ひろし、桜に驚く
「やったー!! 茂雄さん、すごい!!」
マユが飛び上がりながら大喜びすると、茂雄は大きな笑顔で答えた。
「ご迷惑をおかけしました。すっかり記憶がもどりました」
「え、茂雄さん?」
するとサムライたちを片付けた社長たちがやってきた。
「茂雄様、大丈夫ですか」
「茂雄さん」
「あら、表情がしっかりしていらっしゃるわ」
茂雄は優しい笑顔でみんなに答えた。
「みなさん、ありがとうございます。桜を見せに連れてきてくださったのですね」
茂雄はサムライが居なくなった一本道の先の美しい桜の群生地を見ていた。
そして幸せそうな表情になると、静かに言った。
「ヨシ子と見た桜も、ちょうどあのような美しい桜でした」
桜の花びらが舞い散る桜の群生地を見ながら、茂雄はヨシ子の事を思い出した。
ブゥー……ン
ブゥー……ン
ブゥー……ン
するとその時、イリューシュとベンドレとルルが転移してきて、おじいさんたちの所へ走ってきた。
「大丈夫ですか!」
「ひろしさん!」
「大丈夫?」
おじいさんは3人に頭を下げながら言った。
「あ、みなさん! せっかく来ていただいたのに申し訳ありません。無事にサムライを倒すことができました」
おじいさんは社長からサムライの話を聞いた後に、みんなにメッセージで茂雄の事を説明し、助けを求めていたのだった。
「よかった……」
「遅くなってすみません」
「心配したわ」
「茂雄さんも記憶が戻りました」
おじいさんがそう言って茂雄のほうを見ると、幸せそうな笑顔で桜を見つめる茂雄がいた。
「あの方がメッセージに書いてあった茂雄さんですね」
「ああ、記憶が戻ってよかった」
「奥様を想ってるのかしら」
3人は茂雄の幸せそうな笑顔を見ると、つられて笑顔になった。
茂雄はふとイリューシュたちに気づくと頭を下げながら言った。
「きっと、みなさんも助けに来て頂いたのですね。大変ご迷惑をおかけいたしました」
「いえいえ、とんでもありません」
「記憶が戻って良かったです」
「そうよ、何でも無いですよ」
するとイリューシュは茂雄に笑顔で言った。
「茂雄さん、ご一緒に奥の桜の群生地に参りませんか? 奥には御霊分けの桜の木もあるんですよ」
「ミタマ……、ワケ?」
「はい。その桜の木は複製して持ち帰ることができるんです」
「あぁ、なるほど」
「茂雄さん、ぜひ私の家にいらしてください。御霊分けの桜を庭に植えますので、いつでもゆっくり桜を楽しんで頂けますよ」
「庭に桜を?」
すると、おじいさんが茂雄に言った。
「茂雄さん。おいしいお茶とお菓子もありますよ」
「いやぁ、本当にお邪魔してもよろしいのでしょうか?」
「ええ。もちろんです」
ブゥー……ン
ブゥー……ン
ブゥー……ン
ブゥー……ン
すると、なんと翠とマサ、タマシリと黒ちゃんも転移してきて走ってやってきた。
「大丈夫ですか!?」
「茂雄さんって人が大変なんだって?」
「Hey! Is he Okay!? (彼は大丈夫かい?)」
「ひろしさん、お手伝いします!」
さらに専務の大谷と一緒にモービルでやってきたアカネとめぐ、大熊笹とナミが走ってきた。
「社長、遅くなりました!」
「じぃちゃん、手伝うよ!」
「おじいちゃん、大丈夫!?」
「茂雄さんはウチの階の……」
「ぉそくなった」
バサッ バサッ バサッ!
するとドラちゃんに乗って黒猫とメイと美咲、そして哲夫と和代もやってきた。
「洋子様!」
「洋子殿、遅くなりました!」
「ちょ、マユ大丈夫?」
「茂雄さん間に合ったみたい」
「茂雄さん、大丈夫でしたか」
「良かった、茂雄さん大丈夫みたいね」
すると、なんとサムライの亡霊が再び現れてしまった。
イリューシュは弓を構えると、みんなに言った。
「初めて桜の群生地にいらした方がいらっしゃるので現れてしまいましたね。一気に片付けましょう」
ザザザザッ!
イリューシュの声に、ベンドレ、ルル、社長、タマシリ、翠、美咲、大谷、マサ、黒ちゃんのオールスターで戦闘態勢を整えた。
ー 5秒後 ー
ベンドレたちが本気を出すと、一瞬でサムライたちは消滅していった。
それを見たアカネは大きく口を開けると、呆気にとられながら言った。
「すげー、秒殺だ……」
すると、おじいさんは慌ててみんなに頭を下げて言った。
「みなさん、お騒がせしました。茂雄さんはご無事です」
「「おおーー!」」
パチパチパチパチ
茂雄は申し訳無さそうに出てくると、頭を下げながら言った。
「みなさん、すみません……。こんな老いぼれに……」
「いえいえ、ご無事で良かったです」
「よかったー」
「困ってる人は助けたいよ」
「茂雄さんの笑顔に幸せをもらいました」
「茂雄さん、ひろしさん、顔を上げてください!」
その時、おばあさんはおじいさんに尋ねた。
「あなた。一体何人の方にメッセージしたんですか?」
「ええと、フレンド全員に一斉送信っていうのを……」
「あら! 早くみなさんに解決したってご連絡差し上げないと!」
「あ、あぁ。そうだな……」
おじいさんが慌ててメッセージを書き始めると、イリューシュがみんなに提案した。
「みなさん、せっかくですから家へいらっしゃいませんか? 美味しいお茶とお菓子もありますよ」
「「「おー!」」」
「じゃあ、その前に御霊分けの桜に行きましょう!」
「「「はーい!」」」
みんなはゾロゾロとイリューシュについていった。
しばらく歩くと、おじいさんたちは巨大な御霊分けの桜の木に辿り着いた。
御霊分けの桜を見たアカネは驚いてイリューシュに言った。
「でっけー! すごい桜の木っすね!」
「この御霊分けの桜の木はサムライの亡霊を倒すタイムで大きさが変わるんです」
「へぇぇ。じゃあイリューシュさんたちが瞬殺したから、こんな大きいんだ」
「ふふふ。そうみたいですね。わたしもこんなに大きな桜は初めてです」
すると茂雄は嬉しそうに桜の木の下へ行った。
「あぁ、桜の木の下でヨシ子とお弁当を食べたのを思い出します。ははは」
茂雄は静かに巨大な桜の木に触れるとイリューシュは手を動かしながら桜の木を分霊してアイテムとしてコピーした。
茂雄は笑顔になって桜を見上げると、目をつむって静かにヨシ子の事を想った。
ー ピンデチ ー
おじいさんたちはG区画の家に転移して帰ってくると、イリューシュが巨大な御霊分けの桜を庭の入り口に設置した。
「「おおーー!!」」
大きくも繊細な枝ぶりの桜の木に、みんなは一斉に声を上げた。
ブゥー……ン
すると社長が転移してきて、みんなに言った。
「みなさん、本当にありがとうございました。茂雄さんは昏睡状態から抜け出して状態は安定しているとの事です」
「「「おおおーーー!!!」」」
パチパチパチパチ!
「茂雄さんは、いま専務の大谷がこちらへお連れしています」
社長がそう言うと、おじいさんたちは笑顔になって、家に居た白たんと一緒にお茶とお菓子の用意を始めた。




