マユ、舞う
ー 夜 ー
おばあさんの友人のマユは、隣のお店の店員で片手剣の達人、ゆぅと剣術の練習をしにピンデチ近くの荒野地帯にやって来ていた。
キン! シュン! キンキン! カン!
シュッ……、カシャン、カーン!
「あっ! またやられた!」
マユは剣を弾き飛ばされると悔しそうに声を漏らした。
ゆぅは弾き飛ばしたマユの剣を拾うと、手渡しながら静かに説明した。
「連続攻撃の後も剣を引くのを忘れると、絡め取られるから……。でも、すごく上手くなった……」
マユはそれを聞いて笑顔になると、ゆぅに言った。
「ゆぅさんはいつも褒めてくれるから、やる気出るよ。ははは」
「よ……、よかった。はは」
ブーーーン
するとゆぅの先輩で店主のロビが、バギーのモービルでやって来た。
ロビはバギーを止めて降りると、後部座席からゆぅの同僚のミツと、ベンドレが降りてきた。
ベンドレはゆぅに頭を下げると、マユはベンドレに驚いて声を上げた。
「あれ、ベンドレさん! ロビさんともお知り合いだったんですか?」
「はい。あのバリードレの戦いの後、宴会で連絡先を交換しまして」
「そうだったんですね」
すると、ゆぅがベンドレに頭を下げて静かに言った。
「では、はじめましょう」
「はい。そうしましょう」
マユはそれを聞いてベンドレに尋ねた。
「ベンドレさん、何かやるんですか?」
「ええ。模擬戦です」
「戦うってことですか?」
「はい。実は近々プレイヤーキラーのアジトに攻め込むのですが、ロビさん、ミツさん、ゆぅさんにも手伝って頂くことになりまして……」
「え、じゃあ味方ですよね。なのに戦うんですか?」
「はい。戦う事で味方の戦術を知ることができます。そうすれば戦闘中に自分の立ち回りが分かるのです」
「な、なるほど……」
するとロビがマユに説明した。
「今回、近接武器の味方が固まって戦う事になります。なので、お互いの戦い方を知ればお互いを邪魔しません」
「たしかに。って事はミツさんはベンドレさんと戦ったんですか?」
両手槍の騎士のミツは小さく頷くとマユに言った。
「はい……。お互いの……戦術や実力を……理解できました」
「すご。なんかカッコイイですね」
「え、あ、いや……」
ミツが照れると、ロビがマユに言った。
「マユさん、始まりますよ。ベンドレさんとゆぅの戦いなんて、なかなか見れませんからね」
「そ、そうですね」
マユとロビとミツは少し離れると、ベンドレとゆぅの戦いを見学した。
ベンドレは両手剣を引き抜くと下段に構えた。
ゆぅは小さな盾を前にして片足立ちになり、中国武術の剣術のように片手剣を構えた。
ババッ!
先手を取ったのは、ゆぅだった。
ゆぅは低い体勢で飛び込むと斜めに回転してベンドレに斬りかかった。
キンッ!
ベンドレがそれを冷静に両手剣で受けると、ゆぅは盾を持った手で着地して逆立ちの状態で蹴りを繰り出した。
ブンッ! ガキン!
しかしベンドレはそれを肘打ちで弾き返すと、素早く体を横に回転させ水平斬りを放った。
ブンッ! ガンッ!
ゆぅはそれを小さな盾で受けると、意図的に吹き飛んで威力を殺した。
ズザァ……。
マユは2人の戦いを見て思わず声を出した。
「やば! 鳥肌立つ!」
2人は剣を握り直すと、ベンドレがゆぅに言った。
「素晴らしい」
「あ、いえ。はは……」
「では次は攻撃力の低い剣に持ち替えて、大技をぶつけ合いましょう」
「はい」
するとベントレは鉄の両手剣、ゆぅは鉄の片手剣に持ち替えた。
ベンドレは両手剣を納めると、体を低くして居合抜刀の構えを見せた。
ゆぅは再び片足立ちで片手剣を構えると、ゆっくりと息を吐いた。
シュピン!
ブワッ!!
ドガン!
ドスッ!
「うっ」
「くっ」
ベンドレの剣はゆぅの盾ごと振り切ってゆぅを斬りつけ、ゆぅの剣はベンドレの肩を貫通していた。
ズッ……
ガキョ……
2人は剣を引き抜いて静かに納めると、ゆっくりと歩み寄ってお互いに握手をした。
ベンドレは嬉しそうに笑うとゆぅに言った。
「素晴らしい実力です」
「ぼくも本気でやって斬られたのは数年ぶりです」
するとゆぅはマユのほうを見てマユに尋ねた。
「マユさん。マユさんも一緒にアジトで戦いませんか。練習になると思うんです」
「え、ええっ!? だって強い人ばっかりじゃ……」
「おそらくマユさんの実力なら戦力になると思うんです」
「い、いやいやいや」
ゆぅはベンドレのほうを見ると頭を下げて言った。
「ベンドレさん、マユさんと模擬戦をしていただけませんか。ぼくの教え子なんです」
「そうでしたか! もちろんです、両手剣の重い攻撃を経験するのは良いかもしれませんね」
「はい。すみませんが宜しくおねがいします」
「えっ、ちょっ!」
マユは慌てると、ゆぅが笑顔でマユに言った。
「こんなチャンスはないから……。練習のつもりで」
「そ、そっか……。そうだよね! ベンドレさんと戦えるんだもんね。やります!」
マユは意を決したように返事をすると、緊張しながらベンドレの前に出た。
ベンドレは鉄の両手剣を引き抜くと、マユに言った。
「マユさん。わたしは鉄の両手剣でいきますので、全力の装備でかかってきてください」
「は、はい! じゃあ、わたしは爆炎タートルの亀剣で行かせてもらいます」
マユは炎を纏った亀剣と亀の甲羅でできた亀盾を装備して構えた。
ベンドレはそれを見ると少し驚いてマユに聞いた。
「マユさん、爆炎タートルを倒したのですね」
「はい。でもゆぅさんと一緒でしたけど。はは」
「だとしても、爆炎タートルを死なずに倒すのは実力が無いとできません。これは楽しみですね」
「え、ええっ!? ベンドレさん、わたし大したことないですから!」
「いえいえ。ではマユさんのタイミングでかかってきてください」
「は、はい。じゃあ。……はっ!」
ブワッ!
マユは体を低くして回転しながら飛び込むと、美しい姿勢で剣を斬り上げた。
ガキン!
ベンドレはそれを両手剣で受けると、そのままタックルを食らわせた。
ガン!
「やばっ!」
マユは慌てて盾で受けたが吹き飛ばされてしまった。
ズザァァ……
マユは素早く立ち上がると盾を前にして剣を構えた。
するとゆぅがマユにアドバイスをした。
「マユさん。重い攻撃は受けずに流すんです」
「え、流す? あ、は、はい。えっと……。あ、そっか」
それを聞いたベンドレは少し笑顔になると、大きく踏み込んで両手剣をマユを叩きつけた。
ブンッ!! ガッ!
するとマユはベンドレの剣を盾で受け流して軌道を変え、攻撃を逃れた。
そしてマユは素早くサイドステップして回り込むと、鋭角に飛び込んでベンドレを斬りつけた。
ブワッ!
ガン!
「わっ!!」
ベンドレは斬りかかってきたマユの剣を両手剣で弾き返した。
しかしマユはベンドレの剣を滑らせて力を逃した。
ズザァ……ゴロン
マユは地面を転がって受け身を取ると、素早く立ち上がって剣を構えた。
するとベンドレは剣を納めてマユに言った。
「素晴らしいですマユさん!」
「え……、ええっ!?」
「ゆぅさんからの忠告だけでここまで出来るなんて。アジトに攻め込むときには、ぜひ協力していただけませんか?」
「は、はい! お力になれるなら」
こうしてマユもチームに加わる事になった。




