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『異世界ブラック企業から逃げた俺、OLたちと焚き火をしながら社長を討伐する』  作者: アラベ幻灯


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4/12

『会社を支配する“和”』

革命は、

ただ社長を倒せば終わるものではなかった。


ブラック企業には、

もっと恐ろしい“何か”が存在していた。


それは、

誰も逆らえない空気。


誰も壊せない常識。


そして――


「和」。


第四話、開幕です。

IndustryNingen Inc.


 巨大なガラスビルが、

 夜の街にそびえ立っていた。


 その光景を見上げながら、

 優花が小さく呟く。


「……本当に、やるんですね」


 ユウトは答えない。


 答える必要がなかった。


 ここにいる全員が、

 もう後戻りできない。


 焚き火の夜。


 あの夜から、

 彼らは変わってしまったのだから。


「行くぞ」


 ユウトが歩き出す。


 五人のOLたちも続く。


 自動ドアが静かに開いた。


 その瞬間。


「っ……!?」


 身体が重くなった。


 まるで、

 全身に鎖を巻かれたみたいだった。


「な、何これ……!」


 綾香が苦しそうに壁へ手をつく。


 飛鳥も顔を歪める。


「動け……ない……」


 ユウトも異変を感じていた。


 一歩踏み出すだけで、

 身体が悲鳴を上げる。


 空気そのものが、

 彼らを押さえつけている。


 その時だった。


『――ああ、本当に来たんだねぇ』


 声。


 だが、

 誰の口も動いていない。


 静かなオフィス。


 そこには、

 何十人ものサラリーマンとOLがいた。


 全員、

 無表情でパソコンを打ち続けている。


 カタカタカタカタ。


 誰も顔を上げない。


 誰もこちらを見ない。


 まるで、

 魂を抜かれた人形みたいだった。


『君たちは本当に無謀だ』


 声が響く。


 天井から。


 床から。


 壁から。


 どこからともなく。


『でも、私は嫌いじゃないよ。そういう若者』


「……誰だ!」


 ユウトが叫ぶ。


「どこにいる! 出てこい!!」


 すると。


 クスクス、と笑い声が響いた。


『私はここにいる』


 ぞわり。


 ユウトの背筋が凍る。


『君の前に』


 空気が重くなる。


『君の後ろに』


 OLたちが息を呑む。


『君の隣に』


 カタカタカタ。


 社員たちは、

 相変わらず無言で働き続けている。


 誰も逃げない。


 誰も助けを求めない。


 誰も、

 会社に疑問を抱いていない。


「……なんなんだよ、お前」


 ユウトの額に汗が流れる。


 見えない。


 なのに。


 確かに、

 “何か”がいる。


 その瞬間。


 オフィス中のモニターが、

 一斉に点滅した。


 真っ白な画面。


 そこへ。


 黒い文字が浮かび上がる。


『私の名は――』


 社員たちの指が止まる。


 空気が凍る。


 そして。


 モニターいっぱいに、

 巨大な漢字が映し出された。


 ――『和』。


『私の名は、“和”だ』


 その瞬間。


 ユウトたちの身体へ、

 さらに重い圧力が叩きつけられた。


 まるで。


 「空気を読め」と、

 世界そのものに命令されているみたいに。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


ブラック企業の本当の恐ろしさは、

暴力ではありません。


「逆らえなくなる空気」です。


そして、

ユウトたちはついに、

その正体と出会ってしまいました。


次回、

“和”との戦いが始まります。


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