結婚ですか? 気絶しますよ……。 1
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本日二回目の投稿です!
わたし、アナイス・カンテは役立たずなポンコツ令嬢である。
これは、幼いころから両親と妹に言われ続けてきたので、間違いない。
第一、わたしは自分を客観的に見つめたときに、自分がポンコツであるという事実を認めざるを得なかった。
とはいえ、それを正そうとする勇気は、これっぽっちも湧き起らないのであるが。
わたしは、物心ついたくらいから、どうやら対人恐怖症であったらしい。
それは血を分けた父や母、妹であっても例外ではなく、目を見て会話をするというのはまず不可能。
話しかけられれば脳がフリーズし、「あぅ」とか「ふわっ」とかいう意味を持たない言葉しか口から出てこなかった。
その上、超がつくあがり症なので、目立つなんてもってのほか。
社交パーティーはおろか、邸の外にすら出られない、もはや目も当てられないポンコツぶりだ。
そんなわたしに、両親は早々に匙を投げた。
我がカンテ伯爵家は、わたしと妹の二人しか子供がいない。
そのため、ゆくゆくはわたしか妹が婿を取って伯爵家を継がなければならないのだけど、社交がまったくできないわたしにはその荷はあまりに重すぎた。
両親とて、次の代で伯爵家を潰したくない。
わたしはあっという間に跡継ぎ候補から脱落し、カンテ伯爵家の大きなお荷物と化した。
両親はわたしに何一つ求めなくなったが、その分あたりも強くなった。妹のシュザンヌもだ。
だけど一日の大半を部屋で引きこもって過ごしているわたしは、両親や妹の冷たい視線もあんまり気にはならなかった。
だって、食事の時にしか顔を合わせないし、その時すらわたしは会話に参加しないから。
「まったく、中身が中身なら、外見もぼやっとしているんだから!」
お母様がぶつぶつと文句を言っても、「まあそうですね」という感想しか抱かない。
わたしの髪は「ぼやっとしたクリーム色」だ。これはお母様とシュザンヌが昔から言っていたので間違いない。
シュザンヌは華やかな金髪なのに、わたしは「ぼやーっ」と色素の薄いクリーム色で、長く伸ばした前髪で顔の半分を隠してしまっているから余計に「ぼやーっ」としている。
前髪に隠れた緑色の瞳はお母様譲りだけど、お母様はそれも気に入らない。
わたしのようなポンコツな娘に自分の血が流れているのが許せないとばかりである。
……お父様に「あなたに似ているからこうなったのよ」って言いたいのよね。だけど、何となく外見はお母様の方の血が濃いから、それを言えなくて悔しいのよね。
お母様は自分の外見に自信を持っている。
確かに美人だ。
一つ年下のシュザンヌもお母様譲りの美人。
だからこそ、わたしのような娘は「わたくしの血ではなくあなたの血よ!」とお父様に言いたいらしい。
……エンドウ豆の遺伝の法則によると、収集な種子を掛け合わせても一定確率でポンコツなエンドウ豆ができるっていうし、そういうことなんじゃないかしら?
なんて思ったけど、もちろん口には出さない。
まずわたしには誰かと会話なんてできないし、万に一つ思ったことを口に出せたとしても、お父様たちから烈火のごとく怒られるだろう。
自分のポンコツ具合を棚に上げて「遺伝の法則が~」などと責任転嫁すれば、怒られるのはわかり切ったことだった。
今日も今日とて、我が家の朝食の席では、お母様がわたしのぼんやり具合に腹を立て、シュザンヌが嗤い、お父様があきれ、それから十分もすればわたしは忘れられた。
黙々と食事をするわたしの存在をまるっと視界の外に追い出して、お父様たちは楽しそうに先日のパーティーのお話をしている。
「シュザンヌも来年は十六歳だ。そろそろ良縁を見つけてやらなければならないな」
「嬉しいわお父様! 素敵な人にしてね!」
「もちろんだ。我が家を盛り立ててくれる優秀な男を探すよ」
「もう、そうじゃなくて、かっこいい人にしてねってことよ!」
「シュザンヌ、中身がよければ外見もいいに決まっているよ」
いいえお父様、中身と外見は必ずしも比例しないのよ。外見は遺伝できても、中身は努力しなければ成長しないもの。
そう思ったけど、わたしはもちろん口には出さないし、出せない。
もっもっもっと口に入れたパンを咀嚼するのに集中しているわたしを放置して、お父様たちの会話は続いた。
「わたし、十八歳で結婚したいわ。二十歳過ぎたら売れ残りなんて言われるのよ。そんなのたえられない!」
「大丈夫だシュザンヌ、お前はとっても可愛いんだから、すぐに相手が見つかるよ。よりどりみどりだ」
「ほんとう?」
「ああ。自信を持ちなさい。すぐにこの家に婿が――」
お父様はそこまで言って、ふと、わたしの存在を思い出したらしい。
「……婿が、くるなあ」
その、「あ、どうしよう」という雰囲気に、わたしはふとパンをちぎる手を止めて顔を上げた。
お母様もシュザンヌも一斉にわたしを見る。
シュザンヌが顔をしかめ、言った。
「お父様、お姉様って、このままうちにいるの? ずっと?」
妹よ、そんなに邪険にしなくていいじゃないの。そう思ったけれど、言いたくなる気持ちも、まあ、わかる。
お父様は顔を引きつらせ、言った。
「アナイス、お、お前にも、縁談を探してやろうな」
いいえお父様、お構いなく。
結婚するくらいなら、田舎に小さな家を買って引きこもります。
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