ひろし、釣る
その頃おじいさんたちは、タッちゃんとララガの親子を連れて船で釣りをしていた。
ナミと黒ちゃんとアカネは、高性能な電動リールに金属製の疑似餌(作り物のエサ)で大型の魚を狙うことにした。
おじいさんと大熊笹は、手巻きリールに釣り針で小型の魚を狙っていた。
そしてめぐは、イリューシュに見てもらいながら買ったばかりの剣と盾を構える練習をしていた。
ナミは電動リールの自動設定を済ませると、イリューシュに気になっていた事を聞いた。
「イリューシュさん。朝、敵と戦ってたとき、村に入ったらララガがきえた」
「あ、ララガを呼び出して戦っていたのですね。テイマーが戦闘中に戦闘禁止区域の村に入ると呼び出した動物やモンスターは戻されてしまうんです」
「ぁ、そうか。海くんに、わるいことした」
「あら。そういえば海くん、デートは上手くいったのかしら」
「ライラさんてぃう槍つかいの手下になった」
「て、手下?」
「ぅん。強くなりたぃんだって」
「強くなりたい手下……、ですか?」
ナミとイリューシュがなんとなく噛み合わない会話をしていると、おじいさんの竿に手応えが来た。
「あ、きました!」
それを聞いた黒ちゃんは釣り糸の様子を見ながらおじいさんに言った。
「ひろしさん、しっかり食いついてるようですから慌てずにリールを巻いてください!」
「はい」
おじいさんは竿を引きながらリールを巻きはじめると、海面に魚影が見えてきた。
そして、おじいさんは一気に竿を引き上げると、少し大きめのアジが釣れた。
ピチピチピチピチ
「ははは、釣れました」
「「おおー!!」」
おじいさんはアジから針を外して甲板に置くと、黒ちゃんが針で素早くアジを締めた。
おじいさんはアジに両手を合わせて頭を下げると、懐からタッちゃんが飛び出して両手でアジを掴んだ。
「きききっ!」
そして、アジを掴んだタッちゃんは嬉しそうにララガの子供のところへ行くと、ララガの子供と一緒に仲良くアジを食べ始めた。
するとその時、突然電動リールのモーターが唸る音が響き渡った。
ギュゥイイイ!
おじいさんが音のするほうを見ると、ナミが立ち上がって釣り竿と格闘していた。
ナミは船に固定した竿を制御しながら電動リールを操作していたが、竿を引き上げられないほどの力で引っ張られていた。
「ぅ、ぅわぁ」
ナミがフラフラとしていると黒ちゃんが竿を握ってフォローに入り、みんなもナミのところへ集まってきた。
黒ちゃんは尋常じゃない引きに驚くと、ナミに言った。
「ナミさん、相手はかなり大きそうです。少し泳がながら弱らせましましょう」
「ぅん」
ナミは電動リールを手動モードに切り替えると、船から少し離れた所を背びれが走っていくのが見えた。
「ぁ、ぃた」
黒ちゃんは背びれを見ると小さくつぶやいた。
「あ……、あの背びれ……、まさか……」
ザバァァアアアア!
その瞬間、頭の先が槍のように尖った大きな魚が海面から飛び上がった。
「ぅわ、おぉきい」
黒ちゃんはナミの竿を支えながら叫んだ。
「カジキです! かなりの大物です!」
「ぜったぃ、つる!」
ギュィイイイ!!
ナミの電動リールが唸りを上ると、カジキとの戦いが始まった。
その頃、海とライラはマガイルーに入ってそのまま素通りし、ベイリゲン地区へ入っていた。
ライラの案内でベイリゲンの鍛冶屋に辿り着くとNPCの鍛冶屋の職人が海に話しかけてきた。
「お客さん、あいにくウチは店を閉めるところでね。レスカカルのタコを知ってるか?」
「あ、はい! こちらのライラさんと一緒に倒しました!」
「本当か!? あのタコは最近あの辺に住み着いてな。鉱石を運搬する船の邪魔をしてたんだ。これでまた鍛冶屋ができるよ!」
「え、いやいやいや! そんなそんな!」
「お前は腕が立つようだから、折り入って頼みたい事があるんだが、聞いてくれるか」
「は、はい! 僕でよければ!」
「実はマガイルーの町に俺の恋人が居てな。あいつに渡すつもりだった大切な指輪が盗まれてしまったんだ」
「そ、そうなんですか! それはひどいですね!」
「ああ。もしお前が指輪を見つけてきてくれたら、素材さえ持ってくればいつでも武器や防具を作ってやるぞ。金は貰うがな」
「本当ですか!?」
「もちろんだ。それくらい大切な指輪なんだ」
「わかりました! 待っていてください! 必ず取り返してきます!」
海は直角定規のように頭を下げてクエストを請け負うと、ライラが海に言った。
「海、すぐに行くぞ」
「え?」
「指輪を奪った盗賊団のアジトはすぐそこだ」
「あ、はい! わかりました!」
ライラはオフロードバイクのモービルを出現させて跨ると海に言った。
「後ろに乗れ」
「はい!」
海はヨロヨロとよじ登るようにバイクの後ろに乗ると、ライラはエンジンをかけてアクセルを捻った。
「海、しっかり掴まっておけよ」
「はい!」
海とライラは盗賊団のアジトへと向かった。
その頃、ナミは船の上でカジキと死闘を繰り広げていた。
「ぅ、ぅぅ。カジキ、なかなかやる」
ナミは黒ちゃんと一緒にカジキの体力を少しづつ奪っていたが、すでに30分ほど経っていた。
すると、イリューシュが黒ちゃんに言った。
「敵は強そうですね。私もお手伝いしますね」
イリューシュはそう言うとオロチの弓を出現させて構えた。
それを見たナミと黒ちゃんはイリューシュにお礼をした。
「イリューシュさん、ぁりがとぅ」
「イリューシュさん、お願いします。もしまた海の上に跳ねたらお願いします」
「ええ、任せてください」
イリューシュがそう言った瞬間、カジキが海面から飛び出して宙を舞った。
ザバァァ!
ヒュッ……、ズドドドドドドドド
イリューシュが矢を放つと、8本の矢はカジキに全て命中した。
ババババ……!
カジキは空中で体を激しく動かすと、そこへめぐが片手剣をかざして雷の魔法を放った。
「聖なる雷を司る者たちよ。我にその慈悲と慈愛を与えたまえ。清く正義の力をもって嘆願する。あの者に裁きの雷を!」
パンッ、パパン、パパパパン! ビビビビビビ!
サバァァアア!
めぐの魔法はあまり攻撃力は無かったが、弱っていたカジキは空中で感電して気絶し、そのまま海へ墜落していった。
「「おおーー!!!」」
めぐのファインプレイに歓声が上がると、ナミは電動リールを巻きながらめぐにお礼を言った。
ウィィィイイイイ
「めぐさん、ぁりがとう。すごぃ」
「え、ううん。役に立ててよかった。えへへ」
ナミは雷で気絶したカジキを船の近くまで引っぱると、黒ちゃんはロープの付いた金属製のフックをカジキに引っ掛けた。
「みなさん、一緒に引っ張り上げましょう!」
「「はい!」」
みんなはロープを持つと一斉に引っ張り上げた。
「「よいしょーー!! よいしょーー!! よいしょーー!!」」
ズズ、ズズッ、ズズズ……
ドスン!
「「おおーーー!!」」
カジキは見事に甲板の上にあがった。
「すげー! あたしの背より大きいよ!」
「わっ、この頭の針すごい」
「いやぁ、これは大物ですな」
「ナミさん、すごいですね」
「カジキって、こんな魚だったんですね」
「キュウキュウ」
「ききっ」
「クルルルル」
黒ちゃんはカジキからフックや疑似餌を外すと、みんなに言った。
「みなさん、ちょっと目を閉じていてくださいね」
みんなが目をつむると、黒ちゃんは気絶しているカジキを両手剣で一閃した。
ドスン!
カジキの頭が切断されて転がると、ララガの親がゆっくりとカジキの頭に歩み寄って咥え、少し離れて食べ始めた。
黒ちゃんは慣れた手つきでエラと内臓を引き出すと、アイテム欄から出現させた袋に詰め込み、カジキを輪切りにしていった。
ズバッ ズバッ ズバッ ズバッ……
そして、汲んであった海水で輪切りにしたカジキを洗うと、包丁を出現させてカジキを捌きながらみんなに言った。
「みなさん、もう大丈夫です」
みんなが目を開けると、すでにタッちゃんとララガの子供が小さい切り身にかぶりついて嬉しそうにしていた。




