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『異世界ブラック企業から逃げた俺、OLたちと焚き火をしながら社長を討伐する』  作者: アラベ幻灯


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11/12

『笑顔のOLは、会社に“変形”させられていた』

人は壊れる。


でも、

もっと恐ろしいことがある。


壊れる前に、

“形を変えられてしまう”ことだ。


笑顔。

愛想。

元気。


それは本当に、

その人自身なんだろうか。


第十一話、開幕です。

「突撃!!」


 ユウトの声と同時に、

 爆炎が夜空へ広がった。


 《MechaNingen Inc.》


 異世界ギヴケインにおける、

 巨大工業機械メーカー。


 巨大な掘削機。


 鉄骨加工機。


 魔導式産業アーム。


 それらを大量生産し、

 異世界中へ売り捌くブラック企業。


 そして。


 今日もまた。


 大量のサラリーマンとOLたちが、

 その中で無表情に働いていた。


   ◇


「右から来るよーっ!!」


 優花が叫ぶ。


 彼女の魔法が炸裂し、

 “和”の糸を吹き飛ばした。


「ナイスだ優花!!」


「えへへ〜っ♪」


 優花はいつもの笑顔だった。


 明るい。


 元気。


 まるで太陽みたいに。


 だが。


 ユウトだけは、

 あの夜の優花を忘れていなかった。


 火の前で、

 疲れ切っていた彼女を。


   ◇


「ぐっ……!」


 優花が敵の攻撃を避ける。


 その拍子に。


 彼女のリュックが開いた。


 一冊のノートが地面へ落ちる。


 だが。


 優花は気づかない。


 戦闘が激しすぎた。


「優花!!

 後ろ!!」


「はーいっ!!」


 彼女は笑顔で飛び込んでいく。


 ユウトは地面へ落ちたノートを見る。


「……」


 あのノートだった。


 いつも持ち歩いている、

 古びたノート。


 ユウトは咄嗟にそれを拾い、

 自分の荷物へ入れた。


   ◇


「終わりだ!!」


 ユウトの剣が“和”を真っ二つに切り裂く。


 黒い糸が空中へ散る。


 だが。


 “和”は笑った。


「何度でも現れるさ」


「人間が“空気”を求める限りな」


「黙れ!!」


 ユウトが叫ぶ。


 しかし。


 次の瞬間には、

 “和”の姿は霧のように消えていた。


   ◇


 その夜。


 ユウトたちは森へ戻っていた。


 焚き火。


 薬草。


 血の匂い。


 戦いのあとの静かな時間。


 璃香が怪我の手当てをしている。


「じっとして」


「はいはい〜」


 紗弥香が苦笑する。


 優花もまた、

 いつものように笑っていた。


「みんなお疲れ様ーっ!!」


 だが。


 ユウトは時々、

 彼女を見てしまう。


 本当に、

 その笑顔は本物なのか。


   ◇


 深夜。


 みんなが眠ったあと。


 ユウトは一人、

 焚き火の前に座っていた。


 ぱちっ。


 火が揺れる。


 そして。


 彼は自分の荷物から、

 あのノートを取り出した。


「……少しだけ」


 罪悪感はあった。


 でも。


 知りたかった。


 優花が、

 何を隠しているのか。


 ユウトはゆっくりページを開く。


   ◇


『今日も笑った』


『今日も元気なふりをした』


『店長に褒められた』


『もっと笑えって言われた』


『もっと可愛くしろって言われた』


『もっと明るくしろって言われた』


 ユウトの眉が動く。


 ページをめくる。


『私は元気じゃない』


『でも元気じゃないと嫌われる』


『だから笑う』


『笑って笑って笑って笑って』


 文字が少し乱れている。


 まるで、

 書いている途中で泣いていたみたいだった。


 さらにページをめくる。


 そして。


 ユウトの視線が止まった。


『もう昔の自分が分からない』


『会社に入ってから、

 ずっと笑ってた』


『気づいたら、

 本当に笑うしか出来なくなってた』


『あの人たちは』


 そこで文章が止まり。


 次のページに、

 大きな文字でこう書かれていた。


『彼らは私を変形させた』


   ◇


 焚き火が揺れる。


 ユウトは黙ったまま、

 その文字を見つめていた。


 変形。


 その言葉が、

 妙に胸へ刺さる。


 優花は壊れたんじゃない。


 会社によって。


 “元気で明るい人間”へ、

 作り変えられてしまったのだ。


 遠くで。


 優花が寝返りを打つ。


 そして眠ったまま、

 小さく笑った。


 まるで。


 夢の中ですら、

 誰かへ愛想笑いをしているみたいに。

ここまで読んでくださってありがとうございます!


「元気な人」は、

本当に元気なんでしょうか。


それとも、

そう振る舞わないと生き残れなかっただけなんでしょうか。


優花編、

もう少し続きます。


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