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氷の貴公子(生徒会長)、貧乏令嬢の一挙一動に毎日心臓が爆発しそう。〜照れたら負けの【赤面決闘】を挑まれていますがもう限界です〜  作者: 杜英智
恋愛急接近編

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第38話 告白の行方(アルベルト視点)

読みに来てくださってありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ。

第38話 告白の行方(アルベルト視点)


ここからは三戦目。


絶対に負けられない戦いだ。


喫茶店を後にした私たちは、この後どう過ごすかを話しながら歩いていた。


日が沈むまでには、まだ少し時間がある。


その時、静かな波音が耳をくすぐった。


私は思わず足を止める。


「近くに海があるのか?」


「はい! 喫茶店の裏を抜けると、すぐですわ。」


二人で裏道を進む。


そして――。


「海です!」


目の前には、地平線いっぱいに広がる青い海。


波は夕陽を受けて、きらきらと美しく輝いていた。


「…………」


建物に隠れて見えなかったが、この喫茶店は海の目の前に建っていたのか。


周囲を見る余裕すらなかったとは、本当に私らしくない。


「少し、海岸を歩かないか。」


「はい!」


海岸へ降りる長い石階段を、二人でゆっくりと下りていく。


階段を下りきると、目の前には柔らかな砂浜が広がっていた。


私は足元へ魔法をかける。


「砂の上を歩いても靴が沈みませんわ。」


「先日のダンスパーティーを思い出すな。」


「…………」


彼女は急に黙り込んだ。


ふと視線を向けると、不思議そうな顔でこちらを見ている。


「夢ではありませんでしたの?」


「…………」


今度は私が黙る番だった。


少し離れた石階段の上から様子を見守っていたライナーが、思わず肩を震わせる。


(夢になっているとは……さすがにご報告できませんでした。申し訳ありません、閣下。)


「私が、そのようなことを言っただろうか……。」


「はい。おっしゃいました。」


「あっ。」


彼女が小石につまずく。


私は反射的に腕を差し出した。


「夢ではない。」


「楽しいひとときだった。」


「……今のように。」


彼女は少し戸惑いながらも、そっと私の腕へ手を添える。


「大切な思い出にしますわ。」


私たちは自然と顔を見合わせ、小さく笑った。


しばらく波音だけが静かに響く。


私はふと思い出したように口を開いた。


「君の父上は、いつもああいう人なのか?」


「ああいう人、とは?」


「……自分のことを、後回しにする。」


「家族のことも。」


「領民のことも。」


「自分ひとりで何とかできると本気で思っているように見える。」


彼女はくすりと笑う。


「私のお父さまは、とても面白い方なんです。」


「自慢の父ですわ。」


「……そうだな。」


アルベルトは小さく息を吐いた。


「だが、もう少し自分のことも大切にしてもらいたいものだ。」


将来、私の義父になるかもしれない人だ。


もっと私を頼ってくれればいいのだが。


「……私の父とは正反対だ。」


「アルベルト様のお父様は、どんなお方なんですの?」


「厳格な方だ。」


「公爵を継ぐ者として、それが当然なのだろう。」


「だが……。」


私は少しだけ苦笑する。


「これは、ここだけの話だ。」


「たまには笑っていてほしいと思う時もある。」


「グラナート公爵は、普段笑われないのですか?」


「君は会ったことがないからな。」


「笑わない人だと言われても、不思議には思わないだろう。」


「それが私の父だ。」


彼女は静かに私を見つめた。


「アルベルト様も、これまでお辛いことがあったのでしょうね。」


「 ………… 」


思わず足が止まる。


「私に、そのようなことを言うのは君だけだ。」


「それは……悪い意味なんですの?」


思わず笑みがこぼれた。


「何がおかしいんですの?」


「一度、遊びに来てほしい。」


「ぜひ、公爵家へ招待したい。」


「私が?」


彼女は、少し考え込んだ後。


「……考えておきますわ。」


公爵家への招待を保留するとは……。


だが。


心から楽しいと思える時間だった。


彼女と一緒にいると、退屈を忘れる。


先ほどまで胸を締め付けていた緊張が、いつの間にか消えていた。


こんなにも自然に話せる相手がいるとは、思わなかった。


本当に、不思議な人だ。


気付けば、海を見に来たはずなのに。


私の視線は何度も君へ向かっていた。


やがて空は、オレンジ色から紫色へとゆっくり染まり始める。


「上へ戻ろう。」


私たちは階段を上り、海岸を後にした。


すると、そこには二脚の椅子とテーブル。


温かな飲み物に軽食、そしてデザートまで用意されていた。


「先ほど通った時には、ありませんでしたわよね?」


彼女が首をかしげる。


「ライナーに準備させた。」


「座ってくれ。」


「えっ!」


「ライナーさんもいらっしゃるんですの?」


「どちらですの?」


きょろきょろと辺りを見回す彼女を見て、思わず笑いそうになる。


……ここからが三戦目だ。


緊張で、心臓が激しく打ち始めた。


「エヴァンス嬢」


「先ほど話した、君に見せたいものなんだが」


「ここへ座ってほしい」


この戦いの勝利条件は一つ。


私の気持ちを受け入れてもらうこと。


全ては、私の手腕にかかっている。


どうか、上手くいきますように……。


彼女は私の隣へ腰掛け、不思議そうにテーブルを眺める。


少し離れた場所には、色とりどりの花が飾られていた。


夜風がそっと吹き抜け、彼女の髪を揺らす。


淡い水色のリボンが、月明かりを受けてかすかに輝いた。


「アルベルト様」


「そろそろ教えてください」


「私に見せたいものって、何ですの?」


私は空を見上げた。


雲ひとつない夜空。


満天の星が瞬き、その向こうには、まだ何も起きていない暗闇が広がっている。


「……そろそろ始まる」


「何がですの?」


その瞬間。


ひゅっ……


ドォォォォン!!


夜空を震わせる轟音とともに、大輪の花が咲いた。


「まあ!」


彼女が目を見開く。


漆黒の空いっぱいに、鮮やかな光が広がっていく。


一瞬で消えてしまうはずなのに、その光はいつまでも目に焼き付いていた。


「綺麗ですわ……」


彼女の瞳に、花火の光が映っている。


赤、青、金、緑。


次々と打ち上げられる花火が、彼女の瞳の中で弾けては消えていく。


ドォォォォン!!


ドォォォォン!!


重なり合う轟音。


夜空に咲く大輪の花。


そのたびに、彼女の表情が明るくなる。


「すごい……」


「こんなに近くで見るのは初めてですわ」


私は答えなかった。


花火よりも、隣にいる彼女から目を離せなかった。


光が消えるたび、夜の闇が戻る。


そして次の瞬間には、また空が明るくなる。


その繰り返しだった。


まるで、夜空そのものが呼吸しているようだった。


彼女の髪が風に揺れる。


大きなリボンがふわりと舞う。


花火が咲くたび、その横顔が光に照らされる。


笑っている。


楽しそうに。


私は、この瞬間のために今日一日を計画してきた。


クルーズ船も。


高級ディナーも。


すべて予定通りにはならなかった。


それでも。


今、こうして彼女の隣にいる。


それだけで、不思議なほど満たされていた。


ドォォォォン!!


ひときわ大きな花火が夜空いっぱいに広がった。


金色の光が無数の細い線となって降り注ぐ。


彼女が思わず息をのむ。


「……綺麗」


その横顔を見つめながら、私は静かに息を吐いた。


今だ。


この瞬間なら。


きっと言える。


「エヴァンス嬢」


彼女がこちらを振り向いた。


花火の光が、その瞳を淡く照らしている。


「……私は、これまで色のない花火しか知らなかった」


「色がないんですの?」


彼女は真剣な顔で、私の言葉の意味を考えている。


「なぜだと思う?」


「目のご病気だったんですの?」


思わず、笑みがこぼれた。


「興味がなかったからだ」


「色があろうとなかろうと、どうでもいいことだった」


「そんな私が」


「君と出会ってから、世界に興味を持った」


彼女を見つめる。


君に伝えたい。


私の想いを。


「エヴァンス嬢、私は……」


「アルベルト様」


私の言葉を遮るように、彼女が話し出す。


「私も、世界に色がなくなる時があります」


「でも」


「そんな時は、周囲を見渡します」


「私の周りに存在する、たくさんの人たち」


「家族、友達、先生、職場の方々、……そして、アルベルト様」


そう言って、彼女は少しだけ笑った。


「そうすると、心が温かくなって、世界がまた美しく色鮮やかに輝き始めます」


「私は一人ではありませんわ」


「みんなに支えられて、生きているんです」


「アルベルト様と二人で見る花火も、とても綺麗ですが……。」


私は息を止めた。


彼女の言葉を待つ。


「もし、また次があるなら……」


「クララやキリル王子、イーゴリさん、ライナーさんにアイリス……」


そこで彼女は、嬉しそうに微笑んだ。


「みんなと一緒に見たいですわ」


その言葉を聞いた瞬間。


私は悟った。


それが、今の彼女の答えなのだと。


今すぐ私だけを見てほしいわけではない。


好きになってほしいとは思うが……。


今はまだ。


彼女の中で、私はグランベルカード以下の存在なのだ。


それは、胸が張り裂けそうなほどよくわかっている。


それでも。


私はこの想いを君に受け止めてほしい。


だから――


諦めない。


私の世界を変えた彼女を。


諦められるはずもない。


次は、きっと。


夜空に咲く大輪の花火は、静かに私たち二人を照らし続けていた。


【恋愛急接近編・3】

ここまで読んでくださりありがとうございます!

挿絵(By みてみん)

今回は「花火(アルベルト&セレナ)」のイメージイラストでした。



5話~10話まではイラストを掲載します。

その後は時々、各話の内容に合わせてイラストを掲載します。

28話~43話にもイラストを掲載します。


【投稿スケジュールです】


毎日更新(平日朝7:50/土日祝夕方18:50)予定です。


ぜひお楽しみください!


「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります!


次回もよろしくお願いいたします。

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