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氷の貴公子(生徒会長)、貧乏令嬢の一挙一動に毎日心臓が爆発しそう。〜照れたら負けの【赤面決闘】を挑まれていますがもう限界です〜  作者: 杜英智
最後の赤面決闘編

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第39話 決闘相手

読みに来てくださってありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ。

第39話 決闘相手


昼休みの廊下は、来月の予定表を眺める生徒たちで賑わっていた。


「来月は実技試験だって!」


「そろそろ学園祭があるわね。」


その横で私は、一人財布を開いた。


中には銀貨が数枚。


指で数えても、結果は変わらない。


「……足りませんわ。」


今月の学費が、どう計算しても足りない。


お父さまが頑張ってくださっているとはいえ、すぐに家計がよくなるわけではない。


夏休みのアルバイト代で先月は何とかなった。


だけど今月は違う。


「……グランベルカード。」


私は小さくつぶやいた。


「あれさえあれば、学費は免除になりますのに……。」


Fクラス前の廊下。


私は大きくため息をついた。


最近の私は、ことあるごとにここを訪れていた。


「アイリス。」


「困りましたわ。」


アイリスは少し考え込み、やがて静かに口を開く。


「赤面決闘の狙い目は、キリル王子だと思います。」


「やはり、そう思いますか?」


私はさらに踏み込むように、問い返した。


「セレナ先輩は、キリル王子に対して、これまで一度も負けておられません。」


アイリスは考え事をするように、人差し指を口元へ添える。


「一番勝てる可能性が高いと思います。」


私は両手を合わせた。


「やっぱり!」


「そうですわよね!」


「はい!」


「たとえ変な条件を出されたとしても!」


「まずはグランベルカードを手に入れてから考えればいいことです!」


「学費免除が最優先です!!」


私は思わずアイリスの両手を握った。


「さすが、アイリス!」


「ありがとうございます!」


「あなたとお友達になれて、本当に良かったですわ!」


アイリスも照れくさそうに笑う。


「それでは、キリル王子のところへ参りましょう!」


「私もお供します!」


私は、笑顔で頷いた。


「いざ、赤面決闘を申し込みますわ!」


◇


特待生クラス前。


ここは、今日も人で賑わっていた。


剣術の話をする者。


魔法の練習へ向かう者。


その中心で、キリル王子は相変わらず大勢に囲まれている。


私はその輪をかき分けるように前へ出た。


「キリル王子ー!」


元気よく手を振ると、教室からキリル王子が顔を出した。


「おっ!」


「セレナ!」


「お前から会いに来るなんて、また決闘か?」


「その通りです!」


「他に用事ないのかよ。」


「ありません!」


「即答かよ!」


その横でイーゴリさんが中指で眼鏡をくいっと押し上げた。


「セレナ殿。」


「赤面決闘の件ですか?」


「はい!」


「お願いしに参りました!」


イーゴリさんは少し申し訳なさそうな顔になる。


「それが……少し遅かったですね。」


「え?」


「王子は先日、一年相手に敗北しました。」


「今月はもう決闘資格がありません。」


「自慢じゃありませんが、ここへきて1勝もしておりません。」


「言うな!相性が悪かっただけだ!」


「 ……………そんな。 」


私はその場に崩れ落ちそうになった。


アイリスも青ざめる。


「それでは。」


私は気を取り直す。


「クララにお願いしましょう!」


ちょうど廊下の向こうから、クララが数人の女子生徒と談笑しながら歩いてきた。


私に気付くと、いつもの柔らかな笑顔を向けてくれる。


「クララ!」


「赤面決闘をお願いしたいのですが!」


「あー……。」


クララは困ったように笑う。


「ごめんね。」


「私、一年生に負けちゃったの。」


「クララも……。」


私は力なく肩を落とした。


その時だった。


「エヴァンス嬢。」


聞き慣れた落ち着いた声。


思わず背筋が伸びる。


振り返ると、そこにはアルベルト様が立っていた。


「どうかしたのか。」


私は思わず笑顔を作る。


「いえ!」


「何でもありませんわ!」


「それでは失礼いたします!」


私は足早にその場を離れた。


「セレナ先輩!」


アイリスが慌てて追い掛けてくる。


人気の少ない中庭へ着くと、私は立ち止まった。


「ごめんなさい、アイリス。」


私は校舎の壁にもたれ、小さく息を吐いた。


「私、アルベルト様に勝てる気がしませんの。」


「ですが、もう選択肢はありませんよ。」


アイリスは首をかしげる。


「赤面決闘って、心理戦でしょう?」


「でも……。」


私は空を見上げた。


青空には、ゆっくりと白い雲が流れている。


学院の庭では、生徒たちの笑い声が聞こえた。


私もあんなふうに笑えていたのに。


昨日の海辺が、ふと頭をよぎった。


アルベルト様と二人で見た花火。


とても綺麗だった。


だけど、


花火が綺麗であればあるほど、彼の隣にいる自分が、ひどく場違いに思えた。


私は慌てて首を振った。


そして、これまでの決闘が頭をよぎる。


「好きです。」


何度も口にした言葉。


勝つためだけに。


相手を赤面させるためだけに。


それなのに――。


今は、その一言さえ口にできる気がしなかった。


思い浮かぶのは、


病気のお母さまを心配して、お見舞いに来てくださった姿。


お父さまと真剣に向き合ってくださった姿。


海辺で見た、少し照れた笑顔。


一つ思い出すたびに、


胸の奥が少しだけ苦しくなる。


「アルベルト様のいろいろな一面を知ってしまったら……。」


「もう、アルベルト様に嘘をついて騙すなんて。」


「私にはできませんわ。」


「あの。」


「セレナ先輩はアルベルト様のことがお好きなのですか?」


「え?」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


「わ、私とアルベルト様を同じ枠の中にいれて考えたことなんてありませんわ!」


「身分相応という言葉がありますもの。」


「それに、私は赤面決闘のことで頭がいっぱいですわ」


胸の奥がチクリと傷んだけれど、私は気づかないふりをした。


アイリスは少し考え込んだ。


そして静かに口を開く。


「でしたら。」


「決闘が終わるまで、少し距離を置かれてみてはいかがでしょう。」


「え?」


「以前のように決闘相手として向き合えるようになれば。」


「きっと勝負にも集中できます。」


私は目を見開いた。


「……それですわ!」


「さすがアイリス!」


「その作戦で行きましょう!」


私は拳を握りしめる。


「今月こそ!」


「グランベルカードを手に入れますわ!」


セレナ先輩は迷いのない足取りで走っていく。


これが一番いい作戦だとは思うけど……。


アイリスは小さく息をついた。


(以前、喫茶店でお会いした時は……お二人とも、本当に楽しそうでした。)


風が木々を揺らす。


(距離を置いてしまって。)


(本当に、これで良いのでしょうか……。)


その作戦によって。


一人の青年が深く傷つくことになるとは。


まだ誰も知らなかった。


【FINAL STEP・1】

ここまで読んでくださりありがとうございます!

挿絵(By みてみん)

今回は「セレナの想い(アルベルト&セレナ)」のイメージイラストでした。



5話~10話まではイラストを掲載します。

その後は時々、各話の内容に合わせてイラストを掲載します。

28話~43話にもイラストを掲載します。


【投稿スケジュールです】


毎日更新(平日朝7:50/土日祝夕方18:50)予定です。


ぜひお楽しみください!


「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります!


次回もよろしくお願いいたします。

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