第3話 可愛い制服作戦ですわ!
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それでは本編をどうぞ。
第3話 可愛い制服作戦ですわ!
「よしっ!」
私は鏡の前でくるりと一回転した。
今日は、お母様と一緒に制服を少しだけ可愛く仕立て直した。
茶色のツインテールを結ぶ、いつもより大きな赤いリボン。
スカートの裾には控えめなレース。
校則違反にならない範囲での、特別仕様ですわ。
「今回は勝ちましたわね!」
(ここまで可愛ければ完璧ですわ!)
(アルベルト様も、きっとドキッとなさいます!)
私は胸を張って教室を飛び出した。
◇
廊下へ出ると、今日も何人もの男子生徒が待っていた。
「うわ、今日のセレナ様、いつもより3倍可愛い…!」
「セレナ様!」
「私と決闘してください!」
「次は私です!」
私は苦笑する。
80ポイントのカード所持者。
そのせいで決闘を申し込まれることは珍しくない。
「ごめんなさい。今日は先約がありますの」
笑顔で断っていると、人垣が割れた。
「エヴァンス」
現れたのは、ランキング第3位のレオンだった。
「君の80ポイントを手に入れれば、私の順位が上がる」
「今日こそ、私と勝負してくれないか」
(えぇぇぇ!?)
(三位の方からですの!?)
ほんの少し迷った、その時。
「――エヴァンス嬢」
聞き慣れた低い声が響いた。
人垣の向こうから、アルベルト様が歩いてくる。
いつも完璧な彼なのに、銀色の前髪が少し乱れ、制服の襟もわずかにずれていた。
(……あら? 今、ものすごい勢いで走ってきたような……?)
「君が欲しいのは、私のグランベルカードだと思っていたが」
低い声に、心なしかいつも以上の圧力を感じる。
「ご、誤解ですわ!」
「私は最初から、アルベルト様と決闘するつもりでしたの!」
「……そうか」
アルベルト様の口元が、ほんの少し緩んだ。
レオン様は苦笑する。
「今日は私の出る幕ではなさそうですね。また次の機会に」
そう言って去っていく。
アルベルト様は私へ向き直った。
「では。」
「私が相手をしよう。」
カァァァン!!
学院中に鐘の音が響き渡る。
『赤面決闘、開始!』
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Battle Start!!
セレナ HP 100
アルベルト HP 100
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【セレナ】
私は心の中で拳を握った。
さあ、決戦ですわ!
可愛い制服作戦、開始です!
私はくるりと一回転して見せる。
いつもより大きめの赤いリボンが、くるりと回るたびにふわりと揺れる。
レースをあしらったスカートの裾が、可憐にひらりと広がる。
「いかがですか?」
「今日は、少しだけ可愛くしてみましたの。」
アルベルトは一瞬だけ目を見開く。
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アルベルト
HP 100 ▶ 90
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【セレナ】
よしっ!
効いておりますわ!!
10ダメージ確認ですわ!
ですが、まだ決定打には至っておりません!
【アルベルト】
(見惚れてる場合ではない。)
(今日は負けるわけにはいかない。)
(このままでは、いつか他の男に彼女のカードを奪われてしまう。)
(だから――。)
(ずっと君に贈りたいと思っていたものを……。)
アルベルト様が静かに右手を上げた。
指先に、淡い光が灯る。
「――《転送》」
【セレナ】
「……!?」
まさか!
アルベルト様の反撃ですの!?
「転送魔法!?」
何が出てくるのでしょう…。
光がゆっくりと渦を巻く。
そして――
ふわり。
私の目の前に、一輪の赤い薔薇が現れた。
「……え?」
一輪。
二輪。
三輪。
次々と薔薇が現れ、やがて大きな花束となった。
光が弾ける。
次の瞬間。
たくさんの薔薇が、アルベルト様の腕の中へ収まった。
【セレナ】
薔薇の花束……?
ものすごい数ですわ………。
アルベルト様は、まっすぐ私を見つめた。
まるで、何かを決意するように。
「百本の薔薇を君に贈ろう」
「ひゃ…百本ですの!?」
深紅の花びら。
緑の葉。
そして、その赤を引き立てる銀色の髪。
その姿に周囲の女子生徒たちから
悲鳴のような歓声があがった。
「きゃあああ!?」
「決闘っていうかプロポーズ!?」
彼は、ゆっくりと私へ歩いてくる。
一歩。
また一歩。
ほんの一瞬だけ、アルベルト様の足が止まる。
そして。
静かに息を吐いた。
「エヴァンス嬢。」
「受け取ってくれないか。」
ドクンッ!!
私の心臓が跳ね上がった。
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セレナ
HP 100 ▶ 30
クリティカルヒット!!
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【セレナ】
えぇぇぇぇ!?
七割も削られましたの!?
なんという破壊力ですの!
いいえ、落ち着くのよ。
これは決闘!
演技ですわ!
私が一番分かっております!
私はもう一度アルベルト様を見る。
(ん?)
アルベルト様の表情が、どこか不安そうに見える。
演技……ですわよね?
どうして……。
そんな顔をされているのでしょう……。
私は大きく息を吸い込む。
こちらも全力で応戦いたしますわ!
(必殺――。)
(最高の笑顔ですわーーっ!!)
私は花束を両手で受け取り、とびきりの笑顔を向けた。
「アルベルト様、ありがとうございます。」
「大切にいたしますわね」
花束を両手で抱きしめ、私は鏡の前で練習した――
「破壊力120%の最高の笑顔」を彼に向けた。
その瞬間、アルベルト様の時が止まった。
――パキィン。
そんな音が、頭の中で聞こえた気がした。
アルベルト様は無表情のまま、咄嗟に片手で口元を覆い、私から目を逸らす。
けれど。
隠しきれていない耳も、首筋も、そして白い頬も――
みるみるうちに、沸騰したように真っ赤に染まっていった。
「…………」
誰も、声を出せなかった。
学院最強。
氷の貴公子。
決して表情を崩さない、生徒会長。
そのアルベルト様が――
真っ赤になっていた。
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アルベルト
HP 90 ▶ 0
K.O.!!
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静寂。
誰一人として動かなかった。
「アルベルト様が……。」
「赤面した……?」
「う、嘘だろ……。」
「おい! 明日は槍でも降るんじゃないか!?」
学院中が騒然となる。
私は自分の目を疑った。
あ、アルベルト様が!?
赤面なさっておりますわ!?
私の必殺技、最高の笑顔が一撃で倒してしまいましたの!?
な、何が起こりましたのーー!?
アルベルト様は小さく笑った。
「……私の負けだ。」
私はまだ状況が飲み込めず、花束とアルベルト様を何度も見比べた。
本当に?
私……勝ってしまいましたの!?
アルベルト様は、懐から一枚のカードを取り出した。
金色に輝く、グランベルカード。
「このカードは君のものだ。」
私は震える手でカードを受け取る。
すると。
金色の光がカードを走った。
『エヴァンス・セレナ』
私の名前が、カードに刻まれていく。
「つ、ついに……。」
「やりましたわーーーっ!!」
思わずその場でぴょんっと飛び跳ねる。
「ありがとうございます!」
アルベルト様は、その姿を見て思わず口元を緩めた。
(……あら? 負けたはずなのに、アルベルト様、なんだか嬉しそうなお顔をされていますわ……?)
「そして。」
「私は敗者だ。」
「君の願いを、一つ聞こう。」
あっ!
そうでしたわ!
勝者は敗者にお願いを一つできるのでした!
私は腕を組んで考え込む。
月1回、必ず赤面決闘を……?
いえ、それではお願いになりませんわ。
うーん……。
しばらく考えたあと、私はにっこりと笑った。
「何もありませんわ。」
アルベルト様は少し目を丸くする。
「……ないのか?」
「はい!」
「いつも私の決闘に付き合ってくださって、ありがとうございます。」
「これからも、よろしくお願いいたします!」
一瞬だけ、アルベルト様は驚いたような表情を浮かべる。
そして、小さく微笑んだ。
「……ああ。」
「こちらこそ、よろしく頼む。」
カァァァン!!
カァァァン!!
カァァァン!!
試合終了を告げる鐘が、学院中へ高らかに鳴り響いた。
◇(アルベルト視点)
その日の放課後。
生徒会室。
窓から差し込む夕日が部屋を優しく照らしていた。
「閣下。」
「負けてしまいましたが、よろしかったのですか?」
ライナーが、静かに尋ねた。
アルベルトは機嫌よく紅茶を口に運ぶ。
「勝つつもりだったが……まさか負けるとはな。」
「この私が、はじめて敗北した。」
ライナーが苦笑した。
「残念そうには見えませんが…」
アルベルトは照れくさそうに笑う。
「……薔薇を受け取ってもらえた。」
そう言って、思い出したように口元を緩める。
「それに。」
「『最高の笑顔』で答えてくれた。」
ライナーは呆れたように肩をすくめた。
「恋とは恐ろしいものですね。」
「学院最強と名高い閣下が、百本の薔薇を受け取ってもらえただけで、そんなお顔をなさるとは。」
アルベルトは少し視線を逸らし、手元の紅茶を見つめた。
「……次は。」
「必ず彼女に勝ち、彼女のポイントカードを受け取る。」
ライナーはアルベルトを見つめる。
「受け取るんですか?」
「他の男に、彼女のカードを奪われたくない。」
「変なおねだりをされる前に阻止する。」
ライナーは思わず額に手を当てた。
「結局、独占欲は隠せないのですね」
アルベルトは咳払いを一つすると、続けて言った。
「たとえ、それで彼女に会えるのが月1回になってしまったとしても。」
◇
その頃。
私はグランベルカードを何度も眺めながら歩いていた。
「やりましたわーーっ!」
「これで来月の学費は免除ですわ!!」
金色に輝くカードを、ぎゅっと胸に抱きしめる。
長かった。
何度挑戦しても勝てなかったアルベルト様に、ようやく勝ったのだ。
「ふふっ。」
私はカードを大切に胸元へしまった。
「アルベルト様。」
「本当にありがとうございました!」
遠く離れた場所にいる彼には聞こえないと分かっていても。
私は小さく頭を下げる。
(それにしても……。)
ふと、足が止まる。
どうしてアルベルト様は、赤面なさったのでしょう?
私は首をかしげる。
これまで、あれこれ試してきましたのに。
百本の薔薇をいただいただけで……。
そんなに嬉しかったのでしょうか?
しばらく考える。
……まさか、そんなことありませんわね。
私は一人で納得すると、大きく頷いた。
「よしっ!」
「今回の戦法も、しっかり記録しておきましょう!」
次の決闘でも使えそうですわ!
にやり、と笑う。
「次は……。」
「次こそは、もっと凄い作戦を考えてみせますわ!」
こうして私は。
あの難攻不落のアルベルト様を倒し、
念願のグランベルカードを手に入れた。
――この時の私は。
まさか数日後。
新たなグランベルカード所持者の登場で、あんな騒ぎに巻き込まれることになるなんて。
知る由もなかった。
【赤面決闘の幕開け・完】
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
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毎日更新(平日朝7:50/土日祝夕方16:50)予定です。
ぜひお楽しみください!
「続きが気になる!」と思っていただけましたら、
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