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ひろし、手を振る

 おじいさんがゆっくりとリングから降りると、それを見たアカネがめぐに言った。


「おっし、じゃあ次はあたしたちだ!」


「よーし、勝負だね!」


 アカネとめぐがリングに上がると、みんなも興味津々(きょうみしんしん)で観戦を始めた。


「あの2人の勝負なんて珍しいわね」

「どうしたのでしょうか」

「でも面白そうですね」


 アカネが構えをとると、めぐは少し距離をとって剣と盾を構えた。


 そして、めぐはアカネに言った。


「準備できた! いつでもいいよアカネ」


「おっし、いくよ!」


 ババッ!


 アカネが勢いよく飛び出すと、めぐが恐ろしいスピードの早口(はやくち)で小呪文を詠唱をした。


「全てを焼き尽くす魔神よ、我に灰塵に帰す力を与えたまえ!」


 ボワッ!

「うわっ!」


「全てを焼き尽くす魔神よ、我に灰塵に帰す力を与えたまえ!」

「全てを焼き尽くす魔神よ、我に灰塵に帰す力を与えたまえ!」


 ボワッ! ボワッ!

「わっ! おっとと!」


 アカネは素早く身をかわして炎を避けると一旦めぐから距離をとって構え直した。


「めぐ、すごいよ!! はやっ!!」


 リングの下で見ていたルルとイリューシュも驚いて言った。


「めぐさん、詠唱はやっ!」

「ええ。もしかしたら、ルルさんよりも……」


「そうね、間違いないわ。すごいわね……」


 めぐはイリューシュたちの声が聞こえて嬉しそうにしていると、ベンドレが転移先から戻って庭に帰ってきた。


 そしてベンドレは黄色い箱を5つ出現させると、みんなに言った。


「みなさん、火薬玉のついでに爆弾シュークリームを買ってきました。戦いの前に食べませんか?」


「まじで? やった!」

「シュークリーム好き!」

「あ、エストンレルトの!」

「まぁ、わたし好きなんです」

「ははは、すごい名前ですな」

「あの大きなシュークリームか!」


 みんなは、わらわらと家の中に戻ると大広間で爆弾シュークリームを楽しんだ。



 ー 試合15分前 ー


 おじいさんは白たんにタッちゃんを預けると、みんなと一緒に家の外に出た。


 一緒に外へ出たベンドレはみんなの前に出ると、深々と一礼して話し始めた。


「みなさん。今回の作戦は元はといえば私を真似た後輩の不始末が原因。大変申し訳ございません」


 それを聞いた大熊笹は笑顔でベンドレに答えた。


「ベンドレさん。あなたはこうして立派に更生しました。今度はあなたが後輩を更生させる番かもしれませんな」


「はい。責任を持って……」


 ベンドレが眉間にシワを寄せながら答えると、ルルが会話を遮るように声を出した。


「もう、何しんみりしてるのよベンドレ! 行くわよ!」


「あ……、おう……」


 ベンドレが申し訳無さそうにすると、ルルは笑顔でみんなに言った。


「じゃあ、あたしは先に行って偵察してくるわ。みなさん試合がんばってね。いってきまーす」


「「いってらっしゃーい!」」


 ブゥー……ン


 ルルはそそくさと転移していくと、それを見送った黒ちゃんがおじいさんたちに言った。


「では我々も試合会場のトレーニングルームへ行きましょう」


「「はい」」


 そして黒ちゃんは少し笑顔を見せながらベンドレたちにも言った。


「ベンドレさん、みなさん。くれぐれもお気をつけて」


「すみません……。ありがとうございます」

「いってきます」

「お互い頑張りましょう」

「が、ががが、がんばります」


「では、我々は試合に向かいます。お互い頑張りましょう。行ってきます」


「「いってらっしゃい!」」


 ブゥー……ン

 ブゥー……ン、ブゥー……ン

 ブゥー……ン、ブゥー……ン


 おじいさんたちはトレーニングルームに転移した。


 ベンドレはおじいさんたちを見送ると残りのメンバーに言った。


「では我々もエストンレルトへ転移しましょう。宜しくお願いします」


 するとそれを聞いたマユが焦りながらベンドレに尋ねた。


「えっと、あの、そこってどこですか?」


「……! そうでした! エストンレルトへ行った事のない(かた)もいましたね」


 ナミと大熊笹、そして茂雄も頷いた。


「では、ベイリゲンへ転移してモービルで移動しましょう」


 こうしてベンドレたちはベイリゲンへと転移していった。



 その頃、アーボンたちは先に試合会場のトレーニングルームでおじいさんたちを待っていた。


 アーボンは剣の先で地面に絵を描きながら仲間に話しかけた。


「なぁ、ヒマ過ぎて30分以上前に来ちまったけどさぁ……。マジでヒマじゃね?」


「あ、はい。ヒマっすね……」


 するとアーボンは仲間の1人も剣で地面に絵を描いているのを見つけた。


「あれっ? おまえ、めっちゃ絵うまいじゃん」


「あ、はい。現実世界で漫画家やってるんすよ」


「え、マジで? すげぇじゃんか」


「いや、でも全然売れないんで打ち切り決定なんすけどね」


「そーなの? そんなに絵が上手いのにダメなのか。漫画家は厳しいんだな」


「そうなんすよね。またバイト生活っすね」


「それならさぁ、俺の動画チャンネルのキャラクター描いてよ。10万出すからさ。お前には頑張って欲しいから」


「ま、まじっすか!? え、じゃあ、アーボンさんをデフォルメして……」


 ガリガリ……、ガリガリガリ……


 すると仲間の1人は剣の先で地面にアーボンのキャラクターを描いた。


「こんな感じで、どうっすか?」


「え、これ俺? まじで、めっちゃいいじゃん! これなら20万出すわ」


「まじっすか! あざーっす!!」


「うんうん、たしかに似てるね」


「「え?」」


 アーボンと仲間たちが顔をあげると、アカネが笑顔で座っていた。


「うわっ! ってか誰?」


 アーボンが驚くとアカネは立ち上がってアーボンに言った。


「あたしアカネだよ。ピンデチ代表!」


「あ、なんだ、やっと来たか! はやく試合しようぜ」


「うん、おっけー!」


 アカネが親指を上げながらピンデチ代表の席に着くと、黒ちゃんが観客席の誰かと話していた。


「黒ちゃん! はやく試合しようって言ってるよ」


「お、おう! マガイルーのゴーストさんが見に来てくれているのだ。ちょっと待ってくれ」


「え、まじで?」


 アカネがそう言うとアーボンの仲間たちは驚いてヒソヒソ話し始めた。


「おい、マガイルーのゴーストって、あの有名な……」


「そうそう。賢者で大司教のヤベぇ魔法使いだ」


「それに、VRグラスの脳波検出装置を作ってる会社の御曹司(おんぞうし)で、かなり課金してるらしいぞ」


「まじか! ってか、まてよ。マガイルーってピンデチに負けたよな」


「え? ってことはゴーストが負けたのか?」


 するとその時、ドローンカメラが数台飛んできてアナウンスが流れた。


『こんにちは、運営のタックです! さぁ、エストンレルト代表対ピンデチ代表の試合が始まりますよー!』


 会場の大画面にはおじいさんたちが映し出された。


『さぁ~、まずはピンデチ代表! メンバーは黒ちゃんさん、ひろしさん、めぐさん、アカネさん、イリューシュさん、です』


 おじいさんたちはアナウンスが流れると笑顔で手を振った。


『対するエストンレルト代表は、テテルさん、マッチルダさん、新宿さん、ポポポンさん、アーボンさんです』


 アーボンたちは飛んできたドローンカメラにポーズを決めた。


『では試合を始めます! この試合はドローンカメラで撮影され全世界に配信されます!』


 ブゥィィィイイイン


 ドローンカメラが数台飛び回ると、タックがアナウンスで先鋒を呼び出した。


『では先鋒(せんぽう)、お願いします!』


 黒ちゃんは立ち上がって前に出ると、敵の先鋒(せんぽう)のテテルも前に出た。

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