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『異世界ブラック企業から逃げた俺、OLたちと焚き火をしながら社長を討伐する』  作者: アラベ幻灯


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10/12

元気なOLは、笑顔の裏で壊れていた

いつも明るい人ほど、

本当は一番無理をしているのかもしれない。


笑顔。

元気。

愛嬌。


それは時々、

“仕事”として身につけた仮面だから。


第十話、開幕です。

「みんなーっ!!

 今日もブラック企業ぶっ壊していくよーっ!!」


 優花が両手を上げながら叫ぶ。


「おー!!」


 紗弥香もノリ良く拳を上げた。


 飛鳥が少し呆れながら言う。


「……朝から元気ですね」


「えへへ〜♪」


 優花は笑う。


 太陽みたいな笑顔だった。


   ◇


 優花はいつもそうだった。


 戦いの前。


 戦いの後。


 落ち込んだ時。


 疲れた時。


 必ず、

 みんなを励ます。


「大丈夫だよ!」


「私たちなら勝てるって!」


「自由はもうすぐだよ!」


 彼女がいるだけで、

 空気が明るくなる。


 ユウトも、

 それに何度も救われていた。


   ◇


 その夜。


 ユウトたちは森で野営していた。


 焚き火が静かに燃えている。


 ぱちっ。


 ぱちっ。


 火の粉が夜空へ舞う。


「あっ、

 薪なくなりそう」


 璃香が言った。


「じゃあ取ってこようか」


 飛鳥が立ち上がる。


「私も行く〜!」


 紗弥香も続く。


「優花ちゃんは火を見てて」


「はーい♪」


 優花は笑顔で手を振った。


   ◇


 数分後。


 ユウトはふと思った。


(そういや、

 優花に何か食べたい物聞いてなかったな)


 彼は一人、

 焚き火へ戻る。


 だが。


「…………」


 ユウトは足を止めた。


 そこにいた優花は。


 いつもの優花じゃなかった。


 焚き火の前。


 ぼんやり座っている。


 肩が落ちている。


 目の下には濃い隈。


 顔色も悪い。


 まるで。


 数日間眠っていないみたいだった。


 ユウトは息を呑む。


 優花はまだ気づいていない。


 火を見つめながら、

 小さく息を吐いた。


「……つかれた」


 その声は。


 今まで聞いたことがないほど、

 弱々しかった。


 ユウトの胸がざわつく。


 優花はいつも元気だった。


 いつも笑っていた。


 でも今目の前にいるのは。


 全部の力が抜け落ちたみたいな、

 一人の疲れ切った女性だった。


   ◇


「……優花?」


「ひゃっ!?」


 優花が飛び上がる。


 そして。


 一瞬で。


「あ、ユウトくんっ♪

 どうしたのー?」


 いつもの笑顔へ戻った。


 完璧な笑顔。


 完璧な声。


 完璧な“元気な女の子”。


 だが。


 ユウトはもう見てしまった。


 仮面の下を。


「……なんでもない」


 ユウトは静かに言う。


「食べたい果物とかあるかと思って」


「ほんとっ!?

 じゃあ甘いやつ〜♪」


「分かった」


 優花は笑う。


 いつものように。


 でも。


 ユウトは違和感を消せなかった。


   ◇


 翌日。


「よーし!!

 今日も自由のために頑張るよーっ!!」


 優花はまた、

 いつもの優花だった。


 元気。


 明るい。


 眩しい。


 紗弥香が笑う。


「優花ちゃん朝からテンション高すぎ〜」


「えへへ〜♪」


 だが。


 ユウトだけは、

 昨日の光景を忘れられなかった。


(あれが……

 本当の優花なのか?)


 戦闘中も。


 移動中も。


 優花はずっと笑っていた。


 まるで、

 一瞬でも止まったら壊れてしまうみたいに。


   ◇


 夕方。


 野営の準備中。


 ユウトは偶然、

 優花の荷物が少し開いているのを見つけた。


 その中に。


 一冊の古びたノートが入っていた。


「……?」


 優花は、

 いつもそれを持ち歩いている。


 戦闘中も。


 移動中も。


 ずっと。


 ユウトはそのノートを見つめる。


(あれは……なんだ?)


 焚き火の火が揺れる。


 そして。


 優花は遠くで、

 またみんなへ笑いかけていた。


 まるで。


 何も壊れていないみたいに。

ここまで読んでくださってありがとうございます!


「元気キャラ」は、

本当に元気なんでしょうか。


それとも、

誰かを安心させるために笑っているだけなんでしょうか。


優花編、

少しずつ始まります。


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