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氷の貴公子(生徒会長)、貧乏令嬢の一挙一動に毎日心臓が爆発しそう。〜照れたら負けの【赤面決闘】を挑まれていますがもう限界です〜  作者: 杜英智
聖女、現る(前編)

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第20話 最後の一手

読みに来てくださってありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ。

第20話 最後の一手


シャリン……


クララ様が聖輪を構える。


「エヴァンスさん、あなたはよく頑張りましたわ」


クララ様が聖輪を私めがけて振り抜こうとした。


その瞬間。


私は両手を空へ掲げる。


「《スカイ・グレートソード》!」


ドォン!――。


地面が大きく震えた。


クララ様の頭上。


さらにその上。


空に一本。


二本。


十本。


百本。


巨大な岩の大剣が次々と生み出されていく。


やがて、空そのものが岩の大剣で覆い尽くされた。


観客席から悲鳴が上がった。


「な、なんだあれ!?」


「空が……岩の大剣で埋まってるぞ!」


「何本あるんだ!?」


マックス先生も、一瞬言葉を失った。


「こ、これは……!」


そして。


「おおおおおおおおおっ!!」


「空を埋め尽くすほどの岩の大剣が、クララ・ド・ベルモン選手めがけて一斉に降り注ぐぅぅぅーーーっ!!」


マックス先生の実況とともに。


無数の岩の大剣が一斉に落下した。


ヒュンッ!!


ヒュンッ!!


ヒュンッ!!


空気を切り裂きながら、大剣の群れがクララ様へ迫る。


クララ様は反射的に空を見上げた。


「……っ」


その瞳が、初めて大きく見開かれる。


言葉が出ない。


視界いっぱいに広がる、無数の岩の大剣。


それらすべてが、自分へ向かっている。


「……これ、は……」


けれど。


クララ様は、すぐに我に返った。


「《聖壁 》!」


ブォォォォン!!


巨大な光の壁が、クララ様の頭上に展開される。


ドドドドドドドドドッ!!


岩の大剣が次々と光の壁へ突き刺さり、砕け散る。


土煙が舞い上がる。


「防いだぁぁぁぁぁーーーっ!!」


マックス先生の声が闘技場中に響き渡った。


「クララ・ド・ベルモン選手!!」


「無数の岩の大剣を、すべて防ぎきったぁぁぁぁーーーっ!!」


観客席から、どよめきが起こる。


「うそだろ……全部防いだのか!?」


「さすがクララ様……!」


キリル王子も思わず頭を抱えた。


「あーーーっ!!」


「あんなすげぇ攻撃だったのに!」


「かわすんじゃねぇーーー!!」


「セレナのやつ、めちゃくちゃ頑張ったのに!!」


観客席には、次第に諦めにも似た空気が広がっていく。


「やっぱりクララ様には届かないのか……」


その声を聞きながら――。


私は、静かに左手を地面へ向ける。


クララ様は、すべての岩の大剣を防ぎきった。


けれど――。


(今だ……!)


これが、アルベルト様の言っていたチャンス。


私は、左手に魔力を集めた。


「《アースシンク 》!!」


ドゴォォォォン!!


私の足元が、大きく陥没した。


「なっ……!?」


地面が一気に崩れ落ちる。


巨大な穴が、決闘場に口を開いた。


クララ様はとっさに後ろへ飛び退く。


「土魔法で床に穴を……!」


それと同時に。


クララ様の目の前から私の姿が消えた。


「……!」


クララ様が周囲を見渡す。


右。


左。


正面。


どこにもいない。


「エヴァンスさん……?」


大きく開いた穴。


クララ様の脳裏に、ひとつの答えが浮かぶ。


「……土の中へ?」


ヒュン!!


「《転送》!!」


その頭上に、私はいた。


(地下に潜ったとみせかけて、クララ様の頭上に転送しましたわ!)


(今度こそ、私の方が速いですわ!)


土が両腕に勢いよく集まってくる。


両拳を包み込み、腕を覆い、瞬く間に巨大な塊へと膨れ上がる。


巨大な土塊は、私の両腕ごと包み込んだ。


それはまるで――


巨大な戦槌(ハンマー)。


(これが……)


(今の私にできる、最後の一撃!)


私は両腕を振り上げる。


クララ様が顔を上げ、青碧色の瞳が大きく見開かれた。


「そ、そんな……!」


「――いただきましたわぁぁぁぁーーーっ!!」


私は、全身の力を込めて両腕を振り下ろした。


次の瞬間。


ドォォォォォォォォン!!!!


巨大な土の戦槌が、クララ様の頭上へ落下する。


「――っ!」


凄まじい衝撃が闘技場を揺らした。


地面が震える。


観客席まで衝撃が伝わる。


大量の土煙が舞い上がり、視界を完全に覆い尽くした。


「うわあああああっ!!」


「何が起きた!?」


「見えないぞ!!」


マックス先生の声が響く。


「こ、これはぁぁぁぁーーーっ!!」


「まさかの上空からの一撃ぃぃぃーーーっ!!」


「セレナ・エヴァンス選手、土魔法をここまで自由自在に操るのかぁぁぁーーーっ!!」


私は、空中で息を切らしていた。


やった……?


身体から、力が抜けていく。


これなら……。


土煙が、少しずつ晴れていく。


私は目を凝らした。


「……!」


そこに。


クララ様が立っていた。


両腕を交差させたまま。


聖輪は激しく回転している。


その身体には、無数の傷が刻まれていた。


服も破れ、頬には土が付いている。


それでも。


立っている。


「……はぁ」


クララ様が、小さく息を吐いた。


「危なかったですわ……」


観客席が静まり返る。


誰も声を出せない。


クララ様は、ゆっくりと顔を上げた。


その瞳が、私を捉える。


「エヴァンスさん……」


私は地面に着地したが、足がもう限界だった。


クララ様は、しばらく私を見つめていた。


「あなたは……本当に、強い方ですのね。」


その言葉が耳に入ってきたその時。


私は、ふっと身体から力が抜けるのを感じた。


(あ……)


身体が落ちる。


「セレナ!」


誰かの声が響いた。


その声を聞きながら、私は目を閉じかける。


でも――。


まだ終わっていない!


「……っ!」


震える足に、力を込める。


立て。


まだ――立てますわ!


私は、ふらつきながらも立ち上がった。


「エヴァンス・セレナ選手!!堪えたぁぁぁぁぁぁ!!!」


マックス先生の声が高らかに響いた。


クララ様が、聖輪を構え直していた。


シャリン……


「これ以上は危険です」


「終わらせます」


「奥義――《聖裁 》!!」


眩い光が、再び闘技場を包み込んだ。


「……っ!」


私は、その光をまっすぐ見つめていた。


決して、目を逸らさない。


そして。


その光に、飲み込まれた。


◇


「エヴァンスさん!」


遠くから、誰かの声が聞こえる。


温かな光が身体を包んでいた。


痛みが、少しずつ遠ざかっていく。


私はゆっくりと目を開けた。


白い天井。


そして――。


「気がつかれましたか」


目の前には、クララ様がいた。


「……クララ、様?」


「ええ」


私はぼんやりと天井を見上げる。


そして。


小さく笑った。


「……やはり」


「クララ様は、お強いですのね」


悔しい。


胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。


あと少しだった。


本当に、あと少し。


それでも。


「次こそは……」


私は拳を握った。


「次こそは勝ちますわ!」


クララ様は一瞬、きょとんとした。


そして。


くすりと笑った。


「ええ」


「その時は、またお相手いたしますわ」


私は驚いてクララ様を見る。


「……本当ですの?」


「ええ」


クララ様は静かに微笑んだ。


「あなたとの決闘は――」


少しだけ間を置いて。


「思っていたより、悪くありませんでしたもの」


そう言って、クララ様は立ち上がった。


◇


観客たちは、決闘の余韻を語りながら、次々と闘技場を後にしていった。


倒れたセレナには、治癒魔法がかけられ続けている。


その様子を。


アルベルトは、じっと見つめていた。


そこへ。


クララが静かに歩み寄る。


「アルベルト様」


「 …………… 」


アルベルトは、セレナから視線を逸らさない。


クララは小さく微笑んだ。


「ようやく分かりましたわ」


「あなたが、あの方を認めていらっしゃる理由が」


アルベルトの瞳が、ほんのわずかに揺れる。


「勝てなくても」


「何度倒れても」


「決して折れない」


クララは、眠っているセレナを見る。


「それだけではありませんわね」


「追い詰められるほど強くなる」


「そして――」


「最後まで、勝つことを諦めない」


しばらくの沈黙。


やがて。


アルベルトは、短く答えた。


「……ああ」


クララは満足そうに微笑んだ。


「久しぶりに楽しい決闘でしたわ」


そして。


静かに、その場を後にした。


――魔導決闘は終わった。


けれど。


セレナの「折れない心」は、誰の胸にも強く刻まれていた。


そして本人は――。


「グランベルカード……」


やっぱり、そのことしか考えていなかった。


一方。


クララ・ド・ベルモンは、この日の決闘を境に――


セレナを見る目が、大きく変わっていた。


【聖女、現る(前編)・5】

ここまで読んでくださりありがとうございます!

挿絵(By みてみん)

今回は「クララ・ド・ベルモン(戦闘服バージョン)」のイメージイラストでした。


5話~10話までイラスト載せる予定です、その後はちらほらどこかに入ります。


【投稿スケジュールです】


毎日更新(平日朝7:50/土日祝夕方16:50)予定です。


ぜひお楽しみください!


「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります!


次回もよろしくお願いいたします。

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