けませんよ。嫁ぎ先で骨をうずめなさい。わかったわね⁉」
わたしをやっと追い出せると喜んだお母様は、わたしが出戻る可能性に気づいて特大の釘を刺してきた。
「よぼよぼのおじいちゃんじゃなければ、きっと脂ぎったふとったおじさんね。お姉様、いくらいやでも帰ってこないでね。わたしも未来の旦那様も、お姉様を養うつもりなんてないもの。お姉様って本当、我が家の不良債権だわ」
勉強嫌いな妹よ、不良債権なんて難しい言葉、知っていたのね。おねえちゃん、感動よ。
「あー、アナイス、相手はちょっと持参金に色を付けてくれれば、社交をまったくしないお前でも構わないと言っている。むしろ社交の支度に金を使わないお前は大歓迎だそうだ。心行くまで引きこもり生活を謳歌するといい。ただし、我が家には迷惑をかけるなよ」
まあお父様! 引きこもりオッケーの相手を本当に探してきてくれたの⁉ 全然期待していなかったのに、素晴らしいわ!
持参金に色、だの、社交の支度に金を使わない、だの、少々不穏な言葉は交じっていたが、わたしはそんなことはまったく気にならなかった。
つまり、引きこもり生活継続である。素晴らしい!
最も重要な点が解決したので、もうこれ以上確認することはないなとわたしが満足している横で、お父様たちの話は続いていた。
「で、いったいどこの誰ですの、あなた」
「そうよ、いくらおじさんでも、引きこもってもいいなんて言う貴族なんているの、お父様」
「没落貴族だからな、跡取りは必要だが、引きこもって金を使わないのは大歓迎らしい。あちらにしたら待ってましたの好条件だそうだ」
「没落⁉ あーまあ、お姉様にはお似合いね。いいんじゃないかしら。引きこもれさえすれば、毎日パン一個でも我慢しそうだもの、お姉様って」
「それで、どこの家です?」
「ルサージュ伯爵家だ。数年前に日照りが起こり、そのあとで蝗害が発生し、税収が落ちて大きな借金を抱えたところで先代が亡くなった。相続税だなんだとまた借金。家計は火の車だそうだ」
「あ、それなら聞いたことがあるわ! 来年二十一歳になる若い伯爵様でなかなかのイケメンだけど、お金がないのはちょっとねって噂よ。まあ、おじさんじゃないだけ好物件じゃないの。お姉様には。わたしなら絶対に嫌だけどね」
ほうほう。なかなか大変なおうちらしい。でも、シュザンヌの言う通り、わたしは引きこもれるなら毎日パン一個でも構わない。
「あら、じゃあ結婚式はどうなさるの? あちらはお金がないんでしょう?」
お母様がおかしなことを言いだした。
結婚式? わたしがそんなものに出席できると思いますか?
お金がないなんて最高じゃない。
きっと結婚式も省略してくれるわ。
つまりお引越ししたその日に引きこもり生活よ。素晴らしい!
すると、お父様が余計なことを言った。
「仕方がないからうちが金を出すことにした。さすがに式も挙げずに嫁がせるなんて、我が家がまるで邪魔者を追い出したようで外聞が悪い」
「その通りでしょ、お父様」
「そうだとしても、だ。体裁は整えねば」
なんですと⁉
わたしは愕然と目を見開いてお父様を見た。
お父様は、無常だった。
「そういうわけだから、急いでドレスを作るぞ。春には結婚式だ! 相手の気が変わる前に、アナイスを押し付けなければ! やっぱりいらないと言われたら目も当てられん!」
わたしは言わずもがな、放心した。
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