黒ちゃん、警戒する
ドローンカメラが一斉にナオルの姿を捉えると、試合会場の巨大スクリーンにもナオルの姿が映し出された。
アカネは席から立ち上がると黒ちゃんに叫んだ。
「黒ちゃん気をつけろ! あいつ何か企んでるぞ!」
「おう!」
黒ちゃんは警戒しながら両手剣を握ると、ナオルは黒ちゃんを睨みつけながらニヤリと笑って言った。
「やっぱり、あんたは強ぇな」
黒ちゃんは静かにナオルに剣を向けると、ナオルは高笑いを始めた。
「はーはっはっはっは! もうアレしかないなぁ!」
「な、何をするつもりだ!」
黒ちゃんがナオルに大声で言うと、ナオルはカメラ目線で叫んだ。
「棄権しますっ!!!」
「へっ!?」
「だからぁ、試合を! 棄権します!!!」
「「ええー!!」」
おじいさんたちが驚くと、ナオルは清々しい表情で上を見あげた。
それを見たアカネがナオルに突っ込んだ。
「おい! 何で、やり切ったような顔してんだよっ! 棄権ってなんだよ!」
ナオルをそれを聞くとアカネに言った。
「だって、強いんだもん」
「はぁ!?」
「次のおじいさんメッチャ強かったし、応援してるお友達ララガ連れてるし、ぜったい全員強いじゃん」
「いや、ちょっ!」
「じゃあ、おれら先輩の試合観に行くんで帰りますね。じゃっ」
ナオルはそう言うと、メンバーと一緒にそそくさと部屋を出ていった。
アカネが呆気にとられていると、アナウンスが流れた。
『レググリ代表の棄権により、勝者、チームひろし!』
おじいさんたちは、なんとなく釈然としない表情で立ち上がると、カメラに向かってみんなで頭を下げた。
その頃、海とライラは指輪を持って鍛冶屋に戻り、海が鍛冶屋の職人に指輪を渡していた。
「鍛冶屋さん、指輪です!」
「本当に持ってきたのか! やっぱりお前は腕が立つな。指輪を取り返してくれるなんて」
「い、いえいえいえ! こちらのライラさんが居なかったら……」
海は恥ずかしそうに頭を掻くと、鍛冶屋の職人は海に小さな羽根を渡して言った。
「お礼に、この羽根を受け取ってくれ。この羽根を持ってマガイルーの魔法学校へ行けば、転移魔法が使えるようになるんだ」
「え、本当ですか! ありがとうございます!」
海は直角に頭を下げてお礼を言うと、ライラが海に言った。
「よし、すぐに行くぞ」
「は、はい!」
海は鍛冶屋の職人に何度も頭を下げながらベイリゲンの町を後にした。
ー マガイルー魔法学校 ー
海とライラはマガイルーの魔法学校に到着すると、たくさんのプレイヤーが校庭に居るのが目に入った。
海はそれを見るとライラに尋ねた。
「ライラさん、みなさん魔法のトレーニングをしているんですかね」
「いや、試験だ。この学校では魔法の属性を変更したり、新しい魔法を習得したりできるんだ」
「へぇぇ」
「海、こっちだ。ついて来い」
「はい!」
ライラは海を連れて校内に入ると「受付」と書かれたカウンターへ行った。
受付には黒いローブを着た年老いた係員が座っていて、やってきた海に話しかけた。
「羽根を持ってきたんだね」
「あ、はい!」
海は羽根を取り出して係員に渡すと、係員は羽根と引き換えに小さな本を海に手渡した。
「この本は……」
「アイテム欄からその本を選ぶと世界地図が表示される。あなたが行った事のある場所ならば触れると行けるよ」
「ほんとうですか!? ありがとうございます!」
係員は静かに笑うと、ライラが海に言った。
「これでお前も転移魔法が使えるぞ」
「やった! ライラさんのお陰です!」
海が何度もライラに頭を下げると、ライラは本の使い方を説明した。
「その本をアイテム欄に仕舞って、選択してみろ」
「はい」
海は本をアイテム欄に仕舞うと、仕舞った本を選択した。
すると、目の前に世界地図が表示された。
「ライラさん、地図が出ました!」
「地図に色の付いているところと白黒のところがあるだろう」
「はい」
「色の付いているところは、お前が今までに行った事のある場所だ。色の付いているところなら少し長く触れればそこへ行けるぞ」
「なるほど!」
「では、ルル様のお店へ行って報告をしよう。ピンデチの村の時計台へ行くぞ」
「はい!」
海は地図の中を探して、ピンデチの村の時計台に触れた。
ブゥー……ン
パッ!
「あっ、時計台だ! すごい!」
海は時計台の前に現れると、すぐにライラも時計台に転移してきた。
ブゥー……ン
「海。ルル様にご報告しに、お店に行くぞ」
「は、はい!」
海は、早足でルルの店に向かうライラを追いかけていった。
その頃、おじいさんたちは試合を終えてG区画の家でくつろいでいた。
アカネがソファに寝転がってタッちゃんと遊んでいると、めぐがララガの子供を抱っこしながらアカネに言った。
「ねぇアカネ。さっき試合中に気づいたんだけど、わたしステータス0だった」
「まじで!? あ、そっか、転職したもんね。試合が回ってこなくて良かったね」
「ほんと。とりあえず100ポイントをどうしよう。やっぱり防御力かな……」
「防御力? やっぱ攻撃力でしょ! せっかく剣なんだし」
「ええっ!? わたし盾のために騎士になったんだけど」
「え、そうなの? じゃあ剣は?」
「剣? うーん。杖の代わり……かな」
「まじで?」
すると、それを聞いていたイリューシュがアカネに言った。
「でも、そういうプレイヤーさんも居るんですよ。盾で防御しながら魔法攻撃をするので安全に戦えるんです」
「そっか。言われてみれば戦いやすいのかも」
アカネはイリューシュの話を聞きながらソファに座り直すと、黒ちゃんがイリューシュに言った。
「イリューシュさん大変です。ツイッタグラムによると『はぐれメタルマシーン』が西の孤島のあたりに出現中のようです。これは好都合ですね」
「まぁ。これはナミさんとめぐさんと一緒に行かなきゃですね」
「はぐれめたるましーん?」
「はぐれマシーンですか?」
ナミとめぐがイリューシュに尋ねるとイリューシュは2人に説明をした。
「はぐれメタルマシーンは空を飛ぶ機械のモンスターなんですが、倒すとステータスポイントが3000ポイントもらえるんです」
「ええ!? すごい!」
「すごぃ」
2人はステータスポイントの大きさに驚くとイリューシュが言った。
「みなさん、すぐに行きましょう。居なくなってしまうかもしれません」
「「はい!」」
こうしてみんなは、はぐれメタルマシーンの討伐へ向かうことになった。




