元気なOLは、笑顔の裏で壊れていた
いつも明るい人ほど、
本当は一番無理をしているのかもしれない。
笑顔。
元気。
愛嬌。
それは時々、
“仕事”として身につけた仮面だから。
第十話、開幕です。
「みんなーっ!!
今日もブラック企業ぶっ壊していくよーっ!!」
優花が両手を上げながら叫ぶ。
「おー!!」
紗弥香もノリ良く拳を上げた。
飛鳥が少し呆れながら言う。
「……朝から元気ですね」
「えへへ〜♪」
優花は笑う。
太陽みたいな笑顔だった。
◇
優花はいつもそうだった。
戦いの前。
戦いの後。
落ち込んだ時。
疲れた時。
必ず、
みんなを励ます。
「大丈夫だよ!」
「私たちなら勝てるって!」
「自由はもうすぐだよ!」
彼女がいるだけで、
空気が明るくなる。
ユウトも、
それに何度も救われていた。
◇
その夜。
ユウトたちは森で野営していた。
焚き火が静かに燃えている。
ぱちっ。
ぱちっ。
火の粉が夜空へ舞う。
「あっ、
薪なくなりそう」
璃香が言った。
「じゃあ取ってこようか」
飛鳥が立ち上がる。
「私も行く〜!」
紗弥香も続く。
「優花ちゃんは火を見てて」
「はーい♪」
優花は笑顔で手を振った。
◇
数分後。
ユウトはふと思った。
(そういや、
優花に何か食べたい物聞いてなかったな)
彼は一人、
焚き火へ戻る。
だが。
「…………」
ユウトは足を止めた。
そこにいた優花は。
いつもの優花じゃなかった。
焚き火の前。
ぼんやり座っている。
肩が落ちている。
目の下には濃い隈。
顔色も悪い。
まるで。
数日間眠っていないみたいだった。
ユウトは息を呑む。
優花はまだ気づいていない。
火を見つめながら、
小さく息を吐いた。
「……つかれた」
その声は。
今まで聞いたことがないほど、
弱々しかった。
ユウトの胸がざわつく。
優花はいつも元気だった。
いつも笑っていた。
でも今目の前にいるのは。
全部の力が抜け落ちたみたいな、
一人の疲れ切った女性だった。
◇
「……優花?」
「ひゃっ!?」
優花が飛び上がる。
そして。
一瞬で。
「あ、ユウトくんっ♪
どうしたのー?」
いつもの笑顔へ戻った。
完璧な笑顔。
完璧な声。
完璧な“元気な女の子”。
だが。
ユウトはもう見てしまった。
仮面の下を。
「……なんでもない」
ユウトは静かに言う。
「食べたい果物とかあるかと思って」
「ほんとっ!?
じゃあ甘いやつ〜♪」
「分かった」
優花は笑う。
いつものように。
でも。
ユウトは違和感を消せなかった。
◇
翌日。
「よーし!!
今日も自由のために頑張るよーっ!!」
優花はまた、
いつもの優花だった。
元気。
明るい。
眩しい。
紗弥香が笑う。
「優花ちゃん朝からテンション高すぎ〜」
「えへへ〜♪」
だが。
ユウトだけは、
昨日の光景を忘れられなかった。
(あれが……
本当の優花なのか?)
戦闘中も。
移動中も。
優花はずっと笑っていた。
まるで、
一瞬でも止まったら壊れてしまうみたいに。
◇
夕方。
野営の準備中。
ユウトは偶然、
優花の荷物が少し開いているのを見つけた。
その中に。
一冊の古びたノートが入っていた。
「……?」
優花は、
いつもそれを持ち歩いている。
戦闘中も。
移動中も。
ずっと。
ユウトはそのノートを見つめる。
(あれは……なんだ?)
焚き火の火が揺れる。
そして。
優花は遠くで、
またみんなへ笑いかけていた。
まるで。
何も壊れていないみたいに。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
「元気キャラ」は、
本当に元気なんでしょうか。
それとも、
誰かを安心させるために笑っているだけなんでしょうか。
優花編、
少しずつ始まります。
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