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氷の貴公子(生徒会長)、貧乏令嬢の一挙一動に毎日心臓が爆発しそう。〜照れたら負けの【赤面決闘】を挑まれていますがもう限界です〜  作者: 杜英智
夏休み編

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第15話 報酬30万リル 聖なる妖精草

読みに来てくださってありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ。

第15話 報酬30万リル 聖なる妖精草


朝の爽やかな空気を吸い込みながら、


私たちは目的の滝周辺へと足を踏み入れていた。


◇


アルベルト様が静かに歩き始める。


私は図鑑を抱え、その隣に並んで歩いた。


ライナーさんも少し後ろから、


温かい目で見守るように続いている。


森を抜けると轟々(ごうごう)と地響きのような


水の流れる音が聞こえてきた。


「滝ですわ!」


私は目を輝かせる。


アルベルト様は黄金色の瞳で周囲を見回した。


「この辺りは岩が多い。」


「水飛沫で濡れていて足場も悪い。」


「十分に気を付けるんだ。」


「はい!」


私は図鑑を開く。


「聖なる妖精草は、水辺を好む薬草です。」


「鈴のような音が目印になりますの。」


「音……。」


アルベルト様が小さく頷く。


「面白い薬草だ。」


「自然の力は不思議ですわ。」


私は嬉しそうに笑いながら前を歩いた。


その時。


「あっ。」


ズルッ。


「きゃっ!」


体勢を崩した私は、そのまま激しい川の流れへと落ちてしまった。


バシャーン!!


冷たい水が容赦なく全身を包み込む。


「た……助け……!」


流れは思った以上に速く、


急な冷たさに体がうまく動かない。


「セレナ!!」


アルベルト様の焦った声が響いた。


彼は迷うことなく、


美しい白いシャツのまま川へ飛び込んだ。


恐ろしいほどの脚力で力強く水をかき分け、


一瞬で私の腕をがっしり、とつかむ。


「大丈夫だ。私がいる」


私は、アルベルト様の身体に必死にしがみついた。


アルベルト様は私を軽々と抱き上げ、そのままお姫様抱きで岸まで運んでくださった。


私は河原に座り込み、咳き込みながら荒い息を整えた。


「ごほっ……ごほっ……。」


「申し訳ありません……。」


服はびしょ濡れだった。


「私のせいで、ご迷惑をお掛けしてしまいました……。」


アルベルト様もまた、美しい銀髪からポタポタと水滴を落としながら、全身ずぶ濡れになっている。


それでも、アルベルト様は穏やかに首を横へ振った。


「迷惑などと思っているなら。」


「こんなところまで、付いて来てはいない。」


あまりにも真剣な黄金色の瞳に、私は思わず顔を上げた。


「では……。」


「どうして、そこまでしてくださるんですの?」


後ろで見守るライナーさんは、激しく心の中で拳を握りしめていた。


(閣下ーーーっ!!)


(今です!!)


(昨日の義務発言を取り返す、最大のチャンスです!! )


(今こそ命がけで飛び込んだその本当のお気持ちを伝えてください!!)


アルベルト様が、濡れた唇をゆっくりと開く。


「わ……私は……。」


ライナーは期待に満ちた目で見守る。


(そうです!!)


(そのまま!!)


アルベルト様はほんの少しだけ気まずそうに、私から目をそらした。


「薬草採取に……深い興味があったのだ。実地訓練の一環だ」


ライナーはその場で肩を落とした。


(本日も……。)


(安定のポンコツでございましたね、閣下……。)


(実地訓練ってなんですか、実地訓練って……)


私はぱっと笑顔になる。


「そうでしたの!」


「でしたら、一緒にたくさん勉強いたしましょう!」


すると、後ろからライナーさんが歩み寄ってきた。


「お二人とも、そのままでは風邪を召されます。」


ライナーさんが両手を軽く掲げる。


すると、私たちの身体を包むように、ほんのり温かな風が吹き抜けた。


「乾燥の魔法です。」


ふわりと温かな風が髪や服の水分をさらっていく。


びしょ濡れだった服が、みるみるうちに乾いていった。


「わぁ……!」


私は思わず自分の袖をつまんだ。


「すごいですわ! もう乾いております!」


「これくらいは、お安い御用です。」


ライナーさんはにこやかに微笑んだ。


「服も乾いてきましたし、続きを探しますわ!」


そう言って元気よく歩き始める。


アルベルト様は小さく息をついた。


「……そうだな。」


◇


しばらく歩いていると。


どこからか、小さな音が聞こえてきた。


コロロン……


コロロン……


私は足を止める。


「この音!」


「間違いありません!」


「聖なる妖精草ですわ!」


音を頼りに進むと、大きな滝の裏側に小さな空間があった。


岩陰で、小さな薬草が風に揺れている。


葉が触れ合うたび、美しい鈴の音を響かせていた。


「あそこですわ!」


私は嬉しそうに駆け出す。


その瞬間。


崖の上から大きな影が飛び出した。


「ガァァァッ!」


巨大なサーベルタイガーだった。


ライナーが叫ぶ。


「閣下!」


アルベルト様は一歩前へ出る。


黄金色の瞳が鋭く光った。


「問題ない。」


青白い氷の刃が閃き、魔物を一瞬で切り伏せる。


魔物は声を上げる間もなく、その場に崩れ落ちた。


私は何も気付かない。


夢中で薬草を摘み取る。


両手で高く掲げ、満面の笑みで振り返った。


「見てくださいませ!」


「三十万リルですわーーーっ!!」


ライナーは倒れた魔物を見てから、小さく苦笑する。


「……セレナ嬢、それはお金ではなく薬草ですけど。」


「はい!」


「目標まで、あと少しですわ!」


(聞いてませんね。)


◇


そこへ。


「終わったのかーーー!」


キリル王子が勢いよく駆け戻ってきた。


「また間に合わなかった!」


私は嬉しそうに手に入れたばかりの薬草を見せた。


「見てください!」


「三十万リルですわ!」


「おぉ!」


キリル王子は自分のことのように笑う。


「よかったな!」


私は大きく頷いた。


「はい!」


「とても充実した一日でしたわ!」


◇


あれから夏休みの間、私たちは何度も薬草採取へ向かった。


お二人は公務の合間を縫って、必ずどちらか一人が付き添ってくださった。


そのたびに魔物が現れていたみたいなのですが、


私は薬草に夢中でまったく気づかず、お二人は呆れたような顔で魔物を倒してくださっていた。


そして夏休み最後の日。


薬草の買い取り所で、受付の女性が目を丸くした。


「確認いたしました。」


「合計百万リルになります。」


「やりましたわーーーっ!」


思わず革袋を抱きしめる。


「目標達成ですわ、いえ、大増額ですわ!!」


「家計も大助かりですわ!」


こうして、忘れられないとても実りある夏休みは幕を閉じた。


◇


その頃――グラナート公爵家。


使用人に案内され、一人の少女が応接室へ入ってくる。


窓辺に立っていたアルベルトが静かに振り返った。


「……今日、神殿に来られていましたね。」


少女は優雅に一礼する。


「お久しぶりですわ、アルベルト様。」


腰まで届く淡い金色の髪が揺れる。


「クララ・ド・ベルモンです。」


「明日から、ご一緒に学園へ登校させていただきますわ。」


アルベルトは静かに頷いた。


「……そうか。」


クララは楽しそうに微笑む。


「アルベルト様が最近よく気に掛けていらっしゃる。」


「エヴァンスさん。」


「私、この目でどのような方なのか見定めさせていただきますわ。」


「余計なことはするな。」


アルベルトの声が、いつも以上に低く冷徹に響く。


しかし、クララはくすくすと鈴を転がすように笑った。


「あなたはグラナート家の大切な跡継ぎ。」


「将来を共に歩む方くらい、私が見定めると昔から申し上げておりますでしょう?」


「……そういう相手ではない。」


少しだけ沈黙が流れる。


アルベルトは静かに、だが確実に言葉を続けた。


「……まだ。」


クララの笑みが深くなる。


「ふふ。」


「ますます楽しみになりましたわ。」


「エヴァンスさんにお会いするのが。」


クララは優雅な足取りで、部屋を後にした。


その背中を見送りながら、アルベルトは小さくつぶやく。


「……嫌な予感しかしない」


【夏休み編・完】

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


【投稿スケジュールです】

毎日(平日朝7:50/土日祝夕方16:50)更新予定です。

ぜひお楽しみください!


「続きが気になる!」と思っていただけましたら、

ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります!

次回もよろしくお願いいたします。

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