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海、修行中

 ー お昼すぎ ー


 一度ログアウトしていたおじいさんは、家の仕事を片付けて昼食をとると、おばあさんと一緒にVRグラスをかけてゲームの世界に入った。



 2人は時計台の前に出ると、おじいさんはおばあさんに尋ねた。


「そういえば、最近お店は忙しいのかい?」


「それが、哲夫さんと和代さんが新しいビジネスを始めて大成功していて。逆に(ひま)なくらいなんです」


「ええ? それはすごいなぁ」


「ええ。最近、船に乗りたい人たちが増えて、お店で『ガイド付きハーイム攻略セット』っていうのを売り出したんです。それが大当たりで」


「へぇ、やっぱり哲夫さんと和代さんは凄いなぁ。今度お店を(のぞ)いてみようかなぁ」


「あら、きっと哲夫さんも和代さんも喜びますよ」


「じゃあ、タッちゃんと一緒にいこうか」


「タッちゃん?」


「あぁ、子猿さんと仲良くなってな。タッちゃんっていうんだ。ははは」


「あら、いいわね。今度みせてくださいね」


「ああ、もちろんだよ」


「じゃあ、わたしは森にキノコを取りに行ってきますね」


「がんばってな」


「ええ。いってきます」


「いってらっしゃい」


 おじいさんは手を振っておばあさんと分かれると三輪自転車を出現させてG区画の家へ向かった。



 その頃、海はイークラトで「モリブデンの(よろい)」を買ってもらって防御力を上げ、レスカカルの前で墨吹きタコと戦っていた。


 ライラは盾を前にしながら海に指示を出した。


「海、タコの吸盤に注意しろ! タコは盾を狙ってくる。盾に吸い付くと体ごと持っていかれるぞ!」


「……」


「おい、海! 聞いている……の……か?」


 しかし、すでに海はタコの吸盤に持っていかれて(ちゅう)()っていた。


「ラララッ、ライラさーーーん!!」


 ビターン!!


 そして海は船の甲板に打ち付けられた。


「いたた……。す……、すみません……」


「いいから早く立って回復薬を飲め!」


「は、はい!!」


「見ていろ。吸盤が盾に吸い付いたら、タイミング良く槍で刺すんだ!」


 ビュッ! 


 タコは勢いよく触手でライラを狙うと、ライラの盾に吸い付いた。


「やぁっ!」


 ズブッ


「グォォオオオオ!」


 ライラはタイミングよくカウンター攻撃を决めて触手を突き刺すと、タコは吸盤を離して触手を引っ込めた。


「こうやるんだ! やってみろ!」


「はい!!」


 しかし、その瞬間、


 ペッ! ビチャッ!


「うわっ!」


 タコの墨が海の顔を直撃した。


 海は視界を奪われながらも必死に盾を構えたが、タコとは反対側を向いていた。


「海、うしろ! 海、うしろだ!」


「えっ!」


 ビチッ ブワッ!


 海はタコの吸盤で吸い付けられ、そのまま宙を舞うと、


 ビターン!!


 船の甲板に打ち付けられた。


 ライラは即座にフォローに入ると、タコの触手を突き刺した。


 ズブッ!


「グォォォオオオ!」


「おい海! 前は見えるか!?」


「は、はい! なんとか!」


「もう一度だ!」


「はい! がんばります!」


 海は必死に視界を確保すると、盾を構えて前に出た。



 ー G区画の家 ー


 バタン


「みなさん、こんにちは」


 おじいさんがG区画の家に入ると、いつものみんなが迎えてくれた。


「じいちゃん、こんちは!」

「おじいちゃん、こんにちは」

「こんにちは、ひろしさん」

「ひろしさん、朝ぶりですな」

「あ、ひろしさんこんにちは」


 おじいさんがソファに目をやると、タッちゃんとララガの子供、そしていつもテーブルの上にいる丸い鳥のピピちゃんが、くっつき合って寝ていた。


「ははは。タッちゃんお友達が増えたみたいですね」


 おじいさんは嬉しそうに笑うと、釣り竿を(かつ)いだナミがタイヤの付いた大きなクーラーボックス引きながら入ってきた。


「こんにちわ」


「「こんにちは!」」


 するとナミの釣り竿とリールを見た黒ちゃんが驚いてナミに尋ねた。


「なっ! その電動リールは、ジマノのピーストマスター6000EJですね!? なんと本格的な……」


「ぅん。店員さんがマグロも釣れるって」


「な、なるほど……。それにしても、こっちの世界でも売っているんだな……」


 それを聞いたイリューシュは黒ちゃんに尋ねた。


「黒ちゃんさん(くわ)しいですね。釣りをするんですか?」


「はい。よく海釣りに行くのです」


 ナミはララガの親の前でクーラーボックスを開けると、氷の上に50cmほどのハマチが入っていた。


「ララガ、たべて」


「クルル」


 ガブッ ガブッ


 ナミがそう言うと、ララガの親はハマチの尻尾の辺りだけを食べて、あとは残した。


 ナミはそれを見てララガの親を()でるとララガの親に言った。


「のこりは、あの子たちにあげるの?」


「クルルル」


「わかった、ちょっと待ってて」


 ナミは釣り竿を担ぐと、クーラーボックスからハマチを出して床に置き、またクーラーボックスを引いて家の玄関に向かった。


 それを見たイリューシュはナミに尋ねた。


「ナミさん、魚を釣りに行くんですか?」


「ぅん。こんどは大物ねらう。マグロとか」


「マグロ……!?」


「ララガたちに、たくさん魚たべさせたぃ」


 すると黒ちゃんがナミに言った。


「ナミさん、わたしも行ってもいいでしょうか?」


「ぅん、ぃいよ」


 それを聞いたアカネとめぐも言った。


「黒ちゃんが行くなら、あたしも行く!」

「あ、わたしも行きたい!」

「では、わたしも」

「はっはっは、それならわたしも」


「ぅん。みんなで、いっしょにぃこう」


 黒ちゃんは手で何か操作をするとナミに尋ねた。


「ナミさん、その竿とリールはコーシャタの下洲屋で買いましたか?」


「ぅん」


「では少し待ってもらっても良いでしょうか? コーシャタに転移して竿とリールを買ってきます。もちろん、みなさんの分も」


「まじで!」

「いいんですか?」

「いえいえ、そんな」

「わたしは、先日の竿で……」


「いえいえ。やはり釣りは本気でやらなければ面白くないですから。待っていてください!」


 黒ちゃんはそう言うと、玄関を飛び出してコーシャタへ転移していった。


 ◆


 黒ちゃんがコーシャタで釣り竿を買っている頃、海とライラは何とかレスカカルのタコを倒し、シャームにやってきていた。


 シャームの港の近くにはマガイルーへと続く洞窟があり、中にはボスのワニが待ち構えていた。


「海、あそこの洞窟は見えるか?」


「はい」


「あの洞窟の奥にワニがいる。ワニは1対1でしか戦えない。倒してくるんだ」


「はい!」


「ワニを倒せばマガイルーに行けるぞ」


「はい、がんばります!」


 海は走って洞窟の中へ入ろうとすると「この先は1人しか入れません【入る】【もどる】」と表示された。


 海は【入る】に触れると意気揚々(いきようよう)と奥へ進んでいった。



 海は洞窟の一本道を進んでいくと、広くなっているところに辿り着き、真ん中に大きなワニがいるのが見えた。


「あれだな……。がんばらないと」


 海が盾を前にしながら慎重に進んでいくと、ワニが突然襲いかかってきた。


「ガァァアアアア!」


「来たっ」


 ガキン!


 海はワニの攻撃をギリギリまで引き付けて盾で防ぐと反射的に槍でワニを突き刺した。


 ドスッ


「ガァァァア!」


 ワニは少し怯んで後ろへ下がると、今度は飛びかかってきた。


 ブワッ!


 ガン! ドスッ!


「ガァァアア」


「……ワニの動きが見える」


 海は冷静にワニの動きを見ると、盾で攻撃を防いでカウンター攻撃を決めていった。


「よし、うまく防げてるぞ! タコとの戦いで少しだけコツをつかんだかもしれない」


 海はそう呟くと、少しづつワニを追い詰めていった。


 ワニは追い詰められると、再び海に飛びかかってきた。


「ガァァアア!」


 ガン! ドスッ!


 海は再びカウンター攻撃を決めると、ワニは爪で引っ掻いてきた。


 ガン、ガン! ドスッ!


「ガァァアア」


 海は爪攻撃を盾で防ぐと、またカウンター攻撃を決めた。


「よし、うまくいった! ……い、いや、油断してはダメだ。僕はいつも調子に乗って迷惑をかけるんだ。冷静、冷静、冷静……」


 海は盾を構え直すと、海のカウンター攻撃でHPを大きく減らしたワニは勢いよく突進してきた。


 シュサササササ


「ガァァアアアア!」


 そして海に飛びかかると、海は冷静に盾で防いだ。


 ガキン! ドスッ!


「ガァァアアア……」


 そして槍でカウンター攻撃を頭に決めると、ワニは静かに消滅していった。


「え、あ、や、やった! やったぞ! ははは! やった! ライラさーーん!!」


 海は飛び跳ねるように喜ぶと、急いでライラの元へ走っていった。

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