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氷の貴公子(生徒会長)、貧乏令嬢の一挙一動に毎日心臓が爆発しそう。〜照れたら負けの【赤面決闘】を挑まれていますがもう限界です〜  作者: 杜英智
夏休み編

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第13話 報酬十万リル 幻の高級薬草

読みに来てくださってありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ。

第13話 報酬十万リル 幻の高級薬草


「なんで、お二人ともいますのーーーっ!!」


私の叫び声が、朝の森へ響き渡る。


森の入口には、銀髪を朝日に輝かせたアルベルト様。


そして、鮮やかな青髪を跳ねさせたキリル王子。


お二人とも、当然のような顔でそこに立っていた。


「同行する。」


アルベルト様は短く答える。


「オレもだ!」


キリル王子は胸を張った。


私は思わず首をかしげる。


「ですが……。」


「今日は薬草採取のアルバイトですわよ?」


「知ってる!」


キリル王子は元気よく頷く。


「だから来た!」


だから来た……?


意味が分かりませんわ……。


その時だった。


ライナーさんが一歩前へ出た。


「ご説明いたします。」


穏やかな笑顔の下に。


そのシルバーグレーの瞳には徹夜明けの疲労が滲んでいた。


「閣下もロストフ王子も、公務がおありです。」


「そのため、本日は交代で同行されます。」


「交代……ですの?」


今度はイーゴリさんが中指で眼鏡をくいっと押し上げた。


手帳の上の数字を冷徹に計算している。


「ええ。」


「公務の合間のみ同行し、必ずどちらかお一人がセレナ殿のそばにおります。」


「 …………… 」


私は首をかしげた。


なぜでしょう。


ますます分かりませんわ。


ですが、お二人とも真剣なお顔をしている。


何か深い理由がおありなのだろう。


「……まぁ。」


「よろしくお願いいたしますわ。」


アルベルト様は静かに頷く。


キリル王子は満面の笑みで親指を立てた。


「任せろ!」


何を任せるのでしょう……。


◇


薬草採取受付所。


受付のお姉さんから、私は一冊の図鑑と買取一覧表を受け取った。


「皆さん!」


私は勢いよく一覧表を掲げる。


「本日の獲物はこちらでしてよーー!」


━━━━━━━━━━━━━━


【本日の希望報酬】


報酬 十万リル


薬草名 幻の高級薬草


特徴 葉先が淡く金色に輝く


生息地 A級モンスター出没地帯


━━━━━━━━━━━━━━


キリル王子がエメラルドグリーンの瞳を丸くする。


「十万リル!?」


「ただの草がそんなに高いのか!」


私は力強く頷いた。


「はい!」


「本日はこれを目指しますわ!」


「もちろん途中の薬草も全部摘みます!」


「塵も積もれば山となりますもの!」


アルベルト様は一覧表へ静かに視線を落とした。


黄金色の瞳が、わずかに鋭さを増す。


「A級モンスター出没地帯……。


国家騎士団が動くレベルの魔境だな」


ライナーさんも小さく息を吐く。


「やはり危険ですね。分刻みのスケジュールですが、気を引き締めねば」


イーゴリさんも、手帳に何かを書き留めた。


「問題ありません。分担表の通り、護衛を最優先いたしましょう」


私はそんな周囲の人たちのシリアスな空気には一切気付かず、大切な図鑑をぎゅっと抱きしめた。


「目標!」


「五十万リルですわーーっ!」


「出発です!」


勢いよく森の中へ駆け出す。


「待て!エヴァンス嬢」


アルベルト様が足早に後を追う。


しかし。


数分後。


「王子、お時間です。」


イーゴリさんが静かに告げた。


キリル王子は大げさに肩を落とす。


「えぇーーっ!?」


「もうか!」


イーゴリさんは、懐中時計に視線を落とした。


「予定どおりです。」


「秒単位の遅れも許されません。」


「公務を終え次第、再び合流いたします」


キリル王子は悔しそうに私を見た。


「セレナーー!」


「すぐ戻るからなーー!」


そのままイーゴリさんに連れて行かれてしまう。


私は小さく手を振った。


「行ってらっしゃいませ!」


やがて森には、私とアルベルト様、そしてライナーさんだけが残った。


私は図鑑を開きながら、嬉しそうに歩き始める。


「アルベルト様。」


「まずはこちらをご覧くださいませ。」


私は足元の草を指差した。


「こちらが『青露草』です。」


「一本二千リルになります。」


アルベルト様は静かにしゃがみ込む。


「これか。」


「はい。」


「葉の裏が少し青く光るのが特徴ですわ。」


アルベルト様は私の説明どおり、丁寧に薬草を摘み取った。


「こうだろうか。」


「はい!」


「とてもお上手ですわ!」


その一言に、アルベルト様の口元がほんの少しだけ緩んだ。


私は嬉しそうにカゴの中をのぞき込む。


「二千リルが三本……。」


「こちらは五千リルですから……。」


「もう一万一千リルですわ!」


「順調です!」


アルベルト様は静かに頷く。


「君は、本当に薬草が好きなのだな。」


「好きですわ!」


私は迷わず答えた。


「薬草は人の役に立ちますし、お金にもなりますもの!」


「知れば知るほど楽しいんですの!」


図鑑を開きながら、次の薬草を探して歩く。


アルベルト様も私の後ろを静かについてくる。


(本来なら私が先頭を歩くべきなのだが…)


その時だった。


ガサッ。


茂みが揺れた。


牙をむいた魔物が飛び出してくる。


「グルルル……!」


しかし。


アルベルト様が小さく指を鳴らした瞬間、周囲の空気が一瞬で凍りついた。


「――《氷刃(アイスブレード)》」


呟きとともに放たれた無数の氷刃が、咆哮ごと魔物を凍結させ、音もなく塵へと変える。


「……行こう。」


「はい!」


私は何も気付かないまま歩き出す。


ライナーさんは後ろを振り返り、小さく息を吐いた。


(さすが閣下。)


(エヴァンス嬢はお気付きにすらなっておりませんね。)


◇


しばらく歩くと、私は足を止めた。


「まぁ!」


「こちらは『月雫草』ですわ!」


「一本五千リル!」


私は嬉しそうに摘み取る。


アルベルト様も隣で同じ薬草を見つけた。


「これはどうだ。」


「はい!」


「間違いありません!」


「アルベルト様、とてもお上手ですわ!」


私は満面の笑みで拍手した。


アルベルト様は少し照れたように視線をそらす。


「……そうか。」


採取を終えた頃。


アルベルト様は、自分のカゴを私へ差し出した。


「これは君が受け取るといい。」


「え?」


「私は報酬はいらない。」


「君が受け取ればいい。」


私は慌てて首を振る。


「そんな!」


「それはいけませんわ!」


アルベルト様は不思議そうに私を見る。


「なぜだ。」


私は胸へ手を当てた。


「男爵家では、小さい頃から教えられておりますの。」


「受けた恩は、必ずお返ししなさい、と。」


「ですが、せっかくの申し出をお断りするわけにもいきませんわね……。」


私はにっこり笑う。


「いつか必ず、お返しいたしますわ!」


ひまわりが咲いたような眩しい笑顔に、アルベルト様の表情がふっと和らいだ。


「……楽しみにしている。」


ライナーさんはその様子を見て、思わず微笑む。


(閣下……。)


(セレナ嬢との絆が深まりましたね。)


その時だった。


「待たせたーーーっ!」


森中へ響く元気な声。


キリル王子が、勢いよく駆け寄ってきた。


「今度こそオレの番だ!」


「王子!」


私は嬉しそうに手を振る。


「お帰りなさいませ!」


「待たせたな!」


「公務なんて一瞬で終わらせてきた!」


後ろではイーゴリさんが小さく首を横へ振る。


(一瞬ではございませんでしたが。)


私はキリル王子へ笑いかけた。


「キリル王子も、ありがとうございます!」


「アルベルト様と同じように、お手伝いしてくださるんですもの。」


「いつか必ずお返しいたしますわ!」


キリル王子は照れくさそうに頭をかく。


「お、おう!」


「期待してるぞ!」


その横で。


アルベルト様は静かに目を閉じた。


「 …………… 」


ライナーは小さくため息をつく。


(閣下だけの特別ではありませんでしたね……。)


「閣下。」


「お時間です。」


アルベルト様は小さく頷く。


「……ああ。」


すれ違いざま。


アルベルト様は静かに私を見た。


「気を付けて。」


「はい!」


「アルベルト様もお気を付けくださいませ!」


「ロストフ、エヴァンス嬢のこと頼む。」


「言われなくても分かっている!」


私は笑顔で手を振る。


アルベルト様も小さく手を上げ、その場を後にした。


◇


「よーし!」


「ここからはオレに任せろ!」


キリル王子は勢いよく草むらへ飛び込んだ。


ブチッ!


「採れたぞ!」


私は慌てて駆け寄る。


「違います!」


「それはただの草です!」


「なっ!?」


キリル王子は驚く。


「もう一回!」


ブチッ!


「こちらは!」


「それも違います!」


「あ、一緒にいれないでください!」


「はぁーーっ!?」


イーゴリさんは眼鏡を中指でくいっと押し上げた。


(王子……。)


(薬草採取は才能が必要なようです。)


キリル王子は三本目を摘み取る。


「これは!」


私は満面の笑みになった。


「はい!」


「薬草です!」


「おおーーっ!」


「やっと当たりだ!」


その時。


私は森の奥を見つめた。


「あっ!」


薄暗い木陰。


一株だけ。


葉先が淡く金色に輝く薬草が揺れている。


私は息をのんだ。


「幻の高級薬草ですわ!」


一目散に駆け出す。


その背後。


巨大な魔物が姿を現した。


「グオオオオッ!」


「危ない!」


キリル王子が剣を抜く。


「オレに任せろ!」


一気に踏み込み、剣を豪快に振り抜く。


魔物はその場へ崩れ落ちた。


私はまったく気付かない。


夢中で薬草を摘み取り、高々と掲げる。


「見てくださいませ!」


「十万リルですわーーーっ!!」


満面の笑み。


イーゴリさんは、小さくつぶやく。


「……もう薬草ではなく、お金に見えておられますね。」


「おぉ!」


キリルは満足そうに頷いた。


「よかったな!」


「はい!」


「目標まで、あと四十万リルですわ!」


森の中に、セレナの元気な笑い声が響き渡った。


【夏休み編・2】

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


【更新スケジュール】

毎日更新(平日朝7:50/土日祝夕方16:50)予定です。


ぜひお楽しみください!


「続きが気になる!」と思っていただけましたら、

ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります!

次回もよろしくお願いいたします。

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