ひろし、ベイリゲンへ急ぐ
黒ちゃんは欅の棒に盾を準備すると、相手のテテルは両手に金棒を装備した。
『おおっと、棍棒対金棒だ! これは面白い試合になりそうです!』
すると金棒を持ったテテルが黒ちゃんに言った。
「なんだよ盾なんか持っちゃって。防御するヒマあったら殴れっつうの」
「防御? なんの事かな?」
するとその時、試合開始のゴングが鳴った。
カーン!!
『試合開始!』
その瞬間、テテルと黒ちゃんは同時に飛び出した。
「おぉぉぉおおお!」
「うぉぉぉおおお!」
ドガン!!
「げふっ!」
黒ちゃんは飛び出した勢いそのままに、思い切り盾でテテルを殴り飛ばした。
ズザァァァアア
「た……、盾で……、え?」
「おぉぉりゃぁぁあああ!」
黒ちゃんは吹き飛んだテテルに走り込み、欅の棒で叩きつけた。
ドガン! ドガン! ドガン! ドガン!
「ちょ! まって! うわっ! まじか!」
シュゥゥウウウ……
黒ちゃんの連続攻撃が決まると、テテルは消滅してプレイヤー席にリスポーンした。
◆
その頃、ルルはダンジョンに潜入してた。
そしてダンジョンの同じ場所を行ったり来たりしている怪しいプレイヤーを見つけて声をかけていた。
「こんにちは~。あのぉ、アーボンさんっていう方を知りませんか……」
すると、そのプレイヤーは剣を抜いて戦闘態勢に入った。
それを見たルルは涙目になって上目使いで演技をしながら、そのプレイヤーに言った。
「待ってください~。わたしアーボンさんに雇われたんですぅ」
「え、そ……、そうなの?」
「そうなんですぅ。でもアジトの場所がわからなくて~」
「あれ、聞いてないの? 地図もらったでしょ」
「ぐすん。わたし地図苦手なんですぅ」
「え、あ、そ、そうなんだ。ごめんごめん、勘違いしたよ。ははは! まかせて! おれが案内するね」
「えーん、ありがとうございますぅ」
「え、へへへ。いいって、いいって」
「ふっ。ちょろいわね」
「え?」
「ううん。えっとぉ、親切で素敵な方だなぁって」
「素敵だなんて、えへへへ」
プレイヤーは騙されて、ルルをアジトに案内し始めた。
◆
しばらくして、ダンジョンの外で隠れながら待機していたベンドレにルルからメッセージが来た。
ーーーーーーーーー
ルル:アジトは地下2階の北の奥。もう少し中を偵察するわ
ーーーーーーーーー
「みなさん、ルルがアジトの場所を突き止めたようです。地下2階の北の行き止まりです」
「あそこか」
「なるほど、あの場所ですね」
「うん。なるほど」
「あそこなら奥が広いな」
ダンジョンを知っている数人が声を漏らすとベンドレはみんなに言った。
「おそらく北の通路に入れば敵がやって来るでしょう。北の通路に入ったら陣形を整えましょう」
「「はい!」」
こうしてベンドレたちはダンジョンの中へと入っていった。
◆
その頃、試合会場では黒ちゃんがエストンレルト代表の次鋒、マッチルダと対戦していた。
ガン! ガンガン!!
「まだまだー!!」
なんとマッチルダは両手に盾を持った社長スタイルで黒ちゃんの攻撃を受け続けていた。
黒ちゃんはさすがに手を焼いていたが、ふと冷静になって、マッチルダに豪炎の壺を投げつけた。
ガシャッ。 ボワッ!!
「う、うわぁ!」
「攻撃してこないなら、燃やしてしまうぞ」
「く、くそう!」
マッチルダは仕方なく盾を仕舞ってホワイトドラゴンの両手剣を装備すると、一気に黒ちゃんに斬りかかった。
「防御だけの男だと思うなよ! でやぁ!」
しかし黒ちゃんはニヤリと笑うと、欅の棒で両手剣を叩きつけた。
バキョッ!!
欅の棒は一瞬で折れたが、即座に盾でマッチルダを叩きつけた。
ガンッ!
「うぐっ!」
バキッ! ドガッ!
そして右拳で殴りつけると、素早く腕を取って一本背負いで投げ捨てた。
「でやぁぁあ!!」
「ぐわっ!」
ドシャァ……
マッチルダは黒ちゃんにビビりながら後ろへ下がると、突然、後ろの席にいたアーボンが立ち上がって大声を上げた。
「おい、アジトへ帰るぞ! この試合は棄権だ、急げ!」
「え、アーボンさん?」
「まだ試合が……」
「今っすか?」
「ベンドレ師匠がアジトに来た!! プレイヤーキラーを一掃するって言ってるらしい!」
「ええっ!!」
アーボンは慌てて棄権ボタンを押すと、黒ちゃんと戦っていたマッチルダは席にリスポーンした。
そしてアーボンたちは急いでトレーニングルームから出ていくと、それを見た黒ちゃんは慌ててみんなに言った。
「これはまずい! 我々も急いでエストンレルトへ転移しましょう!」
するとアカネが黒ちゃんに言った。
「エスト……? どこ、それ」
「しまった!」
黒ちゃんが慌てて声を漏らすと運営のタックがアナウンスした。
『エストンレルトの棄権により、勝者ピンデチ!』
しかし黒ちゃんは、アカネとめぐとおじいさんがエストンレルトへ行った事がなく、転移できない事に焦っていた。
すると観客席のゴーストが黒ちゃんの異変に気づいてやって来て言った。
「黒ちゃんさん。何かあったのですね」
「はい。これからエストンレルトの東のダンジョンで大きな戦いがあるのでが、転移できるのが2人だけで……」
「そうですか。何やらお急ぎのご様子。よかったら私も手伝いましょう」
「本当ですか!? それはとても心強いです!」
黒ちゃんはそう言うと、おじいさんに言った。
「ひろしさん、申し訳ありません。私とゴーストさんとイリューシュさんで先にエストンレルトへ行きます」
「え、あ、はい!」
おじいさんが驚いて返事をすると黒ちゃんは話しを続けた。
「ひろしさんたちはベイリゲンの町へ転移して、モービルで北へ向かう一本道を進んでください! そして別れ道を右へ向かえば合流できるはずです!」
「は、はい!」
「すみませんが、宜しくお願いします!」
「分かりました、軽トラで急ぎます!」
こうして黒ちゃんたちは東のダンジョン、おじいさんたちはベイリゲンへ転移していった。
その頃、ダンジョン地下2階の北の通路ではベンドレたちとアーボンの手下たちの激闘が繰り広げられていた。
先頭のベンドレたち4人は順調に敵を倒しながら進んでいったが、外からの敵の応援が増えてきて、ライラたち最後列は苦戦を強いられていた。
しかし、劣勢ながらもライラと海は盾で攻撃を防ぎながら、大熊笹と茂雄が敵を蹴散らしていた。
「よいしょ!」
「ほい!」
「あなたも!」
「シュッ!」
バチン!
「シュシュッ!」
ドスッ、バチン!!
大熊笹と茂雄が善戦するも、敵の人数が多く少しづつ押されていくと、ライラは弓で援護しているナミに応援を要請した。
「ナミさん申し訳ございません! ララガの援護お願いします!」
「わかった。ぉ母さん!」
「ガァァアオオオオオ!」
ナミがタクトを振るとお母さんが現れた。
すると後ろから攻めてきた応援の仲間を指揮していた細身で筋肉質の男性プレイヤーが、ララガを見て前に出てきた。
「ほほう、テイマーが居るのか」
細身のプレイヤーは仲間のプレイヤーを押しのけて最前列に出ると、大声で言った。
「こいつはレアだ! おれはララガと戦いてぇ。手を出すなよ」
すると仲間のプレイヤーは一斉に下がって細身のプレイヤーを見守った。




