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『異世界ブラック企業から逃げた俺、OLたちと焚き火をしながら社長を討伐する』  作者: アラベ幻灯


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2/12

『焚き火を囲んだ夜、革命が始まった』

ブラック企業から逃げた先で、

初めて「自由な夜」を知った。


だが、

その夜はただの逃避では終わらない。


革命は、

剣でも魔法でもなく、

焚き火の前から始まる。


第二話、開幕です。

暗い森の奥。


 焚き火もない夜道を、

 五つの影がこちらへ近づいてくる。


 ユウトは反射的に身構えた。


 だが。


「……女?」


 月明かりに照らされたその姿は、

 全員スーツ姿だった。


 黒いジャケット。


 タイトスカート。


 疲れた目。


 見慣れた革靴。


 まるで、

 会社帰りのOLたちが、

 そのまま森へ迷い込んだみたいだった。


 一人がゆっくり頭を下げる。


「初めまして」


 長い黒髪の女だった。


「私は佐山紗弥香です」


 続けて、

 他の女たちも名乗る。


「綾香です」

「飛鳥です」

「里香です」

「優花です」


 全員、

 二十代くらいに見えた。


 そして。


 全員、

 どこか壊れた顔をしていた。


 ユウトは警戒を解かない。


「……なんだよ、お前たち」


 すると。


 紗弥香が、

 まるで祈るみたいに言った。


「やっと見つけました……解放者様」


「…………は?」


 ユウトは固まった。


 何を言っているんだ。


 飛鳥が一歩前へ出る。


「私たち、あなたの“マニフェスト”を読みました」


 心臓が止まりそうになった。


「……なんで」


「ElectroNingenを辞めた社員の間で、密かに広がっていたんです」


 飛鳥は震える声で続ける。


「“サラリーマンとOLは、綺麗な奴隷だ”……って」


 ユウトの喉が詰まる。


「ブラック企業から解放するべきだっていう考え方……そんなの……」


 飛鳥は目を伏せた。


「私たち、一度も考えたことありませんでした」


 あり得ない。


 ユウトは思った。


 本当に?


 誰も?


 日本人は何百年も会社で働いてきたんだぞ。


 自由について考えた人間が、

 一人もいなかったなんて。


 そんな馬鹿な話があるか。


 だが。


 五人のOLたちの顔は、

 本気だった。


 ユウトは何を言えばいいのかわからず、

 とりあえず隣を指差した。


「……座れよ」


 五人は静かに腰を下ろした。


 森の夜は冷える。


 ユウトは焚き火へ枝をくべる。


「腹減ってるか」


 返事の代わりに、

 五人のお腹が小さく鳴った。


 ユウトは少し笑った。


「……食う?」


 火の近くには、

 拾ってきた林檎が並んでいた。


 じわじわと焼けた皮から、

 甘い香りが漂っている。


 優花が目を丸くする。


「焼き林檎……?」


「会社じゃ食えなかったからな」


 その瞬間。


 五人の表情が、

 ほんの少しだけ崩れた。


 会社。


 その言葉だけで、

 全員の肩が強張る。


 まるで、

 呪いみたいに。


 だが。


 焚き火の前では、

 誰も怒鳴らない。


 誰も命令しない。


 誰も始業ベルを鳴らさない。


 静かだった。


 本当に静かだった。


 紗弥香が、

 焼き林檎を両手で持ちながら呟く。


「……こんな夜、初めてです」


 誰も否定しなかった。


 飛鳥がぽつりと言う。


「革命、どうしますか」


「…………」


「まずElectroNingenからですか?」


「支社を襲撃するとか?」


「社長を殺すとか……」


 その言葉に、

 森の空気が少しだけ冷えた。


 だが。


 ユウトは否定しなかった。


 五人はもう、

 戻れない場所まで来ている。


 今さら、

 綺麗事だけでは終われない。


「……まずは」


 ユウトが口を開きかけた時だった。


 ぱちっ。


 火が消えた。


「あ……」


 里香が慌てて枝を入れる。


 だが燃えない。


 優花も息を吹きかける。


 火は戻らない。


 森の夜が急激に暗くなる。


「まずいですね……」


 紗弥香が呟いた。


 ユウトは黙って前へ出る。


「貸せ」


 そして、

 消えた薪へ手を伸ばした。


 その瞬間。


 ――ボウッ!!


 突然、

 薪が爆発みたいに燃え上がった。


「っ!?」


 全員が息を呑む。


 ユウト自身も固まっていた。


 触っていない。


 なのに。


 火が、

 勝手に燃え上がった。


 赤い炎が、

 ユウトの瞳に映る。


 そして。


 五人のOLたちが、

 一斉にユウトを見つめていた。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


会社では誰も笑わなかった。

でも、

焚き火の前では少しだけ笑えた。


そして、

その夜に“力”が生まれました。


次回、

ユウトたちは自分たちの異変に気付き始めます。


もし続きが気になったら、

ブックマークや感想をいただけると本当に嬉しいです。

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