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『異世界ブラック企業から逃げた俺、OLたちと焚き火をしながら社長を討伐する』  作者: アラベ幻灯


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3/12

焚き火の夜、魔法が生まれた

ブラック企業から逃げたOLたち。


自由を知らなかった社畜たち。


そして、

焚き火の前で起きた“奇跡”。


その力は、

剣でも才能でもない。


「意志」だった。


第三話、始まります。

燃え上がる炎。


 赤い火の粉。


 そして。


 五人のOLたちの視線。


「…………」


 ユウトは固まっていた。


 何だ今の。


 触ってない。


 なのに、

 薪が突然燃え上がった。


「ゆ、ユウトさん……」


 優花が震えた声を漏らす。


「今の……魔法……ですよね……?」


「いや、知らねぇよ」


 本当に知らなかった。


 ユウトはただ、

 火をつけようとしただけだ。


 だが。


 その時だった。


 ぐらっ。


「うおっ!?」


 ユウトの足が滑った。


 昨夜の雨で、

 地面がぬかるんでいたのだ。


 そのまま身体が前へ倒れる。


 燃え盛る焚き火へ。


「危ない!!」


 飛鳥が叫んだ瞬間。


 ――ザバァッ!!


 突然、

 空中から大量の水が現れた。


 水流は一直線に焚き火へ叩きつけられ、

 一瞬で炎を消し飛ばす。


「え……?」


 飛鳥自身が、

 一番驚いた顔をしていた。


「わ、私……今……」


 だが。


 ユウトの身体はまだ止まらない。


 そのまま地面へ激突する――


 はずだった。


「っ……!」


 ふわり。


 身体が、

 宙に浮いた。


「…………は?」


 ユウトの身体は、

 まるで羽みたいに空中で静止していた。


 ゆっくり。


 本当にゆっくりと、

 地面へ降りる。


 全員が息を呑む。


 そして。


 一人のOLが、

 青ざめた顔で両手を見つめていた。


「わ、私……?」


 優花だった。


「今……重力を……」


 森が静まり返る。


 風の音だけが聞こえる。


 誰も動かなかった。


 誰も、

 何を言えばいいのかわからなかった。


 ユウトは、

 ゆっくりと立ち上がる。


 消えた焚き火。


 濡れた薪。


 震えるOLたち。


 そして。


 自分たちの手。


「……これ」


 紗弥香が、

 かすれた声で呟く。


「普通じゃないですよね……」


「当たり前だろ」


 里香が即答した。


「なんで急に魔法なんか使えるのよ……!」


 その時。


 綾香が、

 ふと焼き林檎を見た。


「……もしかして」


 全員の視線が、

 林檎へ集まる。


 昨夜、

 ユウトが拾ってきた林檎。


 焚き火で焼いた、

 ただの食事。


 のはずだった。


「この林檎……?」


「魔法の果実……とか?」


「そんなゲームみたいな……」


 言いながらも、

 誰も否定できなかった。


 だって。


 現に、

 魔法が起きている。


 ユウトは黙って林檎を見る。


 焼けた皮。


 甘い匂い。


 どこにでもありそうな果実。


 なのに。


 たった一晩で、

 自分たちは変わってしまった。


「……つまり」


 飛鳥がゆっくり言う。


「私たち……戦えるってことですか」


 その言葉に、

 空気が変わった。


 革命。


 ブラック企業。


 社長。


 解放。


 昨日までは、

 全部ただの理想だった。


 でも今は違う。


 力がある。


 実際に、

 世界を変えられるかもしれない。


 優花が小さく呟く。


「……ElectroNingenとも……」


 ユウトは答えなかった。


 ただ。


 静かに空を見上げる。


 星空。


 森。


 風。


 そして。


 自分たちが食べた、

 あの林檎。


「……どこから来たんだ」


 誰にも聞こえない声で、

 ユウトは呟いた。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


社畜だった彼らは、

初めて「力」を手に入れました。


ですが、

本当に恐ろしいのは魔物ではありません。


ブラック企業です。


次回、

ユウトたちは自分たちの“力の正体”を探り始めます。


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