ひろし、名前をつける
黒ちゃんは盾を背中に背負って釘バットをしまうと、4人のプレイヤーたちは黒ちゃんに口々にお礼を言った。
「ありがとうございます!」
「本当に助かりました!」
「つ、強いですね!」
「漢や! ほんまもんの漢やで!」
「いえいえ、礼には及びません。皆さんのお役に立てただけで光栄です」
「ありがとうございます!」
「きゃー、紳士!」
「ほんとに!」
「紳士や! 漢で紳士や!」
「いえいえ、そんな。紳士と言われるには未熟です。では、私はこの欅の木の枝を切らなくてはなりませんので」
黒ちゃんはそう言うと、スルスルっと欅の木を登っていった。
そして両手剣を手に持つと、棒になりそうな太さの枝を次々と切り落としていった。
バサッ バサッ バサッ バサッ……
すると、4人パーティーの1人が黒ちゃんに言った。
「すみません! これって、欅の棍棒を作るんですか?」
「はい、よくご存知で!」
「なら、この枝、短く切っておきますね」
「なんと! それはありがたいです!」
「いえいえ、こんな事で良かったら! お礼をさせてください!」
「すみません。ありがとうございます! 助かります!」
黒ちゃんがお礼をすると、4人のプレイヤーたちは協力して黒ちゃんが落とした枝を棍棒の長さくらいに切っていった。
こうして黒ちゃんは大量の欅の木の枝を手に入れ、ベイリゲンの鍛冶屋へと向かった。
そして黒ちゃんは鍛冶屋で大量の欅の棒とホワイトドラゴンの大盾を作ってG区画の家に戻った。
ガチャ
「ただいま戻りました」
「「おかえりー」」
するとアカネが嬉しそうに黒ちゃんに言った。
「ちょ、黒ちゃん! いま黒ちゃんツイッタグラムで話題だよ!」
「なっ!? ツイッタグラムで?」
「これ見てよ」
アカネは黒ちゃんが原始人のようにハンマーゴリラを釘バットを叩きつける画像を黒ちゃんに送信した。
「あ! これは私が助けたときの」
「え? この人助けたの!? この人めっちゃ有名な女優さんだよ!」
「そ、そうなのか?」
「ハッシュタグで『撲殺紳士』で調べてみなよ」
「撲殺紳士?」
黒ちゃんは視界にブラウザを開いて撲殺紳士を検索してみた。
すると、有名女優さんが黒ちゃんの画像を投稿した記事を見つけた。
ーーーーーーー
(黒ちゃんがハンマーゴリラを釘バットを叩きつけている画像)
さっき、めっちゃ強い方に助けていただきましたー!
やっぱゲームの世界でも強い男はカッコイイ!
イイネ! 34K
#撲殺紳士 #強い男最高
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黒ちゃんは思わずニヤニヤすると、アカネ中パンチが脇腹に炸裂した。
ドスッ!
「ぐはっ!」
アカネは口を尖らせながら黒ちゃんに言った。
「なんだよ、ニヤニヤしちゃってさ」
「い、いや、すまん。あ、そうだ! このキレイな女優さんからプレミアム・ドラゴン大福を頂いたのだ」
黒ちゃんはそう言うと、プレミアム・ドラゴン大福を出現させた。
するとアカネは黒ちゃんに言った。
「ふぅーん。黒ちゃんをカッコイイって言ってる女優さんと一緒に食べれば良いんじゃない?」
すると黒ちゃんはプレミアム・ドラゴン大福を開けながら言った。
「アカネ。わたしはアカネと一緒に食べたいのだ」
「な……、なんだよ黒ちゃん」
すると黒ちゃんは笑顔でアカネに言った。
「アカネ、庭のリングで一緒に食べないか?」
「お、おう。……いいね」
黒ちゃんとアカネは自動ドアから庭に出て、なぜかリングの上でプレミアム・ドラゴン大福を食べ始めた。
それを見ていためぐがイリューシュに言った。
「あの2人、なんでリングで……」
「そうですね。リングが好きなのかしら……。あ、何か言い争いをしてますよ」
「あ! 2人とも早食いをはじめた」
「本当ですね。限定品がもったいないですけど、お2人も勝負がお好きなのかしら……」
「あ、アカネがガッツポーズをして大笑いしてますね」
「本当ですね。あら、アカネさんが黒ちゃんさんを連れて戻ってきますよ」
「あ、ほんとだ」
アカネと黒ちゃんは自動ドアをくぐって大広間に戻ってくると、アカネが嬉しそうに言った。
「ただいまー!」
「もどりました」
上機嫌なアカネは黒ちゃんと一緒にソファに座ると黒ちゃんに言った。
「なんだよ黒ちゃん、そんな大きい体して全然食べられないじゃん」
「うむ。わたしの負けだ」
「まぁ、今回は引き分けでいいよ。あたしドラゴン大福、食べ慣れてるしさ」
するとそれを聞いたイリューシュがめぐに小声で言った。
「ふふふ。めぐさん、お2人とも仲良くなったみたいで良かったですね」
「そうですね。ははは」
こうして、おじいさんたちは夕方までララガたちやタッちゃんと遊びながら楽しくお喋りすると、少しづつログアウトしていった。
ー 翌日 ー
おじいさんはボランティアの少年野球の指導を終えて帰ってくると、おばあさんと一緒に昼食をとった。
「あばあさん、今日はマガイルーの代表の人たちと試合があるんだよ」
「あら、試合ですか? 戦うんですか?」
「あぁ、頂上決戦……、だったかな……。あの家の人たちと一緒にピンデチ代表なんだ」
「あ、思い出しました。美咲さんもこの間、試合だって言って5分くらいどこかへ行ってたわ」
「美咲さんは個人部門のピンデチ代表なんだよ」
「あら、まあ! やっぱり美咲さんはすごいわね」
「たしか、お姉さんの翠さんも代表だったな……」
「まぁ……。もし勝ち進んで翠さんと試合になってしまったら困るわ」
「ははは。あのお2人はお強いから、決勝で試合になるかもしれないなぁ」
「まぁ、どうしましょう。美咲さんも翠さんも優勝にしてもらえないのかしら」
「それは難しいなぁ。ははは」
おじいさんとおばあさんはお喋りを楽しみながら昼食を終えると、一緒に台所へ行って食器を洗って片付けた。
そして一緒にお茶をすすってゆっくりすると、居間でVRグラスをかけた。
その頃G区画の家では黒ちゃんの名前の事でアカネ、めぐ、イリューシュがモメていた。
黒ちゃんのプレイヤーネームは「漆黒の剣士」だったが剣を使わなくなったので、名前を変えようと話し合っていたのだった。
「やっぱ、撲殺紳士でいいんじゃない?」
「ええっ。殺すって字がイメージ悪いよ」
「そうですね……。では漆黒の紳士はいかがでしょうか」
「「漆黒の紳士??」」
「な、なんか、もの凄く腹黒い事してそうっすね」
「じゃあ、紳士ちゃんは?」
「「紳士ちゃん??」」
話し合いが難航していると、おじいさんが家にやって来た。
ガチャ
「こんにちは」
「「こんにちはー!」」
「うききっ!」
タッちゃんはおじいさんを見つけて走っていくと、おじいさんは優しく抱きかかえてジャージの懐へ入れた。
「ははは。タッちゃん、こんにちは」
おじいさんがタッちゃんの頭を撫でていると、アカネがおじいさんに尋ねてきた。
「じぃちゃん、黒ちゃんの名前を変えようとしてるんだけど、何が良いと思う?」
「黒ちゃんさんの名前ですか? ええと……」
おじいさんは手をアゴに当てながら考えると、ふと閃いた。
「あの……『黒ちゃん』で良いのではないでしょうか」
「「あー!」」
黒ちゃんを含め、そこに居た全員が納得すると、黒ちゃんはプレイヤーネームを「黒ちゃん」に変えた。




