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戦争から帰ってきた夫が連れてきたのは彼が愛する人の子供だった。  作者: 花


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61話

 マシューと結婚………?


 マシューのことは兄のように慕っているし家族として大好きで、仕事の仲間で、意見を言い合えるし、リュシアンのことも可愛がってくれる。


 だけど、そこに恋愛的な気持ちは?


 マシューは、確か恋人が以前はいたと聞いている。

 長くお付き合いをしていたのに結婚まではいかなくて別れたと商会で働く人から噂で聞いた。そんなに好きだった人がいたのに、私と?


 返事を躊躇っていると「返事は急がなくていい。ただ考えて欲しい」と言うと、リュシアンを隣の部屋のベッドへと連れて行き寝かせてくれた。


「ゆっくり考えて」


「うん」


 マシューが部屋を出て「はあぁ」と大きな溜息。


 やっとリュシアンのもとへ帰れてホッとしたばかりなのに、結婚?


 前世では再婚することも恋人を作ることもせず子どもを育て上げ孫たちを可愛がり最後まで女一人で生きてきた。


 そのことに後悔はなかった。楽しかったし、充実していたもの。


 でも今は?


 ネージュ様と離縁してバタバタと慌ただしい時間が過ぎて、恋愛なんて考えられなかった。


 仕事も軌道に乗せなければリュシアンと二人食べていけない。必死で生きてきたつもり。ネージュ様から慰謝料や生活費はもらえる約束だけど、やはり何かあったら困るからお金はあって困るものではない。


 それに侯爵家との事業は今経営悪化でネージュ様も大変な時期だろう。


 一応伯爵家は事業の提携と人前では言っていたけど実際は仕事だけさせられて、体のいい手伝いという形で主に侯爵家が利益を貪っていたのでそこまで大損することはないはず。


 侯爵は利益をほとんど詐取していたのでその責任を今負わされて頭を抱えていたようだ。資金繰りの悪化に私が離縁したことで事業が滞っていた。さらに義兄がバカなことをしてさらに悪化に追い打ちをかけてしまった。


 ふぅー、今は忘れてしまおう。


 あの人達のことを思い出すと心の中がザワザワとして落ち着かなくなる。侯爵家は多分廃爵になるか、降爵されるか……


 これからの彼らの未来はどちらにせよ暗く苦労する事になるだろう。



 リュシアンのスヤスヤと寝ている顔に癒された。


 机に座り、引き出しの中から日記を取り出した。


 侯爵に渡した日記は、まだ返ってきていない。


 捨てられたか、放置されたのか。


 もう過去を憂いて暮らさのはやめてリュシアンのためにも前を見て進もう。


 そう思い数冊の日記を火のついた暖炉の中へと放った。


 暖炉の中からパチパチと聞こえてくる。


 ただそれをじっと聞いて見つめていた。


「さぁ、仕事頑張ろう。誰かのために無理やりさせられるのではなく自分のために働かなきゃ」


 また机に戻り以前やりかけていた新商品の案を再考しているとつい夢中になって時間を忘れていた。


「………かあさま…」


 泣きじゃくるリュシアンの声にハッとして慌てて寝室へ向かう。


 不安そうに起き上がり泣いているリュシアンを抱き寄せて「ごめんね?目が覚めちゃったのね?」と抱きしめてあげた。


「かあさま……いいこでいるから、いなくならないで」


「うん。リュシアン、いい子でなくてもいいの。あなたは私の大切な息子なの。我儘だって言っていいし、我慢なんてしないで。大好きよ」


 私の幸せはこの子を守る事。




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