ひろし、しまった!
おじいさんたちがピンデチの外へ出ると、ミニバンのモービルがやってきた。
そして、ミニバンはおじいさんたちの前に止まると数人の騎士たちが降りてきた。
海を騙したプレイヤーはミニバンに近づき、一際きらびやかな騎士に報告した。
「アーボン様、このジジィが最近噂の石投げジジィです。動画で見たので間違いありません! やっちゃいましょう!」
それを聞いたおじいさんは即座に状況を把握すると、ナミに言った。
「ナミさん、この人たちは敵です!」
「ぅん!」
おじいさんは石を持ち、ナミはタクトを持って戦闘態勢を整えると、アーボンは大笑いしながら言った。
「はっはっは! ウケる! こいつら、俺と戦うつもりなんだけどっ!」
シャァァアアアア……ガキン!
おじいさんアーボンに石を投げつけると、アーボンはダメージを受けながらおじいさんに言った。
「おいおい、結構ダメージくらうじゃんか。噂通りだな」
アーボンは剣を抜いて構えると、周りの側近たちも剣を抜いて構えた。
「おい、あのジジィと女をやれ。動画もキャプチャー(録画すること)しとけよ。いま話題の石投げ爺ジジィ倒せば再生数も上がるぜぇ~」
「「はい」」
アーボンの騎士たちは一斉におじいさんとナミに襲いかかった。
ガキン!!
するとその瞬間、おじいさんたちの前に海が走り込み、盾で攻撃を防いだ。
「ごめんなさい! また僕が馬鹿なせいで騙されて!! ごめんなさい!」
ガキン! ガキン!
海はおじいさんとナミを守りながら叫んだ。
「安全な村の中へ逃げてください! 早く!」
しかしおじいさんは石を取り出すと、騎士の1人に投げつけた。
シャァァアアアア、ガン!
「うっ! なんだこれ、スゲェHP減る!! やべぇ!」
おじいさんの石を食らった騎士が怯むと、ナミがタクトを振ってララガを呼んだ。
「ララガ!!」
すると、ララガの親子がタクトの先から飛び出し、ララガの親は即座に全身に炎を纏わせて一直線に騎士たちに向かって走り出した。
ブォォォオオオ!!
「ガァァアアアアア!!」
ララガの親は盾を構えている海を飛び越えると、敵の騎士に飛びかかった。
「うわぁぁああ!」
ガブッ グググッ… ズバッ! ズバッズバッ!
ララガの親は騎士の首に噛みつくと、鋭い爪で何度も体を切り裂いた。
「あ、あいつまさか……、テイ……、マー……?」
騎士はそう言い残すと、炎に包まれながら消滅していった。
ララガは次々と騎士たちに襲いかかってHPを減らしていくと、大きく咆哮をして口から火の粉を吐いた。
ブワァァアアア!
「や、やべぇ!! 爆発するぞ!!」
「逃げろ!!」
ドガァァァアアン!!
「「うわぁぁあああああ!!」」
ミニバンのモービルを消し飛ばすほどのララガの爆発は、一瞬にして騎士たちに大ダメージを与えた。
そこへすかさず、おじいさんが石で攻撃した。
シャァァアアアア、ガン!
シャァァアアアア、ガキン!
シャァァアアアア、ドガン!
「ぐわぁああ!」
「く、くそう」
「なんなの、あの石……」
騎士は次々と消滅していったが、アーボンは余裕の表情で舌打ちをしながら言った。
「ちっ! 邪魔が入りやがったか! くそっ、まずはお前から死ね!」
アーボンは近くにいた海に走り込むと、思い切り剣で叩きつけた。
ガキン!!!
「うわっ!」
その様子を見ていたおじいさんは、盾で必死に攻撃を防いでいる海に大きな声で言った。
「海くん、その人はとても強いようです! 一緒に村へ逃げましょう!」
しかし、海は盾でアーボンの攻撃を防ぎながら必死に槍で反撃をしていた。
「ぉじいさん、ぃこう。たぶんあの子、にげないつもり」
ナミはおじいさんの手を引くと、おじいさんは海を心配しながらもナミと一緒にピンデチの村の入口をくぐった。
するとなんと、アーボンに飛びかかろうとしたララガの姿が消えた。
「ぁ、ララガきえた」
1人になってしまった海は、アーボンの連続攻撃を受けると、静かに消滅していった。
アーボンは、おじいさんとナミが村に入ったのを見ると、舌打ちをして転移していった。
◆
おじいさんたちはG区画の家に戻ると、大広間にララガの親子がいた。
「ぁ、ぃた」
ナミはララガの親を撫でると、ララガの親は目をつむって気持ちよさそうにした。
「クルルルル」
するとその時、和室の窓から見えていた桜の木が突然消えた。
それを見たおじいさんは庭にリスポーンした海が居ることに気づき、自動ドアを抜けて庭へ出た。
海はおじいさんを見つけると駆け寄ってきて泣きながら土下座をした。
「つむぎちゃんのおじいさん、本当にごめなさい。僕、また馬鹿な事をして……。こんな桜の木のために、みなさんを……」
おじいさんは海の前にしゃがむと、優しく声をかけた。
「海くん、どうか顔を上げてください。わたしもタッちゃんたちの食べ物に目がくらみました。年長者のわたしが用心するべきでした」
「いえ、僕が! うぅぅ……」
ペチッ
「え!?」
「なに、いつまでもメソメソしてるのよ」
なんとルルが海の頭を軽く叩いていた。
おじいさんは立ち上がると、ルルに挨拶をした。
「ルルさん、おはようございます」
「ひろしさん、おはようございます。また海がやらかしたみたいですね」
「いえ、今回はわたしが……」
するとナミも庭に出てきてルルに挨拶をした。
「ルルさん。ぉはよぅ」
「あら、ナミさん。おはよう」
「キュウキュウ!」
その時、ナミと頭の上のアルマジロは庭の外に槍使いのライラがいるのを見つけた。
槍使いのライラはバリードレの戦いで、ナミとアルマジロと戦った騎士だった。
ライラはおじいさんとナミに一礼すると、ルルがおじいさんに説明した。
「実は、あそこのライラちゃんにプレイヤーキラーたちを監視してもらっていて……、プレイヤーキラーたちが老人とテイマーと戦ってるって連絡がきたから慌てて……」
「これは、ご心配をおかけして申し訳ありません。確かに老人とテイマーさんは、わたしたちくらいかもしれませんね……」
「ええ。で、あたしが来たときには海くんがやられたところで……」
それを聞いた海はルルに頭を下げながら言った。
「やられて、すみません! ほんと僕が弱いせいで!」
「海くん。あなた弱いだけじゃなくて、ちょっと真っ直ぐすぎるわね」
「え?」
「こんなに何度も騙されるなんて、正直で素直すぎるのね。詐欺師の格好の餌食よ」
「……はい」
「ねぇ、あなた。賢くなって強くなりたくない?」
「はい、もちろんです! もう、みなさんにご迷惑をかけたくないです! おねがいします!」
「わかったわ。ちょうど人が欲しかったのよ。ちょっと庭の外に来て」
「はい!」
ルルは庭の外へ海を連れて行くと、ライラを紹介した。
「海くん、この子はライラちゃん。女の子だけど槍の腕前はもちろん、忠誠心が厚くて頭も良いの」
「ライラさん、素晴らしいです!」
「だからライラちゃんに敵の情報を集めてもらってるんだけど、今日からライラちゃんの部下にならない? 同じ槍使いだから、沢山学べると思うの」
「はい! ぜひ、お願いしたいですライラさん!」
ライラは静かに笑うと、ルルはライラに海の事情を話した。
「ライラちゃん、この子は海くん。ちょっと素直すぎるんだけど素質は悪くないと思うんだ。鍛えてあげてくれないかなぁ」
「はい、ルル様。部下ができるだけで助かります。ビシビシ鍛えます」
「ありがとう、頼むわね」
するとライラは海に大声で言った。
「海、今からすぐ動くぞ。ついてこい」
「はい!!」
「遅れたら置いていくぞ」
「はい!!」
ライラと海はG区画の海岸へと走っていった。
おじいさんはナミはルルと一緒に家に入って和室でお茶を楽しむと、朝練をしにきたアカネたちと入れ替えに、一旦ログアウトしていった。
◆
その頃、海はライラと一緒に船に乗ってレスカカルへ向かっていた。
「海、おまえは転移魔法が使えないから、最短ルートでサブクエストをこなすぞ」
「はい!」
「ルートとしては、レスカカルのタコを倒し、レスカカルに入らずにマガイルーからベイリゲンへ抜けて鍛冶屋を解放、そしてマガイルーに戻れば転移魔法が使える」
「はい、おねがいします!」
「じゃあ、いま私が言ったことを復唱してみろ」
「はい! まずタコのレスカルを倒してマガルーから抜け駆けすると鍛冶屋の転移魔法が使えます!」
「ぜんっっぜん違う!」
「え!? す、すみません!」
「もう一度言う! レスカカルのタコを倒し……」
こうして海の前途多難な旅が始まった。




