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氷の貴公子(生徒会長)、貧乏令嬢の一挙一動に毎日心臓が爆発しそう。〜照れたら負けの【赤面決闘】を挑まれていますがもう限界です〜  作者: 杜英智
赤面決闘の幕開け

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3/43

第3話 可愛い制服作戦ですわ!

読みに来てくださってありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ。

第3話 可愛い制服作戦ですわ!


「よしっ!」


私は鏡の前でくるりと一回転した。


今日は、お母様と一緒に制服を少しだけ可愛く仕立て直した。


茶色のツインテールを結ぶ、いつもより大きな赤いリボン。

スカートの裾には控えめなレース。


校則違反にならない範囲での、特別仕様ですわ。


「今回は勝ちましたわね!」


(ここまで可愛ければ完璧ですわ!)


(アルベルト様も、きっとドキッとなさいます!)


私は胸を張って教室を飛び出した。


◇


廊下へ出ると、今日も何人もの男子生徒が待っていた。


「うわ、今日のセレナ様、いつもより3倍可愛い…!」


「セレナ様!」


「私と決闘してください!」


「次は私です!」


私は苦笑する。


80ポイントのカード所持者。


そのせいで決闘を申し込まれることは珍しくない。


「ごめんなさい。今日は先約がありますの」


笑顔で断っていると、人垣が割れた。


「エヴァンス」


現れたのは、ランキング第3位のレオンだった。


「君の80ポイントを手に入れれば、私の順位が上がる」


「今日こそ、私と勝負してくれないか」


(えぇぇぇ!?)


(三位の方からですの!?)


ほんの少し迷った、その時。


「――エヴァンス嬢」


聞き慣れた低い声が響いた。


人垣の向こうから、アルベルト様が歩いてくる。


いつも完璧な彼なのに、銀色の前髪が少し乱れ、制服の襟もわずかにずれていた。


(……あら? 今、ものすごい勢いで走ってきたような……?)


「君が欲しいのは、私のグランベルカードだと思っていたが」


低い声に、心なしかいつも以上の圧力を感じる。


「ご、誤解ですわ!」


「私は最初から、アルベルト様と決闘するつもりでしたの!」


「……そうか」


アルベルト様の口元が、ほんの少し緩んだ。


レオン様は苦笑する。


「今日は私の出る幕ではなさそうですね。また次の機会に」


そう言って去っていく。


アルベルト様は私へ向き直った。


「では。」


「私が相手をしよう。」


カァァァン!!


学院中に鐘の音が響き渡る。


『赤面決闘、開始!』


━━━━━━━━━━━━━━


Battle Start!!


セレナ   HP 100


アルベルト HP 100


━━━━━━━━━━━━━━


【セレナ】


私は心の中で拳を握った。


さあ、決戦ですわ!


可愛い制服作戦、開始です!


私はくるりと一回転して見せる。


いつもより大きめの赤いリボンが、くるりと回るたびにふわりと揺れる。


レースをあしらったスカートの裾が、可憐にひらりと広がる。


「いかがですか?」


「今日は、少しだけ可愛くしてみましたの。」


アルベルトは一瞬だけ目を見開く。


━━━━━━━━━━━━━━


アルベルト


HP 100 ▶ 90


━━━━━━━━━━━━━━


【セレナ】


よしっ!


効いておりますわ!!


10ダメージ確認ですわ!


ですが、まだ決定打には至っておりません!


【アルベルト】


(見惚れてる場合ではない。)


(今日は負けるわけにはいかない。)


(このままでは、いつか他の男に彼女のカードを奪われてしまう。)


(だから――。)


(ずっと君に贈りたいと思っていたものを……。)


アルベルト様が静かに右手を上げた。


指先に、淡い光が灯る。


「――《転送》」


【セレナ】


「……!?」


まさか!


アルベルト様の反撃ですの!?


「転送魔法!?」


何が出てくるのでしょう…。


光がゆっくりと渦を巻く。


そして――


ふわり。


私の目の前に、一輪の赤い薔薇が現れた。


「……え?」


一輪。


二輪。


三輪。


次々と薔薇が現れ、やがて大きな花束となった。


光が弾ける。


次の瞬間。


たくさんの薔薇が、アルベルト様の腕の中へ収まった。


【セレナ】


薔薇の花束……?


ものすごい数ですわ………。


アルベルト様は、まっすぐ私を見つめた。


まるで、何かを決意するように。


「百本の薔薇を君に贈ろう」


「ひゃ…百本ですの!?」


深紅の花びら。


緑の葉。


そして、その赤を引き立てる銀色の髪。


その姿に周囲の女子生徒たちから


悲鳴のような歓声があがった。


「きゃあああ!?」


「決闘っていうかプロポーズ!?」


彼は、ゆっくりと私へ歩いてくる。


一歩。


また一歩。


ほんの一瞬だけ、アルベルト様の足が止まる。


そして。


静かに息を吐いた。


「エヴァンス嬢。」


「受け取ってくれないか。」


ドクンッ!!


私の心臓が跳ね上がった。


━━━━━━━━━━━━━━


セレナ


HP 100 ▶ 30


クリティカルヒット!!


━━━━━━━━━━━━━━


【セレナ】


えぇぇぇぇ!?


七割も削られましたの!?


なんという破壊力ですの!


いいえ、落ち着くのよ。


これは決闘!


演技ですわ!


私が一番分かっております!


私はもう一度アルベルト様を見る。


(ん?)


アルベルト様の表情が、どこか不安そうに見える。


演技……ですわよね?


どうして……。


そんな顔をされているのでしょう……。


私は大きく息を吸い込む。


こちらも全力で応戦いたしますわ!


(必殺――。)


(最高の笑顔ですわーーっ!!)


私は花束を両手で受け取り、とびきりの笑顔を向けた。


「アルベルト様、ありがとうございます。」


「大切にいたしますわね」


花束を両手で抱きしめ、私は鏡の前で練習した――


「破壊力120%の最高の笑顔」を彼に向けた。


その瞬間、アルベルト様の時が止まった。


――パキィン。


そんな音が、頭の中で聞こえた気がした。


アルベルト様は無表情のまま、咄嗟に片手で口元を覆い、私から目を逸らす。


けれど。


隠しきれていない耳も、首筋も、そして白い頬も――


みるみるうちに、沸騰したように真っ赤に染まっていった。


「…………」


誰も、声を出せなかった。


学院最強。


氷の貴公子。


決して表情を崩さない、生徒会長。


そのアルベルト様が――


真っ赤になっていた。


━━━━━━━━━━━━━━


アルベルト


HP 90 ▶ 0


K.O.!!


━━━━━━━━━━━━━━


静寂。


誰一人として動かなかった。


「アルベルト様が……。」


「赤面した……?」


「う、嘘だろ……。」


「おい! 明日は槍でも降るんじゃないか!?」


学院中が騒然となる。


私は自分の目を疑った。


あ、アルベルト様が!?


赤面なさっておりますわ!?


私の必殺技、最高の笑顔が一撃で倒してしまいましたの!?


な、何が起こりましたのーー!?


アルベルト様は小さく笑った。


「……私の負けだ。」


私はまだ状況が飲み込めず、花束とアルベルト様を何度も見比べた。


本当に?


私……勝ってしまいましたの!?


アルベルト様は、懐から一枚のカードを取り出した。


金色に輝く、グランベルカード。


「このカードは君のものだ。」


私は震える手でカードを受け取る。


すると。


金色の光がカードを走った。


『エヴァンス・セレナ』


私の名前が、カードに刻まれていく。


「つ、ついに……。」


「やりましたわーーーっ!!」


思わずその場でぴょんっと飛び跳ねる。


「ありがとうございます!」


アルベルト様は、その姿を見て思わず口元を緩めた。


(……あら? 負けたはずなのに、アルベルト様、なんだか嬉しそうなお顔をされていますわ……?)


「そして。」


「私は敗者だ。」


「君の願いを、一つ聞こう。」


あっ!


そうでしたわ!


勝者は敗者にお願いを一つできるのでした!


私は腕を組んで考え込む。


月1回、必ず赤面決闘を……?


いえ、それではお願いになりませんわ。


うーん……。


しばらく考えたあと、私はにっこりと笑った。


「何もありませんわ。」


アルベルト様は少し目を丸くする。


「……ないのか?」


「はい!」


「いつも私の決闘に付き合ってくださって、ありがとうございます。」


「これからも、よろしくお願いいたします!」


一瞬だけ、アルベルト様は驚いたような表情を浮かべる。


そして、小さく微笑んだ。


「……ああ。」


「こちらこそ、よろしく頼む。」


カァァァン!!


カァァァン!!


カァァァン!!


試合終了を告げる鐘が、学院中へ高らかに鳴り響いた。


◇(アルベルト視点)


その日の放課後。


生徒会室。


窓から差し込む夕日が部屋を優しく照らしていた。


「閣下。」


「負けてしまいましたが、よろしかったのですか?」


ライナーが、静かに尋ねた。


アルベルトは機嫌よく紅茶を口に運ぶ。


「勝つつもりだったが……まさか負けるとはな。」


「この私が、はじめて敗北した。」


ライナーが苦笑した。


「残念そうには見えませんが…」


アルベルトは照れくさそうに笑う。


「……薔薇を受け取ってもらえた。」


そう言って、思い出したように口元を緩める。


「それに。」


「『最高の笑顔』で答えてくれた。」


ライナーは呆れたように肩をすくめた。


「恋とは恐ろしいものですね。」


「学院最強と名高い閣下が、百本の薔薇を受け取ってもらえただけで、そんなお顔をなさるとは。」


アルベルトは少し視線を逸らし、手元の紅茶を見つめた。


「……次は。」


「必ず彼女に勝ち、彼女のポイントカードを受け取る。」


ライナーはアルベルトを見つめる。


「受け取るんですか?」


「他の男に、彼女のカードを奪われたくない。」


「変なおねだりをされる前に阻止する。」


ライナーは思わず額に手を当てた。


「結局、独占欲は隠せないのですね」


アルベルトは咳払いを一つすると、続けて言った。


「たとえ、それで彼女に会えるのが月1回になってしまったとしても。」


◇


その頃。


私はグランベルカードを何度も眺めながら歩いていた。


「やりましたわーーっ!」


「これで来月の学費は免除ですわ!!」


金色に輝くカードを、ぎゅっと胸に抱きしめる。


長かった。


何度挑戦しても勝てなかったアルベルト様に、ようやく勝ったのだ。


「ふふっ。」


私はカードを大切に胸元へしまった。


「アルベルト様。」


「本当にありがとうございました!」


遠く離れた場所にいる彼には聞こえないと分かっていても。


私は小さく頭を下げる。


(それにしても……。)


ふと、足が止まる。


どうしてアルベルト様は、赤面なさったのでしょう?


私は首をかしげる。


これまで、あれこれ試してきましたのに。


百本の薔薇をいただいただけで……。


そんなに嬉しかったのでしょうか?


しばらく考える。


……まさか、そんなことありませんわね。


私は一人で納得すると、大きく頷いた。


「よしっ!」


「今回の戦法も、しっかり記録しておきましょう!」


次の決闘でも使えそうですわ!


にやり、と笑う。


「次は……。」


「次こそは、もっと凄い作戦を考えてみせますわ!」


こうして私は。


あの難攻不落のアルベルト様を倒し、


念願のグランベルカードを手に入れた。


――この時の私は。


まさか数日後。


新たなグランベルカード所持者の登場で、あんな騒ぎに巻き込まれることになるなんて。


知る由もなかった。


【赤面決闘の幕開け・完】

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


【投稿スケジュールです】

毎日更新(平日朝7:50/土日祝夕方16:50)予定です。

ぜひお楽しみください!


「続きが気になる!」と思っていただけましたら、

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次回もよろしくお願いいたします。

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