第22話 最強の強欲ペア!?
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第22話 最強の強欲ペア!?
「……眠れませんわぁぁぁ!」
その夜。
私はベッドの上で、ごろんと寝返りを打った。
昨日まで決闘していたクララ様と、今度の魔導決闘ではペア。
人生、何が起こるか分かりませんわ。
「作戦も考えなければいけませんし……。」
天井を見上げながら大きくため息をつく。
「大変なことになりましたわーーー!」
◇
翌朝。
特待生の教室では、アルベルト様が生徒会の書類に目を通していた。
ペンを走らせ、一枚ずつ手際よく処理していく。
廊下が少し騒がしくなる。
「エヴァンスさんが来ているわ!」
「誰か探しているみたい」
(……エヴァンス嬢か。)
生徒会の書類から顔を上げ静かに立ち上がる。
扉へ向かおうとした、その時――。
「クララ様!エヴァンスさんがお待ちです!」
ピタリと足を止めた。
数秒の沈黙。
そして何事もなかったように席へ戻る。
ライナーは小さく息をつく。
「……閣下。話しかけにいったのではなかったのですか?。」
◇
中庭。
クララ様は腕を組みながら言った。
「まずは作戦会議よ。」
「 ………… 」
(何かしら?)
私はいつもと違う違和感を感じていた。
「聞いてる?エヴァンスさん!」
我に返り、私は勢いよく返事をする。
「計画は綿密に立てるほど勝率は上がりますわ!」
クララ様は吹き出した。
「あはは!」
「本当に面白いわね。」
「!」
私は、先ほどから感じていた違和感がなんなのか、はっきり気づいた。
「クララ様…何かいつもと雰囲気が違いますわ……。」
「え?あぁ……こっちが本当の私。」
中庭のテラスに設置してあるテーブルセットにクララ様は足を組んで座る。
「へ?」
「私は魔法騎士になるつもりだったのよ、いつも男どもと一緒に鍛錬していたの。」
「でも、突然、聖女様になっちゃったものだから」
「イメージ作りも大変よ!」
「まっ!人気のためだから仕方がないけどね!」
私は、あまりの変わり身のはやさに頭がついていかずに、さらに固まった。
私の頭の中の麗しい聖女像が音を立てて崩れていく……。
「さっ!本題に戻るわよ」
クララ様は、テーブルを人差し指でトンッと叩いた。
そして少しだけ真面目な表情になった。
「エヴァンスさん。」
一度言葉を切る。
「……ううん。」
「セレナ。」
私は固まった。
「え?」
「そう呼んでもいい?」
顔が一気に熱くなる。
「も、もちろんですわ!」
クララ様はにっこり笑う。
「敬語もなし。」
「仲間に遠慮されるのは、落ち着かないわ。」
「だから私のことも、クララって呼んで。」
「え…。聖女様を呼び捨てになんてできませんわ!」
「それじゃ、ペアは解散ね。」
「!!」
私は、ゆっくり息を吐きだす。
「く……。」
「く?」
「クララ……。」
私の声は蚊の鳴くように小さかった。
その瞬間。
クララは思わず吹き出した。
「あははっ!」
「そんなに緊張しなくてもいいじゃない!」
私は真っ赤になって抗議する。
「笑うなんて、ひどいですわ!」
「ごめん、ごめん。」
笑いながら涙をぬぐう。
「でも、これで少しは仲間らしくなったわ。」
私は照れくさそうに笑った。
「さて。」
クララは少しだけ表情を引き締めた。
「作戦を決める前にひとつだけ言っておきたいことがあるの」
「この国のために、聖女に必要なものは何だと思う?」
私は突然の質問に困惑する。
「治癒の力……かしら?」
「そうね。でも、この国の人すべてを、私一人で救えると思う?」
「……どういうことですの?」
「聖女の役目について、私はずっと考えてきたの。」
「私は、この国をもっと自由に動かせる力が欲しい。」
「そのために、知名度を上げて、支持を集める。私を信頼し、ついてきてくれる人を、もっと増やしたいの。」
「そのために、この学院に入ったのよ。」
「優秀な若者たちを味方につけていけば、国だって私を無視できなくなる。」
クララは、まっすぐ私を見つめた。
「そのためにも……こんなところで負けていられないのよ。」
私は、自分のためだけに戦っているのに。
クララは、この国の未来を考えているんだわ。
だからこそ――
私も、その気持ちにきちんと応えたい。
「ええ! 頑張りましょう!!」
クララと私は、しっかりとうなずき合った。
「それじゃあ、始めるわ」
クララがテーブルに小さなメモ用紙を置いた。
「問題は対戦相手よ。」
「私たちより強い相手となれば…。」
候補を書き出していく。
アルベルト様。
キリル王子。
私は名前を見るだけで緊張してきた。
「アルベルト様だけは避けたいですわ……。」
クララもすぐに頷く。
「ええ。」
「あの人だけは別格。」
「私でも勝てる気がしない。」
私はこれまで挑んだ魔導決闘を思い返していた。
「実はこれまで何度か挑戦したことがあるんですが。」
「ことごとく惨敗でしたわ。」
ぶるっと肩を震わせた。
「なるほどね。」
「その時に彼も、あなたを認めたのね。」
「え?」
「何のことですか?」
「ふふっ、無駄話が長くなったわね。」
少し考え込んだあと、クララがふと思い出したように口を開く。
「そういえば、キリル王子といつも一緒にいる…あの方。」
「イーゴリさん?」
私は身を乗り出した。
クララの表情が真剣になる。
「キリル王子の護衛だもの。」
「イーゴリなら、実力も申し分ないわ。」
私は拳をぎゅっと握る。
「でしたら!」
「キリル王子とイーゴリさんのペアに挑戦するんですの?」
クララも不敵に笑う。
「ええ、決まりね。」
「でも、その前に確認しないといけないことがあるわ。」
「確認ですの?」
「魔導決闘で、イーゴリとキリル王子のペアに挑戦できるのかどうかよ。」
「あっ!」
「まずは、担当の先生に聞いてみないとね。」
私とクララは顔を見合わせる。
「行くわよ!」
「はい!」
二人は並んで歩き出した。
◇
科学室。
扉をノックすると、中から静かな声が返ってきた。
「……どうぞ。」
私はゆっくり扉を開ける。
「失礼しますわ。」
部屋の奥では、一人の教師が書類に目を通していた。
長めの前髪が眼鏡にかかり、顔はよく見えない。
私たちが入室しても、表情一つ変えず書類から目を離さない。
クララは首をかしげた。
そして、小さな声で呟く。
「……この先生?」
私は頷く。
さらに小さな声で話す。
「マックス先生ですわ。」
「魔導決闘をご担当されていますの。」
クララはマックス先生と私を交互に見つめる。
「ずいぶん静かな先生ね。」
「ええ。今は。」
「私たちの決闘の時にも実況を担当していただきましたわ。」
クララが驚く。
「え!同一人物なの!?」
私は慌てて口元に人差し指を立てた。
「しーっ。」
それからマックス先生の机へ歩み寄る。
「マックス先生。」
「少しお伺いしたいことがありますの。」
マックス先生は静かに顔を上げる。
「……何でしょう。」
「赤面決闘への参加資格を得るために、私とクララ様でペアを組み、魔導決闘に参加したいと考えております。」
「対戦相手は、キリル王子と従者のイーゴリさんを希望したいのですが。」
「お二人へ挑戦することは可能でしょうか。」
マックス先生は少しだけ考えるように目を伏せた。
「……可能です。」
「お二人は特待生として数か月前に編入されたばかりなので、まだ順位には入っていません。」
「ですが、実力はエヴァンス組を上回っていますので、挑戦条件は満たしています。」
私はぱっと表情を明るくする。
「本当ですの! つまり、勝者になれば赤面決闘に挑戦できますのね!」
「ただし。」
「まずは、お二人の承諾を得てください。」
「承諾が得られましたら、正式に決闘を受理します。」
「分かりましたわ!」
私は勢いよく頭を下げた。
「ありがとうございます!」
科学室を出ると、クララが一度だけ振り返る。
「……ねぇ。」
「はい?」
「本当に、あの先生が実況をしているの?」
私は笑顔で頷いた。
「はい。」
「とっても熱い実況をされますわ。」
クララは無言になった。
「 …………… 」
「信じられないわ。」
私は苦笑しながら歩き出した。
「最初は皆さん、そうおっしゃいますの。」
二人は、特待生クラスへ向かって歩き出した。
最強の護衛騎士は、私たちの挑戦を受けてくださるのだろうか。
【聖女、現る(後編)・1】
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