ひろし、贅沢する
ー 少女の住む孤島 ー
ブゥー……ン
ナミは孤島に転移してくると、船から降りてベンチに座っている少女のところへ行った。
「漁師さん、ぉ菓子もってきた。マグロ釣れたぉれい」
ナミがやって来ると、ベンチに座っていた少女は小さく笑顔を見せて立ち上がった。
「ナミさん」
ナミはプレミアム・ドラゴン大福の箱を出現させると少女に渡しながら言った。
「漁師さん、これたべて」
「え、わたしに?」
「ぅん」
しかし少女は箱を受け取らず、笑顔でナミに言った。
「ねぇ、ナミさん。いっしょにたべよう」
「え、ぃいの?」
「うん。一緒にたべたい」
「ぅん、わかった」
ナミはプレミアム・ドラゴン大福の箱を開けると、少女と一緒にベンチに座った。
「はぃ、漁師さん」
「ありがとう」
少女はナミから手渡されたドラゴン大福を口に入れると嬉しそうに笑った。
「おいしい!」
「ょかった」
「ナミさん、ありがとう。とってもおいしい」
「まだ、たくさんぁるよ。たべて」
「ほんとうに?」
「ぅん」
「ナミさんありがとう。そういえば、ナミさんテイマーね」
「ぅん。ララガのお母さんとララ助と白たんとおともだちになった」
「テイマーになるのは0.00053の確率。すごい」
「そぅなの?」
「ナミさん、ララガにアクセサリーつけた?」
「アクセサリー?」
「そう。鍛冶屋でアクセサリーつくれる。ララガには『水除けのお守り』がいいわ」
「水除けのお守り?」
「水除けのお守りは、水属性の攻撃を3回無効にするの」
「すごぃ! どうやってつくるの?」
「この世界に5つある神社のうちの水神社お参りして『和御霊の木片』をもらうの」
「にぎ……み……??」
「うん。和御霊の木片。それを鍛冶屋に持っていけば『水除けのお守り』を作れる」
「ありがとぅ。あとでぃってみる。水神社どこにぁるの?」
「ベイリゲンにある盗賊のアジトの上の山。でもモンスターがいるから気をつけてね」
少女はナミと話していると少しずつ表情が明るくなっていった。
ナミはしばらく少女と楽しくお喋りすると、また島に来る約束をしてG区画へと転移していった。
ー G区画の家の近く ー
ブゥー……ン
ナミは家の近くに転移してくると、少し遠くに見えるG区画の海岸に珍しく亀がいるのが見えた。
「ぁ、かめ」
ナミは亀を見つけて笑顔になると海岸へ走っていった。
ズズッ ズズッ ズズッ……
亀はゆっくりと海に向かって進んでいたが、大変そうにしていた。
それを見たナミは大変そうにしている亀を後ろから押すことにした。
「かめさん、押すね」
ズズッ ズズッ ズズッ……
「ょぃしょ……、ょぃしょ……」
すると突然ナミの視界にメッセージが現れた。
『サイドクエスト、天空のヴァルキリーをクリアしました』
『ヴァルキリーが眷属になりました』
「かめさん、バルキリ?」
亀はゆっくりとナミのほうを見ると頷いたように見えた。
ナミはそのまま亀を押し続けると、亀は海に入って泳いでいった。
「またね、バルキリちゃん」
ナミはしばらく体育座りで亀を見送ると、G区画の家へ戻っていった。
ー G区画の家 ー
ガチャ
「ただぃま」
「「おかえりなさーい」」
ナミが帰ってくると、みんなは大広間のテーブルに座ってベンドレの話を聞いていた。
「かいぎ?」
ナミがイリューシュに尋ねるとイリューシュは笑顔でナミに答えた。
「ええ。みなさんでプレイヤーキラーを倒そうと計画してるんです」
「なら、ぁたしも手伝ぅ。ララガたちが世話になってるから」
それを聞いたアカネは喜んでナミに言った。
「まじでナミさん!? めっちゃ心強いよ!」
「がんばる」
ナミはそう言うとテーブルの席についた。
すると、ベンドレはもう一度ホワイトボードに書いた計画を説明した。
ーーーーーーーーーーー
【作戦1】
リーダーのアーボンたちが頂上決戦の試合で戦っている間にアジトへ攻め込み、殲滅する動画を撮影して公開。
→プレイヤー・キラーを倒す者がいるという事を印象づけて抑制を促す。
>次の試合相手はアーボン率いるエストンレルト
>アーボンのアジトはエストンレルト東のダンジョン
>人数は不明だが多数いる様子
【作戦2】
頂上決戦の試合でアーボンたちを倒す。
→プレイヤー・キラーのリーダーが倒されたとネットに拡散する。
【作戦3】
アジトに戻ってきたアーボンたちを再び倒して動画を公開する。
ーーーーーーーーーーーー
ベンドレは説明を終えると、もう1つ情報を付け足した。
「これは未確認情報なのですが、アーボンは強力な眷属を連れているという投稿を見かけます。作戦3は慎重に行いましょう」
「「はい!」」
するとアカネがめぐに言った。
「作戦2は、あたしたちにかかってるな」
「うん。ちょっと怖いね。アーボンっていう人強いんだよね」
「大丈夫、こっちはイリューシュさん居るし!」
「そ、そうだよね」
めぐがそう言うとイリューシュは笑顔で2人に頷いた。
その後も全員で作戦のアイディアを出しながら会議は続き、夕方になったので少しずつログアウトしていった。
茂雄はログアウトしていくみんなを見送ると、残った大熊笹とおじいさんに頭を下げた。
「すみませんが、今夜は宜しくおねがいします」
「いやいや、楽しみですな!」
「わたしも頑張ります。ではまた1時間後に」
「はい。おねがいします」
おじいさんはそう言うと、大熊笹と一緒にログアウトしていった。
おじいさんがVRグラスを外すと、台所から良い匂いがした。
「今日は煮物かな」
おじいさんは台所へ行くと、おばあさんが角煮を作っていた。
「ただいま、おばあさん」
「あら、お帰りなさい」
「今日は煮物だね」
「ええ、今日は早く帰ったから角煮でもしようかしらって」
「お店は大丈夫なのかい?」
「ええ。それが売れ過ぎちゃって売るものが無くなってしまって」
「ええっ!? それで早く帰ってきたのかい?」
「そうなのよ。だから、また店を増やそうかって」
「いやぁ、繁盛しているんだなぁ」
「わたしたちは哲夫さんの言う通りにしているだけなんですけどね」
「さすがはスーパー・ヨクヨさんの創始者。やっぱり哲夫さんはすごいなぁ……」
「ええ、本当に。なんでも今度はルルさんの花屋さんとも提携するみたいで」
「やっぱり餅は餅屋なんだなぁ。……あ、そうだ。今日は後でまたゲームに行ってくるよ」
「あら、何かあるんですか?」
「あぁ、大熊笹さんと一緒に茂雄さんが転移できるようにクエストを進めるんだ」
「まぁ、それはすごいわね。オリンピック金メダリストと世界チャンピオンが一緒なんて贅沢だわ」
「あぁ、本当だ。とても贅沢だなぁ」
おじいさんとおばあさんは楽しくお喋りをしながら夕食をとった。




