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黒ちゃん、ファンが現れる

 第1試合が終わると、なんとトレーニングルームの観客席にプレイヤーたちが押し寄せてきた。


「あ、いた! あれ撲殺紳士だよ!」

「ほんとだ!」


「あ、あの人! 間違いないよ!」

「カッコイイ!」

「きゃー!」


 なんとネットの試合中継を見て撲殺紳士だと気づいたプレイヤーたちが友達を連れて見に来たのだった。


 それを見たアカネは驚いてめぐに言った。


「うわわわ、黒ちゃんのファンがいっぱい!」

「やば! バズるとすごいね!」


 結局すぐに観客席は一杯になり、会場が熱気に包まれるとアナウンスが流れた。


『さぁ、次の試合です! 観客も入って盛り上がってまいりました!』


「「わぁーー!!!」」


『では、マガイルー代表の次鋒、死の使いさん。お願いします』


 死の使いは立ち上がると、足早に前に出て黒ちゃんの前に来た。


 そして、そそくさと頭を下げると、黒ちゃんも頭を下げた。


 黒ちゃんは頭を下げた瞬間、死の使いの足のポジションが目に入って小さく呟いた。


「……あれは剣士の足のポジション。もしや、このプレイヤー……」


 すると試合開始のゴングが鳴った。


 カーン!


『試合開始!!』


 その瞬間、死の使いはローブの下から片手剣で斬り上げてきた。


「やはり魔法剣士か!」


 バキッ!


 黒ちゃんは瞬時に反応すると、欅の棒で剣を弾いた。


「くっ! バレてたか!」


 死の使いはバックステップで逃れると、素早く詠唱をして剣の先から氷の矢を放った。


 ヒュッ ヒュッ ヒュッ!


 ガン、ガンガン!


 黒ちゃんはそれを盾で受けると、盾を前にしたまま走り出してタックルを食らわせた。


「うぉぉおおおお!!」


 ドガン!


「くっ!」


 死の使いは小さな盾で黒ちゃんのタックルを受けたが、軽々と吹き飛ばされてしまった。


 ドシャアア!


「「「わぁぁーーー!!」」」


 会場が一気に盛り上がると、死の使いは悔しそうに立ち上がった。


 しかし、死の使いはレッドドラゴンの両手剣に持ち替えて黒ちゃんに言った。


「本気で行くぞ。覚悟しろ!」


 死の使いはそう言うと、素早く詠唱して黒ちゃんの頭上に無数の魔法陣を展開させた。


 そしてそれぞれの魔法陣から氷の矢が現れると、一斉に黒ちゃんを狙った。


「上かっ!」


 黒ちゃんは咄嗟(とっさに)に盾を頭の上に構えて矢を防ごうとすると、死の使いは両手剣を突き出して黒ちゃんに突進してきた。


「攻撃は魔法だけじゃないぞ!!」


 バキッ!


 黒ちゃんは咄嗟に死の使いの両手剣を欅の棒で叩きつけたが、欅の棒は折れてしまった。


 死の使いは(はじ)かれた両手剣を構え直すと、再び黒ちゃんの頭上に無数の魔法陣を展開させて言った。


「次で最後だ! 氷の矢に撃たれるか、おれの両手剣で斬られるか、どちらか好きな方を選べ!」


 黒ちゃんは再び盾を頭の上に構えると、死の使いは笑みを浮かべながら両手剣を突き出して黒ちゃんに突っ込んだ。


 ブワッ!


 死の使いが剣を突き出した次の瞬間、


 ガキン!


 ガガガガガン!


 なんと黒ちゃんは右拳で両手剣を殴りつけて軌道を変え、氷の矢は全て盾で防いだ。


 そして黒ちゃんは頭上から盾を豪快に振り下ろし、死の使いに重い一撃を食らわせた。


「おぉぉりゃぁぁあああ!!」


 ドガン!!

「ぐはっ!」


「「「わぁーーー!!!」」」


 観客が盛り上がると、逃げ出すように下がった死の使いは再び悔しそうに立ち上がった。


 するとなんと、マガイルー代表の大将、ゴーストが手を上げて立ち上がった。


『おおっと! マガイルー代表の大将が手を上げました!』


 ドローンカメラが一斉にゴーストの所へ行くと、ゴーストは静かに言った。


「次は私が戦う。次鋒(じほう)の彼と中堅(ちゅうけん)副将(ふくしょう)は負けとしてくれ。無駄な勝負はしない」


『おおっと! マガイルー代表、次鋒、中堅、副将を負けとして、次は大将だー!』


 すると、画面に表示されていた「次鋒、中堅、副将」の文字が全て「敗北」に切り替わり「大将、ゴースト」と表示された。


「「「おおーーー!!!」」」


 大将のゴーストはゆっくりと前に出ると、黒ちゃんに会釈(えしゃく)した。


 黒ちゃんも会釈を返すと、ゴーストは黒ちゃんに言った。


「退屈な試合をさせて済まなかった。次は楽しんでもらえるだろう」


「わかりました。楽しませてもらいましょう」


『さぁ、一気に大将戦の開始だーー!!』


 会場アナウンスが大将戦を宣言すると直様(すぐさま)、試合開始のゴングが鳴った。


 カーン!


『試合開始!!』


 ビュッ ビュッビュ!!


 なんとゴーストは僧侶から転職できる司教と大司教が使えるスキル、風の魔法を放ってきた。


「なっ! 僧侶の魔法を!?」


 黒ちゃんは予想外の攻撃を盾で防ぐと、なんと右から大きな岩が飛んできた。


「岩かっ!」


 黒ちゃんは咄嗟に盾で防いだが反応が遅れて吹き飛ばされた。


 ドシャァァアア


 黒ちゃんは即座に立ち上がろうとしたが、その瞬間、巨大な氷の矢が無数に黒ちゃんを狙っていた。


「くっ!」


 黒ちゃんは急いで盾を構えると、巨大な氷の矢は一斉に黒ちゃんに向かって飛んでいった。


 ドガガガッ、ガガガッ、ガガガガ!!!


 黒ちゃんは盾で防いだが攻撃力は凄まじく、盾の耐久値はどんどん削られていった。


 ガガガガガッ バキャッ!


 そして、とうとう盾は半分に割れて消滅してしまった。


 ドガガッガガガン!


 黒ちゃんは残りの氷の矢を腕でガードしながら受けると、即座に欅の棒を振りかぶってゴーストへ走り込んだ。


「うぉぉぉおおおお!!」


 しかしゴーストはニヤリと笑うと、巨大な魔法陣を展開して言った。


「木の棒が弱い物……。それは、火」


 すると巨大な魔法陣から炎が一直線に吹き出された。


 しかし炎は黒ちゃんではなく欅の棒に吹き出されると、欅の棒は激しく燃え始めた。


 ボワッ!


「しまった!」


 黒ちゃんは慌てて欅の棒を投げ捨てると、欅の棒は燃え上がって一気に耐久値が無くなり、消滅してしまった。


 黒ちゃんは新しい欅の棒を装備すると、ゴーストは笑いながら黒ちゃんに言った。


「また燃やしましょうか」


 それを聞いた黒ちゃんは少し考え込むと、静かに欅の棒を仕舞(しま)って両手剣を装備した。


「「「おおーー!」」」


 観客席のプレイヤーたちが一斉に驚くと、ゴーストは黒ちゃんに言った。


「ほう、両手剣も使えるとは。これは面白くなって……うっ!!!」


 しかしなんと黒ちゃんは両手剣で戦わず、ゴーストに投げつけて腹を貫通させた。


「うぉぉぉおおおお!!」


 意表を突かれて怯んだゴーストに黒ちゃんは走り込むと、素早く右腕を掴んで引き込み、荒々しい一本背負いで地面に叩きつけた。


「でやぁぁあ!」


 ズバン!!!

「ぐはっ!!」


「「「わぁーーーー!!!」」」


「すげー! 撲殺紳士が投げた!」

「きゃー! すごい!」

「やばっ!」


 観客が大歓声で喜ぶと、ゴーストは何かのアイテムを出現させて黒ちゃんに投げつけた。


 ガチャン! ガチャンガチャン!


 ぬるうぅぅうう


「うっ! 滑る!」


 それを見たアカネは黒ちゃんに叫んだ。


「黒ちゃん、逃げろ! それは『抜群に滑る油』だよ!!」


「なんだって!?」


 なんとゴーストは苦し紛れに抜群に滑る油を大量に投げつけて、一面油まみれにした。


 黒ちゃんは慌てて立ち上がろうとしたが(すべ)って立ち上がれなかった。


 それを見たゴーストも油で滑りながら黒ちゃんに言った。


「騎士は滑って攻撃できないが、魔法は滑っても攻撃できる!」


「くっ……」


 ゴーストは黒ちゃんの上に巨大な魔法陣を展開すると、巨大な氷の矢を出現させた。


 それを見たアカネは慌てて黒ちゃんに言った。


「黒ちゃん、なんでもいいから盾だ!」


「お、おう!」


 黒ちゃんはモリブデンの盾を装備し直すと、上に向かって盾を構えた。


 しかし、


 ドガァァアアンン!!


「ぐわっ!」


 巨大な氷の矢はモリブデンの盾の耐久値を一瞬で上回って破壊すると、黒ちゃんにダメージを与えた。

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