ひろし、刺し身を楽しむ
「ぁれ?」
おじいさんたちがマガイルー代表と戦っている頃、ナミはマグロを探して誰も来ないようなマップの端まで船でやって来ていた。
そして偶然、マップにも載っていない小さな島を見つけた。
「ぁの島、レアな花がぁる」
ナミは船を島に近づけさせると、遠目に小さな家と、家の前のベンチに座っている白いワンピースの少女が見えた。
「だれかぃる」
すると少女もナミに気がつくと船の近くまでやってきた。
少女は船の上のナミを見上げるとナミに言った。
「こんにちは」
「こんにちわ」
「……お話ししたいと思ったプレイヤーさんは初めて。お話ししてもいい?」
「ぅん」
ナミが少女と挨拶を交わすとNPC船長のプンペが走ってきてナミに言った。
「この島には停泊できないけど、船首を近づければ、船首の先からロープで降りられますよ」
「ほんと? じゃあ降りたぃ」
「わかりましたナミさん。じゃあ船を動かしますんで!」
「ぅん」
ザザザザザザザザ……
船長のプンペは船を動かして船首を島に近づけると、ナミは甲板にあったロープを拾い上げた。
そして細い船首の先までイモムシのように進んでいくと、先端にロープを縛りつけて島に降りた。
その頃、G区画の家では2回戦を終えたおじいさんたちが和室でくつろいでいた。
「そういえば、次の試合ってどこの人たちなんだろ?」
アカネがドラゴン大福を食べながら言うと、イリューシュが手で何かを動かしながら答えた。
「あ、結果が出ていますね。エストンレルト代表が勝ったので、次はエストンレルト代表と試合です」
「エス……、ト……、えっと、強いんすか?」
「そうですね。ルルさんの話によるとアーボンさんがリーダーのプレイヤー・キラー(他のプレイヤーを殺すプレイヤー)集団のようです」
「アーボン?」
「はい。アーボンさんは昔ベンドレさん師匠と慕っていた仲間だったのですが、今はプレイヤーキラーのリーダーみたいなんです」
「へぇぇ。まぁ、プレイヤーキラーなら気兼ねなく投げられるな!」
アカネが立ち上がって構えをとると、ララ助がアカネに尻尾を振りながら飛びついた。
「おっ、ララ助! おまえが相手だなー!」
アカネは転がりながらララ助をワシャワシャすると、ララ助は嬉しそうにした。
「どうだ! アカネ・ワッシャ、ワシャだっ!」
「クルルルルルル」
「「はははは」」
するとなんと、ララガのお母さんも和室にやってきて腹を出しながらゴロンと転がった。
アカネはそれを見ると、ララ助を抱えてお母さんをワシャワシャした。
「そりゃっ! アカネ大ワッシャ、ワシャだー!」
ワシャワシャワシャ
アカネがお母さんのお腹をワシャワシャすると、ララ助も嬉しそうにお母さんに頭を擦り付けた。
「「ははははは」」
みんなは特に次の試合相手を警戒するわけでもなく、和室でワイワイとくつろいだ。
その頃、ナミは少女と仲良くなって一緒に釣りをしていた。
「ナミさん、釣り、すき?」
「ふつう。ララガたちにご飯あげるためにマグロさがしてる」
「マグロ……。この島に、いちばん近づくの、5分後、南に19.2キロ」
「ぇ? しってるの?」
「うん」
「漁師?」
「うふふ。ナミさん、もう行かないとマグロまにあわない」
「ぇ?」
「船は20ノット。でも、この世界では10倍速。3分で18.52キロすすむ」
「すごぃ漁師さん。じゃあマグロのところにぃってくる」
「うん」
「またくるね」
「うん」
ナミは釣り竿をアイテム欄にしまうと、ロープを登って船に戻っていった。
ー 1時間後、G区画の海岸 ー
ズズッ……、ズズッ……、ズズッ……
ナミは少女のお陰で見事マグロを釣り上げる事ができ、G区画の海岸に戻ってきていた。
そしてララガ親子と白たんを呼び寄せると、マグロを縄をかけて一緒に引きながら、G区画の海岸から家へと向かっていた。
すると、ちょうどルルとベンドレが時計台から降りてきてナミを見つけた。
「あ、ナミさん。すごい魚!」
「本当だ、大きいな」
ベンドレとルルは挨拶を交わしながらナミに駆け寄ると、ルルは魚の大きさに改めて驚いた。
「すっごい魚ね! これ釣ったの?」
「ぅん。マグロ」
「えっ、マグロ!? てか、もしかして引っ張って家に持ってくとか!?」
「ぅん」
「ちょ、それ大変よ! 今みんな呼ぶから待って」
「ぁりがとう」
ルルとはG区画の家にいるイリューシュにボイスチャットを繋いだ。
しばらくすると、家でくつろいでいたみんなが走ってやってきた。
「急にララガたちが消えたから何かと思ったよ!」
「すごい! わたしの身長くらいある」
「立派なマグロですね」
「これは大きいですな!」
「いやぁ、大きいですね」
黒ちゃんは持ってきた布でマグロを包むと、みんなで縄を持って一斉にマグロを引っ張った。
ズズズズズズ……、ズズズズズズズズズズ……、ズズズズズズズ……
みんなで引っ張ると、あっという間にGの区画の家までマグロを引っ張ることができた。
そして家の中にマグロを引っ張り込むと、みんなで大広間の奥の台所までマグロを運んだ。
すると黒ちゃんがエプロンをつけながらナミに言った。
「ナミさん。ここは私がララガが食べられる大きさにマグロを捌きますね」
ナミはそれを聞くと、みんなを指さしながら言った。
「マグロ、みんなにも食べてほしぃ」
「え!? いいんですか?」
「ぅん。いつもみんなに、かんしゃしてる」
するとアカネが飛び跳ねながら言った。
「やったー、マグロだ! ナミさんありがとう!」
「ぅうん。みんな、ぃつもぁりがとぅ」
こうして黒ちゃんはララガ用の切り身と、みんなで食べる刺身を捌き始めた。
みんなは、おじいさんが淹れてくれたお茶を飲んで一息つくとイリューシュが嬉しそうにナミに言った。
「ナミさん、とうとうマグロ釣れましたね」
「ぅん。でも、けっこうぁぶなかった」
「そうですよね、あんなに大きいですから……。でもマグロを見つけられて良かったですね」
「島の漁師さんに、ばしょをぉしえてもらった」
「島の漁師さん……、ですか?」
「ぅん。『近くのプレイヤー一覧』で調べても名前なかったからNPCとぉもう」
「あら、そうなんですね」
ナミとイリューシュが話していると、黒ちゃんが刺身盛りと切り身を持って台所からやってきた。
「みなさん、できましたよ」
「「おおおーーー!!!」」」
黒ちゃんが大皿に乗った刺身盛りをテーブルに置くと歓声があがった。
そして、切り身のほうをララガ親子の前に置くと、ララガ親子は嬉しそうに食べ始めた。
黒ちゃんは小皿と醤油、そして箸を出現させると、みんなに言った。
「では、わたしたちも頂きましょう」
「「はーい!」」
みんなは両手を合わせると頭を下げながら言った。
「「いただきます!」」
「おっし、あたし一番乗りっ!」
アカネは刺し身を1枚箸でつまむと、醤油につけて一口で食べた。
「うまーーー!」
すると、みんなも次々と刺し身を口に入れた。
「おいしー!」
「あら、お寿司屋さんのよりも美味しいわ」
「これは美味しいです」
「美味しいですね」
「最高ですな!」
「ぅん、ぉいし」
「うききっ!」
ナミは刺し身を数切れ食べると立ち上がって玄関に向かった。
それを見たイリューシュがナミに尋ねた。
「ナミさん、どちらへ?」
「島の漁師さんに、ぉれいしてくる。マグロつれたから」
「あ、それなら、プレミアム・ドラゴン大福を持って行って頂けませんか? わたしたちも美味しく頂きましたので」
「ぅん、わかった」
ナミはイリューシュからプレミアム・ドラゴン大福を受け取るとアイテム欄にしまった。
「じゃぁ、ぃってくる」
「いってらっしゃい!」
「よろしくお伝えください」
「美味しかったとお伝え下さい」
「おねがいします」
「よろしくお伝えくださいね」
「ぅん」
ナミは返事をすると家を出て島に転移していった。




