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ひろし、見送る

 その頃、アーボンは逃げ帰ったアジトでハデスと話をしていた。


「ハデス、お前があんなにヤバそうになるなんてビビったよ。あの羽の女、なんなの?」


「アーボン様、彼女はヴァルキリーです。私と同じ冥界族(めいかいぞく)眷属(けんぞく)です」


「なんだって! じゃあ冥界族って事はランクがあるよな。で、あの女のランクは?」


「第3位です」


「まじか、良かった! お前は第2位だもんな」


「ですが、他の冥界族の眷属がヴァルキリーの味方をすれば、さすがの私も勝つのは難しいかと」


「いや、でも冥界族の眷属なんてレアじゃん? 他に手懐(てなず)けたヤツなんていんの?」


「はい。黒猫が」


「え、暗黒魔法の? でも黒猫ってランク低かったよな」


「はい。黒猫は第5位ですが、ヴァルキリーと組めばペア・スキルが発動できます」


「まじか。なんかヤバそうじゃん」


「はい。黒猫の闇の属性とヴァルキリーの聖の属性が合わさり、凄まじい攻撃力の(やり)の雨を降らせると聞きます」


「ま、まま、まじか……」


「しかし、黒猫は主にシャームとピンデチに()り、ヴァルキリーは西の孤島と今日のベイリゲン。接点は無さそうです」


「そ、そうか良かった」


「それと、ヴァルキリーは1日に何度か西の孤島に戻らなければなりません」


「え、そうなの?」


「はい。私も聞いた事しか無いのですが、ヴァルキリーが封印している何か強大な物があるようなのです」


「ふぅん。で、ヴァルキリーが定期的に封印を重ねてるってわけ?」


「はい。それほど強大な物のようです」


「へぇぇ、このゲームって結構いろいろやってんだな」


 アーボンはそう言うと思い出したようにハデスに尋ねた。


「ってかハデス、HPどのくらいで復活しそう?」


「40時間ほどです」


「そっか、そうだよな。結構やられたもんなぁ」


「はい、申し訳ございません」


「いいよいいよ、ハデスにはいつも世話になってるからな。しばらく一緒にノンビリすっか」


「ありがとうございます、アーボン様」


「あ、そうだ。プレミアム・ドラゴン大福あったんだ。一緒に食べようぜ」


「はい。ありがたき幸せ」


 アーボンはプレミアム・ドラゴン大福を開けると、ハデスと一緒に大福を食べ始めた。



 ー ベイリゲンの鍛冶屋 ー


 おじいさんたちは鍛冶屋に指輪を渡して茂雄の分の羽根をもらうと、ナミは水神社で手に入れた「和御魂(にぎみたま)の木片」を鍛冶屋に渡した。


 鍛冶屋は和御魂(にぎみたま)の木片を見るとナミに尋ねた。


「お嬢ちゃん、水除のお守りはお嬢ちゃんが持つのかい?」


「ぅうん。ララガのぉ母さん」


「ララガ? お嬢ちゃんテイマーかい?」


「ぅん」


「はっはっは! ならララガを呼んでくれよ。首の周りを測らねぇと!」


「わかった。ぉ母さん!」


 ナミはタクトを振ってお母さんを呼ぶと、HPが少しだけ回復したお母さんが現れた。


「ぉ母さん」


 ナミはお母さんに抱きついて優しく撫でると、お母さんに言った。


「ぉ母さん、ぁりがとう。だいじょうぶ?」


「クルルルルル」


 お母さんは嬉しそうにナミを()めた。


 すると、そこへ鍛冶屋の職人がやってきてララガの首の寸法を測り始めた。


「ふむ。やっぱりララガは普通のお守りじゃだめだな」


 それを聞いたナミは心配そうに鍛冶屋に聞いた。


「鍛冶屋さん、ぉまもりつくれる?」


「ああ、まかせとけお嬢ちゃん! 最高のお守りを作ってやるさ」


 鍛冶屋はそう言うと作業場に戻ってお守りを作り始めた。


 カンカンカン、キンキンキン!


「あいよ、お嬢ちゃん! 紅白(こうはく)注連縄(しめなわ)で作った特製のお守りだ!」


「ぁ、すごい!」


 ナミはそれを見て喜ぶと、お守りを受け取ってお母さんの首に注連縄(しめなわ)のお守りを結んだ。


 それを見たヴァルキリーは嬉しそうにお母さんを撫でた。


「ララガちゃん、かわいいね」


「ぅん。お母さん、にあってる」


 お母さんは首に太い紅白の注連縄(しめなわ)を巻くと赤い体と(あい)まって、おめでたい感じになった。


 お母さんは満足そうに伏せると、ヴァルキリーがお母さんを撫でながらナミに言った。


「ナミさん、わたしそろそろ帰らないといけないの」


「そぅなの?」


「うん。あの島でやらなくてはいけない事があるの」


「そっか。わかった」


「また、島に遊びに来てね」


「ぅん、またいく」


「うふふ。ひろしさん、大熊笹さん、茂雄さん、またお会いしましょう」


「今日はありがとうございました」

「助かりました。またお会いしましょう」

「今日はありがとうございました」


「ではまた」


 バサッ!

 ビュゥゥウウウウ……


 ヴァルキリーは翼を大きく広げると一瞬で空高く羽ばたいていった。


 おじいさんはヴァルキリーを見送るとナミに言った。


「では、わたしたちも転移魔法を(いただ)きにマガイルーの魔法学校へ行きますね」


「ぅん」


「ではまた、G区画の家でお会いしましょう」


「ぅん。車のせてくれてぁりがとう」


 ナミはそう言って頭を下げると、おじいさんたちも深々と頭を下げた。



 ー 再びアーボンのアジト ー


 アーボンとハデスは大福を食べ終わって、一緒にジェンガで遊んでいた。


「うわ、まじか! ハデス、そこ取るぅ?」


「はい、この場所が一番安全です」


「くっそ、さすがハデス。なんてバランスだよ。もはやアートじゃねぇか」


 ジェンガはかなり不安定な状態でバランスを保っていた。


「おし、じゃあ……、ここかなぁ~」


 アーボンは静かに木の棒を抜き取ろうとするとハデスが一瞬ニヤリと笑った。


「あ、ハデス今笑った! これヤバいやつでしょ!」


「い、いえ、アーボン様。そんな事は……」


「いや、絶対笑った! じゃあ、反対のこっちだ!」


 ススッ


 アーボンは反対側の木の棒を抜き取ると、ジェンガはバランスを保ったまま静止した。


「ほらぁ!! やっぱこっちじゃんか!」


「ははは。さすがです、アーボン様」


 ハデスはアーボンのドヤ顔に嬉しそうに笑った。


 ガチャ


 するとそこへアーボンの部下のタケチがやってきた。


「アーボンさん、お邪魔してすみません。次の試合なんですけど、ピンデチとの試合はいつにします?」


「え、なに? 次の試合ピンデチなの?」


「はい。ピンデチはマガイルーを倒したみたいで」


「まじで? ピンデチって、あのピンデチだよな」


「はい。でも最近は強いプレイヤーが集まってるみたいで……」


「ふぅん。なんかやる気出ないけど、いつでもいいよ」


「わかりました。では試合が決まったらお知らせします」


「おっけー。よろしくね」


「はい」


 タケチは部屋を出ると、試合予定日を全日可能に設定した。


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