黒ちゃん、再び
その頃、海とライラはボスの白いヘビを追い詰めていた。
ヘビはHPを減らして壁際に追い詰められると、大人しくなって海に言った。
「あなた、海っていうのね」
「はい、そうです」
「あなたは強かったわ。最後に顔をよく見せて」
「あ、はい」
それを聞いたライラは海に叫んだ。
「海! 顔を見せてはダメだ!」
「……」
しかし、海はすでにヘビに睨まれて魅入られていた。
「くそっ、遅かったか!」
ヘビは海に誘惑の魔法をかけると、海はボーッとした表情で槍を構え、ライラのほうを向いた。
ライラはそれを見ると海に叫んだ。
「おい海! 目を覚ませ!」
ヘビは高笑いをしながらライラに言った。
「あーはっはっは! 危なかったわ! 形勢逆転ね!」
するとライラはヘビを睨みつけながら答えた。
「形勢逆転だと?」
ズザッ ドスッ!!
ライラはそう言うと一瞬にして踏み込み、ヘビの喉元を正確に突き刺した。
「うぐっ! ……く、くそっ! 海! こいつを倒せ!」
「……はい」
海はうつろな表情で返事をするとライラの元へ走り込んだ。
ガン!
しかしライラは素早く盾で海を叩きつけると、
ブワッ
「ぅうっ!」
素早く痺れ粉を海に当てて、海を動けなくした。
ライラは怒りの形相でランスを構えるとヘビに言った。
「おい、おまえ。私の大事な部下を弄んでくれたな」
「ま、待て! は、早くしないと、あの激しめのBL本が売り切れ……」
ズブッ!! バチバチバチバチ!
ライラは大きく踏み込み、白ヘビを一突きして感電させた。
シュゥゥゥウウウ
キン……
ヘビは静かに消滅していくと、その場に指輪が転がり落ちた。
その頃、おじいさんたちは試合の申請が受理され、今日の午後5時から試合をすることになったので、会場のピンデチのトレーニングルームに来ていた。
そして、ナミと大熊笹もララガたちを連れて応援に来ていた。
相手チームの席には帽子やフードを深く被ったプレイヤーたちがレググリ代表として座っていた。
アカネは選手用の席で足をプラプラさせながら黒ちゃんに話しかけた。
「そういえば、前も隣の部屋でレググリの人たちと試合したね」
「うむ。あの時は痺れ粉を撒かれていて酷い目にあったな……」
「そうそう! 黒ちゃん麻痺に弱すぎだよ」
「その通りだな。だが、今日は対策をしてきたぞ」
するとその時、ドローン・カメラが数台現れてアナウンスが流れた。
『選手のみなさん、こんばんは! 運営のタックです!』
すると1台のドローン・カメラが先鋒(1番目の選手)の黒ちゃんに近づいた。
『これより、ピンデチ代表とレググリ代表の試合を始めます! ではピンデチ代表からご紹介します!』
黒ちゃんは近づいてきたカメラに恥ずかしそうにしながら、軽く会釈をした。
『ピンデチ代表は、漆黒の剣士さん、ひろしさん、めぐさん、アカネさん、イリューシュさん、です』
おじいさんは連れてきたタッちゃんをカメラの前へ抱き上げ、めぐとイリューシュはキメ顔で、そしてアカネは変顔でカメラに映った。
ドローン・カメラはしばらくおじいさんたちを映すと反対側へ飛んでいった。
そして今度はレググリ代表の選手たちを映し出すと、運営のタックがアナウンスをした。
『対するはレググリ代表、ナオルさん、ピッピさん、元ヒーラーのアタッカーですが何かさん、セクスィーコマンドーさん、ラーメン命さん、です』
するとレググリ代表の選手たちは全員下を向きながら静かにフードや帽子
を外して顔を出した。
それを見たアカネは黒ちゃんに言った。
「あ! あいつら、この間試合したズルするやつらだ!」
「うむ、そのようだな」
「よく試合に来れたなぁ」
「そうだな。しかし、試合に来たという事は何か秘策があるに違いない」
「確かに! 気をつけないと!」
すると運営のタックがアナウンスをした。
『では試合を始めます! この試合はドローンカメラで撮影され全世界に配信されます!』
ブゥィィィイイイン
ドローンカメラが数台飛び回ると、タックがアナウンスを続けた。
『では先鋒、お願いします!』
黒ちゃんは立ち上がって前に出ると、先日戦ったナオルがガクガクと震えながら出てきた。
そして2人は中央で剣を引き抜くと、試合開始のゴングが鳴った。
カーン!!
『試合開始!』
黒ちゃんは剣に着火剤をふりかけると、ナオルに踏み込みながら着火して、低い体勢から一気に斬り上げた。
ブワッ!!
「うわっ」
ガキン!!
ナオルは必死に剣を受けたが、黒ちゃんは体ごと剣を返して豪快な水平斬りを放った。
ドガン!!
「あっ!!」
ナオルは黒ちゃんの重たい一撃にヨロめくと、黒ちゃんは即座に右拳をナオルの腹にねじ込んだ。
ドスッ!
「っ!」
ドガッ!!
黒ちゃんは、さらにタックルでナオルを吹き飛ばすと、素早い突きを食らわせた。
ドスッ!
「……」
するとナオルは静かに消滅して、自分の席にリスポーンした。
カンカンカン!!
『勝者、漆黒の剣士!! 流れるような連続技で危なげない試合運びでした!』
パチパチパチ!
黒ちゃんは剣を納めるとナオルに頭を下げ、次の対戦者に備えた。
アカネは黒ちゃんにガッツポーズをすると、めぐに話しかけた。
「なぁめぐ。黒ちゃん、今日はちゃんと戦ってるね」
「うん。黒ちゃんさん、ちゃんと戦うとやっぱり強いよね」
「だね。いつもはあんな感じだけど、やる時はやるな」
アカネとめぐが話していると、次鋒の女性武闘家、ピッピが出てきた。
ピッピと黒ちゃんはお互いに一礼し、構えをとった。
『では、次鋒戦をはじめます。試合開始!』
ピッピは即座に痺れナイフを投げると、黒ちゃんは冷静に両手剣で弾き返した。
キン!
それを見たピッピは慌てて黒ちゃんに飛び込んでいった。
そして痺れ粉を投げつけると、黒ちゃんは剣では受けられずに麻痺してしまった。
「ぐっ!!」
「よしっ!」
ピッピは一瞬笑顔を見せると、一気に黒ちゃんに迫っていった。
タタタタッ!
そしてピッピが黒ちゃんの腹に正拳突きを食らわせようとすると、なんと黒ちゃんは剣を捨ててピッピの腕を捉えた。
そして引き込むように優しく投げると、ピッピは地面に転がった。
「きゃっ!」
ズザッ
黒ちゃんは少し離れるとピッピに言った。
「今日は麻痺や毒の対策してきました」
「……」
するとその時、リーダーのナオルが大声をあげた。
「ピッピ、もういい! 下がるんだ!!」
ザワザワザワ……
ナオルの声を聞いたピッピは「棄権」ボタンを押して、席へと戻っていった。
カンカンカン!
『棄権により、勝者、漆黒の剣士!!』
ザワザワザワ……
おじいさんたちがザワついていると、ナオルが席から立ち上がって片腕をあげた。
『おおっと! リーダーのナオルが腕をあげたぞ! 何があったんだ!?』
自信満々に腕をあげたナオルに、ドローンカメラが一斉に飛んでいった。




