第24話 強欲ペア始動
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第24話 強欲ペア始動
魔導決闘、当日。
私とクララは、闘技場へ足を踏み入れた。
「わぁ……。」
思わず息をのむ。
円形の闘技場を囲む石造りの観客席は、生徒たちで埋め尽くされていた。
立ち見まで出るほどの大盛況だ。
私は目を丸くした。
「もう満席ですわ!」
「私が出場するのだから、注目されるのは当然ね。」
隣でクララが穏やかに微笑む。
白を基調とした聖女の戦闘装束。
薄い金髪は腰まで流れ、前髪を上げた額には、聖女の証である青い宝石の額飾りが輝いている。
そして両手の甲には、黄金の聖輪。
中心は馬車の車輪のような造りになっており、金属製の装具で手の甲へ固定されていた。
まだ刃は静かに止まっている。
私は、自分の赤いリボンを結び直した。
白を基調とした戦闘服の裾が風に揺れる。
今日の相手は――学院最強クラスの二人。
反対側の入場口が開いた。
歓声が一気に大きくなる。
「キリル王子だ!」
「イーゴリ先輩!」
鮮やかな青髪が揺れた。
エメラルドグリーンの瞳を輝かせたキリル王子が、大きく手を振る。
「おーい!」
「未来の妃!」
「今日は、オレが勝つからな!」
「お断りします!」
私が即答すると、観客席がどっと笑いに包まれた。
「相変わらず振られてる!」
「頑張れ、王子ー!」
「誰だー!振られてると言ったのは!!」
キリル王子は観客席に向かって叫ぶ。
その隣を歩く青年は対照的だった。
腰まで届く桜色のポニーテール。
眼鏡の奥で静かに光るアメジスト色の瞳。
長身の青年は何も言わず闘技場全体へ視線を巡らせた。
観客席。
実況席。
決闘場。
そして、私たち。
まるで戦いが始まる前から、すべてを頭の中へ描いているようだった。
「王子。」
「試合前から騒ぎすぎです。」
「いいじゃねぇか!」
「盛り上がってるし!」
「ほどほどに。」
短く答えると、イーゴリは再び前を向いた。
(なんでしょう……。)
(イーゴリさん、いつもと空気が違う。)
言葉では説明できない。
けれど、静かなのに目が離せなかった。
その時だった。
実況席へ、一人の教師がゆっくりと姿を現す。
マックス先生だ。
その隣には、アルベルト様とライナーさんの姿もあった。
(来てくださったのですね。)
私は思わず笑みを浮かべる。
観客席が静まり返る。
マックス先生は静かに実況席へ腰を下ろすと、
長い前髪をかき上げる。
魔導拡声器へ手を伸ばす。
カチッ。
次の瞬間――。
「お前らぁぁぁぁーーーっ!!」
闘技場中へ、腹の底まで響く大声が轟いた。
「盛り上がってるかぁぁぁぁーーーっ!!」
「うおおおおおおーーーーーっ!!」
割れんばかりの歓声が響き渡る。
私は思わず耳を押さえた。
「マックス先生ですわーーー!?」
クララも目を丸くしている。
「やっぱり別人じゃないの?」
「さあ、本日の魔導決闘!」
「対戦カードはこちらぁぁぁ!」
歓声がさらに大きくなる。
「東側選手!」
「侯爵家にして聖女!」
「クララ・ド・ベルモン!!」
「前回の決闘で最後まで諦めなかった少女!」
「セレナ・エヴァンス!!」
「対するは!」
「西側選手!」
「雷鳴の剣士!」
「キリル・ロストフ!」
「そして!」
「二丁魔導銃を操る天才!」
「イーゴリ・ヴォルコフ!」
「なお、今回も本決闘では決闘用魔導武器を使用する!」
「威力は致命傷にならないよう調整済み!」
「だが!」
「痛ぇぇぇぇぞぉぉぉーーーっ!!」
「痛いんですのーーー!?」
私の叫びに、観客席はどっと笑いに包まれた。
「それでは!」
「決闘用魔導武器、展開ぁぁぁーーっ!!」
クララはゆっくりと両腕を構えた。
「起動。」
両手の甲に装着された聖輪が静かに回り始める。
六枚の刃が少しずつ速度を上げ、澄んだ金属音を闘技場へ響かせた。
シャリン……
シャリン……
キィィィィン――。
観客席がどよめく。
「あれがベルモン家の聖輪!」
「初めて見た!」
「きれい……。」
クララは静かに微笑んだ。
「いつでもどうぞ。」
続いて。
イーゴリは中指で眼鏡をくいっと押し上げた。
「では。」
腰の両側にある黒革のホルスターへ両手を添えた。
クルッ。
クルッ。
一瞬だった。
気付けば二丁の魔導銃は、すでにイーゴリの両手へ収まっていた。
(速い……。)
私は、息を飲む。
イーゴリは静かに告げる。
「本来なら私の魔導銃は、フルオート」
「だが、決闘用に調整され、セミオートに制限されております。」
「それはご丁寧にどうも。」
クララは、冷ややかに答えた。
そして、隣に立っていた私に小声で話しかけた。
「作戦どおりよ。」
私は静かにうなずいた。
クララは真っすぐ前を見据えたまま、真剣な表情になる。
「この戦い、負けるなんて許さないわ。」
その青碧色の瞳には、一切の迷いがなかった。
「いい? セレナ。」
「私は人気のために。」
思わず笑みがこぼれる。
「もちろんです!」
「私はグランベルカードのために!」
私たちは顔を見合わせ――
熱き闘志とともに頷きあった。
「「絶対勝つ!!」」
闘技場全体が静まり返る。
「魔導決闘――――!!」
マックス先生が右手を振り下ろす。
「開始ぃぃぃーーーーっ!!」
ダンッ!!
四人が同時に地面を蹴った。
【聖女、現る(後編)・3】
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