ひろし、聞き間違える
おじいさんたちはG区画の家に戻り、みんなでお茶を飲みながらくつろいでいた。
しかし、めぐはブツブツ言いながら難しい顔でステータスポイントを割り振っていた。
「転職してポイント変換率は100%に戻っから、ララ助ちゃんのおかげで貰えた3000ポイントは重要よね……」
めぐは難しい顔をしながら頭に指を立て、ウロウロしながら呟いた。
「やっぱ、魔法攻撃力、物理防御力、魔法防御力に1000ずつかな……」
しかしナミは静かにめぐに言った。
「わたしは、物理攻撃力に3000」
「えっ!?」
めぐは驚くとナミに尋ねた。
「ナミさん、テイマーは武器も使えるの?」
「ぅん、そうみたい。弓が装備できる」
「そっか、そうなんだ。でも全部攻撃力にしたら防御力が……」
「だぃじょうぶ。やられる前に、やる」
「……な、なるほど」
ナミの男前発言にめぐが驚くと、イリューシュがめぐに言った。
「ナミさんはララガを呼び出せば敵から距離を取れますから、遠距離から弓でサポートするには良いかもしれません」
「なるほど、そうですね」
すると、イリューシュは思い出したようにめぐに続けて言った。
「そうそう。めぐさんは魔法騎士になったので、防御力の高い『騎士の防具』が装備できるんです。なので、サブクエストを進めませんか?」
「サブクエスト?」
「ええ」
イリューシュは笑顔で答えると、めぐにサブクエストの説明を始めた。
「サブクエストで鍛冶屋が解放されればモンスターの素材で防御力が高い防具を作れるんです」
「あ、それ聞いたことがあります」
「私たちはレスカカルのタコを倒したので、あとはマガイルーからベイリゲンに抜ければ鍛冶屋さんのサブクエストができますよ」
「ほんとうですか?」
「ええ。ですから、そこまで防御力をあげなくても防御力が高い防具でカバーできます」
「え、やった。騎士に転職してよかった!」
「それに鍛冶屋さんを開放すれば転移魔法も使えますよ」
「すごい!」
すると黒ちゃんがめぐにイリューシュの事を話した。
「イリューシュさんは昇格転職を繰り返して、賢者の魔法も使る魔法騎士なのに大弓も使えるのです。わたしなど足元にも及びません」
「えっ、そうなんですか!? すごい!」
するとイリューシュは少し照れながら下を向いた。
アカネもその話を聞いて驚くと、少し気になってイリューシュに尋ねた。
「イリューシュさん、魔法騎士にも転職してるならイリューシュさんも防具すごいんすか?」
「え、ええ。すごいというか……」
イリューシュはそう言うと、コーシャタで買った服の装備を解いて、本来の防具を見せてくれた。
「「おぉー」」
イリューシュは、おどろおどろしいオロチの防具一式を身につけていた。
「オロチの防具は性能が良いのですが……、この通り、ちょっと見た目が気持ち悪くて……」
イリューシュはコーシャタで買った服に見た目を戻すと、みんなに言った。
「今日はもう遅いですし、また明日サブクエストを進めましょう」
「「はーい!」」
全員一致で返事をすると、みんなでララ助とタッちゃんをこたつに寝かしつけてログアウトしていった。
おじいさんがVRをグラスを外すと、お蕎麦と天ぷらを揚げる良い匂いがしてきた。
「あぁ、いい匂いだなぁ」
おじいさんは居間のソファから立ち上がると、台所で長ネギを切っているおばあさんが見えた。
「おばあさん、ただいま」
「あら、おかえりなさい。遅かったわね」
「あぁ、今日はゲームで色んな事があってな」
「そうなんですか。何があったんですか?」
「ええと、今日はまた試合をしてな……」
こうして、おじいさんとおばあさんは夜遅くまでゲームの話で盛り上がった。
ー 翌日 ー
朝、おじいさんは目を覚まして居間へ行くと、スマホのLEDが光っていることに気がついた。
「おや?」
おじいさんはスマホを開くとゲームのアプリにメッセージが来ていた。
「誰からでしょうか……」
おじいさんはアプリを開くと、驚いた。
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ピンデチふれあい苑、書道大会参加者様
この度は書道大会にご参加いただきまして誠にありがとうございました。
本日、厳正な審査の上、金賞、銀賞、銅賞、佳作の作品が決定いたしました。
受賞作品はピンデチふれあい苑1階、食堂の特設コーナーにて展示しております。
なお、金賞作品は入口の石碑に永久作品として採用させていただき、後ほど副賞を贈らせていただきます。
この度は沢山のご参加、誠にありがとうございました。
以上、宜しくお願い致します。
ザ・フラウ書道大会運営部
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「あっ!」
おじいさんは思わず大きな声を出すとメッセージを読み返した。
「受賞作品はピンデチふれあい苑1階、食堂の特設コーナーにて展示しております……」
おじいさんは居ても立っても居られなくなって、すぐにVRをグラスをかけた。
おじいさんは時計台の前に現れると、急いでピンデチふれあい苑へと走った。
すると、入り口の石碑には白い布がかけてあり、ピンデチふれあい苑の入り口には「書道大会 入賞者作品 展示中」の文字があった。
おじいさんは急いで中へ入ると、食堂に金賞、銀賞、銅賞、佳作2作品が展示されていた。
「あぁ、わたしの作品が……」
なんと、おじいさんの作品には「金賞」の札が付いていた。
「あぁ……、なんてありがたい。金賞を頂けるなんて……」
おじいさんが両手を合わせて「金賞」の文字に頭を下げると、上品な外国人のおばあさんが声をかけてきた。
「Good morning. おはようございます。あなたも参加したのですか」
「あ、おはようございます。はい、ありがたいことに金賞を頂きまして……」
おじいさんは頭を掻きながら頭を下げると、外国人のおばあさんは大きな笑顔でおじいさんに言った。
「Oh my goodness! 金賞の作品、本当に素晴らしいです! 尊敬します!」
「えっ?」
「わたしはパトリシア。銀賞でした。あなたの作品は素晴らしいです」
「ええっ! 銀賞ですか!? あ、すみません。わたしは、ひろしです。宜しくお願いいたします」
おじいさんは頭を下げると、銀賞のパトリシアの作品を見上げて驚いた。
見事な筆さばきで書かれた作品は、躍動感にあふれていて美しく、バランスもとれていた。
「これは素晴らしい。いやぁ、あなたの作品のほうが金賞にふさわしいです……。わたしは筆をあれほど器用に扱えません……」
「ふぅぅぅ」
パトリシアはため息をつくと、おじいさんに言った。
「いいえ。わたしの作品は、書の奥に表情が見えないのです」
「表情……」
「はい。ひろしさんの書の奥には笑顔と優しさが見えます。ひろしさんの作品は素晴らしいです」
「いえいえいえ、そんな、パト……、パト……?」
「ふふふ。ひろしさん、フレンド申請をしても良いでしょうか? そうすれば、わたしの名前が視界に表示されますから」
「あ、はい。申し訳ありません。横文字に弱いもので……」
「ふふふ」
するとパトリシアはおじいさんにフレンド申請を送った。
「あ、ありがとうございます」
おじいさんがフレンド申請を承認すると、パトリシアが笑顔で言った。
「これでわたしの名前が表示されますね」
「はい、パトリシアさん。ありがとうございます」
すると、おじいさんはふと呟いた。
「……前にこのようなやり取りをした事があるような……。それにパトリシアさんの笑い方……」
「あら、ひろしさん、トリシャおばあちゃん!」
おじいさんが驚いて振り向くと、なんとイリューシュが立っていた。
「あ、イリューシュさん。おはようございます」
「おはようございます、ひろしさん」
「Oh, hi!(あら、ハーイ!)」
「Hi, grandma! (ハーイ、おばあちゃん!)」
おじいさんは少し驚いてイリューシュに尋ねた。
「イリューシュさんのお知り合いですか?」
「はい、パトリシアお祖母様です。イギリス人で、わたしはトリシャって呼んでます」
「トリちゃん?」
「ふふふ、トリシャです。トリシャはパトリシアという名前の人の一般的なあだ名なんです」
するとそれを聞いたパトリシアが、笑いながらおじいさんに言った。
「ふふふ。ひろしさん『トリちゃん』って、とっても可愛い名前ですね。今日からわたしは名前を『トリちゃん』にします」
パトリシアは素早く操作をすると、名前を「Patricia」から「トリちゃん」に変更した。




