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ひろし、黒ちゃんを見守る

 黒ちゃんのプレイヤーネームが決まると、大熊笹と茂雄が一緒に家に帰ってきた。


 大熊笹と茂雄は社長に呼ばれ、ピンデチふれあい苑で会議に参加していたのだった。


 ガチャ


「ただいま戻りました」

「もどりました」


「「おかえりー!」」


 アカネは嬉しそうに大熊笹に尋ねた。


「社長、なんか言ってた?」


「社長さんはご機嫌で、わたしと茂雄さんの動きをコンピューターに記録してましたな」


「え? 熊じぃと茂じぃの動きを?」


「なんでも、わたしと茂雄さんの動きをコピーしたボスを作るんだそうです」


「「「ええっ!!」」」


 みんなは驚くと口々に言った。


「熊じぃと茂じぃがボスとか勝てる気がしないよ!」

「茂雄さんのパンチやばいよね」


「これは強いボスが生まれますね」

「大熊笹先生がボスとは……」

「ふふふ。強そうですね」


 すると大熊笹と茂雄が言った。


「はっはっは、大丈夫です。動きだけをコピーしても、そう強くはなりません」


「そうですね。ははは」


 アカネはそれを聞くと大熊笹に尋ねた。


「え、どうゆう事、熊じぃ?」


「強くなるまでの道のりが本当の強さの秘訣(ひけつ)。だから私の動きだけをコピーしても、そんなに強くはなりません」


「熊じぃは最初から強かったんじゃないの?」


「いやいや。わたしは背が低くて手足も短いので、たくさん負けました」


「まじで?」


「弱いからこそ相手の動きに敏感に反応して繊細(せんさい)に技を繰り出す。そうやって強くなったんです」


 アカネは嬉しそうに話を聞くと大熊笹に言った。


「へぇぇ。弱いから強くなるって新鮮だね」


「そうですな。それに弱い自分を知っているからこそ油断はしませんし、(つら)さを知っているからこそ他人にも優しくなれる。良いこと()くめです」


 それを聞いた茂雄もウンウンと頷くと口を開いた。


「僕も弱いボクサーだったんです。でもそのお陰であの右フックが生まれました」


「「へぇぇー!」」


「ぼくは打たれ弱くて、まともに殴り合ったら勝てませんでした。だから攻撃と回避が一体となった右フックを思いついたんです」


 茂雄は恥ずかしそうに頭を()くと、アカネは目を輝かせながら茂雄に言った。


「すげー! 茂じぃも弱い時があったんだね。なんか、あたし元気もらったよ。練習もっと頑張ろ!」


「アカネさんのお役に立てたなら良かったです。ははは」


 みんなはしばらく楽しくお喋りすると、14時前に頂上決戦の試合会場のトレーニングルームへと向かった。



 ー 14時 トレーニングルーム ー


 おじいさんたちは試合会場に到着するとピンデチ代表の席に着き、応援に来た大熊笹と茂雄は観客席に座った。


 反対側の席には全員黒いローブでフードを深く被ったマガイルー代表のプレイヤーたちが座っていた。


 それを見たアカネはめぐに言った。


「なぁめぐ、なんか相手チーム不気味だね」


「うん。たぶん全員魔法使いだよね」


「だね」


 イリューシュも相手チームを見るとアカネとめぐに言った。


「おそらくあのローブはガチャで出るレアなものだったと思います」


「まじか!」

「やば、強そう」


 すると1台のドローンカメラがやってきてアナウンスが流れた。


『選手のみなさん、こんにちは! 運営のタックです!』


「「こんにちはー!」」


「「……」」


 おじいさんたちは挨拶したが、マガイルーのプレイヤーたちは皆無言(みなむごん)だった。


『これより、ピンデチ代表とマガイルー代表の試合を始めます! ではピンデチ代表からご紹介します!』


 するとドローンカメラはおじいさんたちの前にやって来た。


『ピンデチ代表は、黒ちゃんさん、ひろしさん、めぐさん、アカネさん、イリューシュさん、です』


 おじいさんたちは笑顔で手を振ると、ドローンカメラはマガイルー代表のほうへ飛んでいった。


『マガイルー代表は、(やみ)さん、死の使いさん、ユクモノさん、死神さん、ゴーストさん、です』


 マガイルー代表のプレイヤーたちは微動だにせずにカメラに映った。


『では試合を始めます! この試合はドローンカメラで撮影され全世界に配信されます!』


 ブゥィィィイイイン


 ドローンカメラが数台飛び回ると、タックがアナウンスをした。


『では先鋒(せんぽう)、前にお願いします!』


 黒ちゃんは立ち上がって前に出ると、敵の先鋒(せんぽう)も静かに前に出た。


 そして中央で向き合うと、敵の先鋒はフードを少し上げて黒ちゃんに言った。


「俺の名は(やみ)。ピンデチごときの底辺プレイヤーに我が魔法を使うのは()しいが、一瞬で葬り去ってやろう」


 それを聞いた黒ちゃんは、何も答えずに大盾を装備して欅の棒を肩に担いだ。


 それを見た闇は不機嫌そうな表情で黒ちゃんに言った。


「ほう。それはホワイトドラゴンの大盾。しかし何だその武器は? 棍棒か? どちらにしろ馬鹿にされたもんだな。そんな武器で俺を倒そうとは」


「ふっ」


 黒ちゃんは闇の言葉に静かに笑うと、闇は魔法の杖を出現させて話を続けた。


「勘違いするなよ。俺は先鋒を任せれているが、弱いから先鋒なわけじゃない。俺は数々の修羅場を越えて来た。そして数え切れないほどの……」


「それにしても、よく喋るな」


「……あ?」


 黒ちゃんの言葉で台詞を中断させられた闇は黒ちゃんを睨みつけた。


 するとその時、試合開始のゴングが鳴った。


 カーン!!


『試合開始!』


 闇は即座に黒ちゃんから距離を取ると、黒ちゃんを指差しながら叫んだ。


「盾で魔法を防ごうなんて、素人が!! 魔法は正面から来るだけじゃねぇぞ!」


 闇は素早く詠唱すると、黒ちゃんの頭上に魔法陣が現れて大きな岩が現れた。


 ドガン!!


 しかしその瞬間、黒ちゃんの盾が闇の顔にめり込みんでいた。


「た、盾で……、殴った……?」


 大きな岩は黒ちゃんの後ろに落ち、黒ちゃんはニヤリと笑って闇に言った。


「盾は攻撃を防ぐだけではないぞ」


 ドガン! ドガン! ドガン!


 黒ちゃんはそのまま欅の棒で闇を叩きつけると、闇は慌てて黒ちゃんから距離を取った。


「くそっ!」


「おぉぉおお……」


 しかし黒ちゃんが凄まじい闘気(とうき)(まと)わせながら闇に近づいていくと、闇は後ろに下がりながら詠唱を始めた。


 すると次々と魔法陣が現れ、そこから岩が飛び出して黒ちゃんを襲った。


 ドガッ ドガッ ドガッ ドガッ……


 黒ちゃんは特に動じる事もなく欅の棒で岩を叩き落としていくと、闇は恐怖に(おのの)きながら黒ちゃんに叫んだ。


「くそ! ピンデチの底辺プレイヤーが調子に乗りやがって!」


 すると闇は苦し紛れに、黒ちゃんに痺れ粉を投げつけた。


 ブワッ!


「くっ!」


 黒ちゃんは痺れ粉を食らうと、片膝をついて動きが止まってしまった。


 それを見た闇は大笑いしながら黒ちゃんに言った。


「はっはー!! こんな子供だましに引っかかりやがって! やっぱり底辺プレイヤーだな!」


 闇はニヤニヤしながら黒ちゃんに近づくと黒ちゃんのアゴを持ち上げて言った。


「おい。これから殺される気分はどうだ。ああ? 調子に乗りやがっ……」


 バキッ!!

「ぶふっ!」


 なんと黒ちゃんの欅の棒が闇の脇腹に炸裂した。


「ま……麻痺してたんじゃ……」


「『麻痺』の表示は無かっただろう? 君こそ子供だましに引っかかってしまったな」


「くっ、くそぉ!」


「うぉぉおおおおお!!」


 ドガン! ドガン! ドガン!


 シュゥゥウウウ……


 黒ちゃんの連続攻撃が決まると、闇は消滅してプレイヤー席にリスポーンした。



『勝者、黒ちゃんさん!!』


「ナイス黒ちゃん!」

「やったー!」

「さすがです」

「さすがですね」


「はっはっは」

「まずは1勝ですね」


 勝者宣言のアナウンスに、おじいさんたちと応援席の大熊笹と茂雄は一斉に喜んだ。


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