第42話 FINAL STEP
読みに来てくださってありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは本編をどうぞ。
第42話 FINAL STEP
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Battle Start!!
セレナ HP100
アルベルト HP100
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「エヴァンス嬢。」
「覚悟してもらおう。」
静かな声だった。
だが、その声には今までにない強さがあった。
今日のアルベルト様は本気ですわ。
こちらも覚悟を決めなくては。
私は胸を張り、一歩前へ出た。
「アルベルト様。」
「今日は少し近くで、お話ししたくなりました。」
渾身の上目遣い。
歴代最高クラスの近距離攻撃。
しかし。
アルベルトは、ほんの少しだけ微笑んだ。
「今日はずいぶん積極的だな。」
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アルベルト
HP100 ▶100
Perfect Guard
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まったく効きませんの!?
額に汗が伝う。
その時。
アルベルト様が、一歩踏み出した。
「次は私の番だ。」
周囲の歓声が遠ざかった。
アルベルト様は、私へ歩み寄った。
「……失礼する。」
そう言って、私の栗色の髪を一房だけ、そっと指先ですくい上げる。
えっ……。
距離が近い。
思わず息をのむ。
アルベルト様は、私の髪を見ながら、小さくつぶやいた。
「君は……。」
「いつ見ても、可愛いな。」
その声は、決闘のための挑発ではなかった。
そう言って、彼は私の髪へ口づけを落とした。
「!」
ドクンッ!
私の心臓が跳ね上がった。
周囲から悲鳴にも似た歓声が上がる。
「きゃあああああ!」
「髪にキスしたぞ!」
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セレナ
HP100 ▶60
Critical hit!
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なっ、何ですの今の攻撃はーーっ!!
40ダメージなんて!
は、反則級ですわーーっ!!
これ以上、アルベルト様の攻撃を受けるわけにはいきません。
そう思ったその時。
アイリスの言葉が頭によみがえった。
『素直な気持ちを伝えるのも、作戦の一つだと思います。』
私は顔を上げた。
もう。
作戦なんてなかった。
聞きたいことが、一つだけある。
「アルベルト様。」
私はまっすぐ彼を見つめる。
「私たちって……どういう関係なのでしょう?」
周囲が静まり返った。
アルベルト様は、何も答えなかった。
私は、急に恥ずかしくなってきた。
……私、何を聞いていますの?
こんな質問。
まるで――
私が、アルベルト様に何かを期待しているみたいではありませんか。
「……やっぱり」
私は少しだけ視線を落とした。
「決闘中に、こんなことを聞かれても困ってしまいますわよね」
自分でも、何を言っているのかわからなくなってくる。
けれど。
一度、口にしてしまった言葉は止まらなかった。
「先日、アルベルト様が我が家に来てくださったでしょう?」
「その時、父と母にも聞かれましたの」
「アルベルト様とは、どういうご関係なのか、と」
私は苦笑した。
「私も最初は、決闘相手と答えましたわ」
「けれど……」
「どうしても、しっくりこなくて」
アルベルト様は、黙ったまま私を見ていた。
「最初の頃は……ただ、怖い方だと思っていました」
「グランベルカードを持つ、学院最強の敵」
「簡単には勝てない相手だと」
「けれど。」
今は違う。
私は、目の前のアルベルト様を見る。
「一緒に過ごした時間の中で」
「優しいところも」
「不器用なところも」
「私のことを、ちゃんと見てくださっていることも」
ひとつずつ思い浮かべる。
「今は、たくさん知っています」
「だから……」
胸の奥が、少しだけ苦しくなる。
「もう、ただの決闘相手だとは思えなくて」
「………」
アルベルト様は、何も言わない。
その沈黙が怖くなって。
私は、思わず言葉を重ねた。
「それなのに……」
「私は、アルベルト様を避けるようなことをしてしまいました」
「本当に、ごめんなさい」
「…………」
返事がない。
……やっぱり、困らせてしまいましたわ。
私、何をしているんですの?
赤面決闘なのに。
勝たなくてはいけませんのに。
どうして私は――。
こんなことばかり話しているのだろう。
「アルベルト様にとったら……」
私は、少し震える声で呟いた。
「私なんてたくさんの学生の中の一人にしかすぎませんのに……」
その瞬間。
「それは、違う!」
アルベルト様が、初めて声を上げた。
私は、びくっと肩を震わせる。
「私の言葉が足らないばかりに誤解をさせてしまってるようだが…」
「私は………君のことを、特別に思っている」
「……特別?」
「それは」
「特別な仲間……ということですか?」
「違う」
即答だった。
私は、ますますわからなくなる。
「それでは……」
「アルベルト様にとって、私はどういう相手なのですか?」
「…………」
彼は黙り込む。
私も黙った。
二人の間に、長い沈黙が流れる。
……私、どうしてこんなことばかり聞いているのかしら。
これでは、勝つための会話になっていませんわ。
今からでも、何か作戦を……。
「私は」
アルベルト様が、静かに口を開いた。
黄金の瞳が、まっすぐ私を見つめる。
「私は、エヴァンス嬢が……好きだ」
ドクン――。
心臓が、大きく跳ねた。
「……え?」
頭が真っ白になる。
「あ……誤解しそうになりましたわ」
必死に言葉を探す。
「お仲間として……ですわよね?」
「セレナ」
「……!」
その呼び方に、胸がまた大きく鳴った。
「君が好きだ」
「ずっと……好きだった」
心臓が、頭の中をバクバク音をたてて響き渡る。
「…………」
何を言われているんですの?
アルベルト様が?
私を?
好き?
お仲間としてではなく――
私自身を?
「もし、良かったら……」
アルベルト様の頬が、少しずつ赤く染まっていく。
「私と付き合ってもらえないだろうか」
「…………」
こ、これは……。
演技ですの?
それとも――。
私は、胸元で両手をぎゅっと握った。
私も。
心の底では、本当は――。
「……私」
ちらりとアルベルト様を見る。
彼の真剣な表情を見ていると、胸が苦しくなるほど高鳴った。
「あぁ……」
私は、口元を両手で覆った。
「この気持ちを外に出しては……いけませんのに」
もう、誤魔化せない。
私の気持ちは――
ずっと前から、ここにあった。
「アルベルト様、私も……」
顔が熱い。
心臓が壊れてしまいそう。
それでも。
私は、まっすぐ彼を見た。
「私も、アルベルト様が好きです」
「私でよかったら……お付き合いさせてくださいませ」
二人とも、ゆでだこのように真っ赤になった。
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セレナ HP60 ▶ 1
Danger!
アルベルト HP100 ▶ 0
KO
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『赤面決闘、終了。』
『勝者、セレナ・エヴァンス』
カァァァン!!
カァァァン!!
カァァン!!
試合終了を告げる鐘が、学院中へ高らかに鳴り響いた。
「…………」
「…………」
中庭が、静まり返る。
誰も動かない。
声も出ない。
そして――。
「……え?」
最初に、一人の生徒から小さな声が上がった。
「今……告白した?」
「セレナさん、アルベルト様に告白したよな?」
「いや、アルベルト様が先じゃなかったか!?」
「え? じゃあ……両想い?」
「ええええええええっ!?」
一気に、中庭が騒然となる。
「ちょっと待って!」
「今のって決闘の演技だよな!?」
「いや、でもあの顔……!」
「本気にしか見えなかったぞ!」
「誰か説明してくれーーー!!」
外野が一斉に騒ぎ始める。
けれど。
当の本人たちは――。
「…………」
「…………」
お互いの顔を見つめたまま、完全に固まっていた。
赤面決闘のことなど。
もう、頭の中から綺麗さっぱり消えている。
私は、ふと我に返った。
「あ……」
小さく呟く。
「私……」
「勝ちましたわ……」
「勝ちましたのね……」
ようやく、決闘の結果を思い出した。
けれど。
それよりも――。
ちらり。
目の前のアルベルト様を見る。
アルベルト様も、こちらを見ている。
その顔は――。
真っ赤だった。
(…………なんということだ。)
(赤面決闘で、告白してしまうとは…。)
(彼女の答えは、真実なのか?)
(それとも、赤面決闘に勝つための演技だったのか……。)
二人の間に、気まずい沈黙が流れる。
やがて。
アルベルト様が、おそるおそる口を開いた。
「あ……エヴァンス嬢。」
「今のは、その……」
少し視線を逸らしながら。
「演技……なのか?」
「……!」
私は目を見開いた。
そして。
「アルベルト様!」
彼がこちらを見る。
私は頬を赤くしながら、少しだけ胸を張った。
「セレナとお呼びくださいませ。」
「…………!」
アルベルト様が、驚いた顔をした。
「……セレナ。」
その声を聞いただけで。
胸が、また大きく跳ねた。
ドクン。
私は胸元に手を当てる。
「先ほどの赤面決闘。」
「私は……途中から、自分の正直な気持ちでお話しさせてもらっていましたわ。」
「アルベルト様はいかがですか?」
彼は、一瞬言葉を失った。
「…………」
周囲が、再び静まり返った。
さっきまで大騒ぎしていた観客たちも、二人の答えを待っている。
そして――。
「わ……私も。」
アルベルト様は、真っ赤になった顔のまま。
小さな声で答えた。
「本心だ。」
「…………!」
「先ほどの言葉は……すべて、私の本当の気持ちだ。」
一瞬。
その場が完全に静まり返る。
そして――。
「きやあああああああああ!!」
「本物だったーーー!!」
「両想いだーーー!!」
「本当に付き合うんだーーー!!」
再び、中庭が歓声に包まれた。
けれど私は、そんな騒ぎが遠く感じるほど。
目の前のアルベルト様から、目を離せなかった。
「アルベルト様……」
「私は……」
言葉が詰まる。
こみ上げてくる気持ちを、必死にこらえる。
「私なんかで、アルベルト様と釣り合うのか……」
「正直、まだ分かりません。」
アルベルト様の黄金の瞳が、静かに私を見つめている。
私は少しだけ苦笑した。
「けれど。」
そのまま顔を上げる。
「アルベルト様の想いを知ってしまったら。」
「私はもう、自分の気持ちに蓋をすることが難しくなりました。」
そして。
私は、飛び切りの笑顔を返した。
「アルベルト様のお気持ち、とても嬉しかったですわ。」
「これからも、よろしくお願いいたします。」
「…………」
アルベルト様は、しばらく何も言わなかった。
やがて。
ほんの少しだけ口元を緩める。
「……ああ。」
「こちらこそ。」
その声は、今まで聞いたことのないほど優しかった。
二人とも、真っ赤な顔のまま。
それでも。
顔を見合わせて、小さく笑った。
――こうして。
前代未聞の「告白」を経て――
二人は、晴れて恋人同士となったのだった。
【FINAL STEP・完】
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
セレナとアルベルトの「赤面決闘」も、ついに決着しました。
最後の最後で、まさかの告白まで飛び出しました。
果たして二人は、このあとどうなっていくのでしょうか。
残すところ、あと1話。
次回はいよいよエピローグです。
二人のその後を、最後まで見届けていただけたら嬉しいです。
それでは、もう少しだけ。
最後までお付き合いくださいませ。




