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黒ちゃん、また

 ー その頃、G区画の家の庭 ー


「ちょちょちょちょ! ベンドレ、なんとかしてよ!」


「え、いやいやいや! ルル、ここでは攻撃ができん!」


「つむぎちゃん、僕のうしろに隠れて!」


「う、うん。でも……」


 G区画の家の庭では、ベンドレとルル、そして海とつむぎが照明に照らされた花畑を見ながらお茶をしていたが、急にララガの親子が(あらわ)れてパニックになっていた。


 つむぎは大人しく並んで座るララガの親子を見て、みんなに言った。


「あのライオンさんたち、大人しくないですか?」


 しかしルルはつむぎに言った。


「いやいや、ちょー強いの! あたし、ほんと苦手なの! 隠れてもすぐ見つけ出すし、爆発するし!」


 ララガの親子は並んで座ったまま動かなかったので、つむぎは静かに近づいていった。


 それを見た海も、つむぎと一緒にララガの親子に近づいていった。


「あ、つむぎちゃん。よく見たら小さい方のライオンかわいいね」


「うん。大きい方もかわいいよ」


「え? あ、うん。そうだね」


 つむぎたちはララガの親子の前まで来ると、ララガの子供が尻尾を振りながらつむぎに近づいてきた。


「うふふ、かわいい」


 つむぎはララガの子供の頭を撫でると、ララガの親もリラックスしたように静かに伏せて大あくびをした。


「グァアアア……」


「「ははははは」」


 それを見た海とつむぎは一緒に笑った。


「大きいあくびだったね」

「うん。かわいいね」


 それを見ていたベンドレとルルもゆっくりとララガの親子に近づいていった。


 その時ベンドレは、ララガの額にテイマーの紋章がある事に気づいてルルに話した。


「ルル、ララガの額にテイマーの紋章がある」


「紋章?」


「ララガの額を見てくれ。うっすら紋章があるだろう」


「え? あ、ほんとだ」


「わたしも本物を見たのは初めてだが、あれはテイマーがモンスターを手懐(てなず)けると現れるらしい」


「ほんとに!? じゃあ、この家の誰かがテイマーになったの?」


「そういう事になるな」


「幻の職業って言われてるテイマーになって、ララガを手懐けるなんて……。一体、誰だろ」


「ふむ……。誰だかは分からないが、手懐けられたモンスターはテイマーの指示が無い限り攻撃しない。珍しいから我々もララガを触っておこう」


「ほんと? じゃあ、()で放題ね。うふふ」


 ベンドレとルルも、つむぎたちと一緒にララガの親子を優しく撫でた。



 その頃、おじいさんたちはレスカカルを出港して船でG区画へ向かいながら、船にあった釣り竿で釣りをしていた。


 アカネは釣り竿を(ざつ)に振り回しながら、めぐに言った。


「なぁ、めぐぅ。ぜーんぜん釣れないんだけど」


「アカネ、そんなに竿(さお)を動かしちゃダメだよ」


「えぇ~、だって全然釣れないんだ……、ん? え! あれ? キタッ!」


 アカネは立ち上がると、竿をグッと引いた。


「これキタんじゃない? おりゃっ! こりゃ絶対に大物だっ! 引きが強い!」


 グググッ ググッ


 アカネが釣り竿と格闘していると、めぐがアカネを応援した。


「アカネがんばって! ララガたちに美味しい魚を持って行ってあげないと!」


「うん! まかせとけ!」


 テイマーは動物やモンスターを手懐ける代わりに食べ物をあげなければならなかった。


 そこで、みんなでエサになる魚を釣ってナミを助けようとしていたのだった。


「キタキタキタキタ! おりゃ!」


 アカネは豪快に釣り竿を引き上げると海から魚が飛び出した。


 ジャバッ!


「おっしゃー!」


 ピチピチピチ


 船の甲板に釣り上げた魚が落ちると、めぐがアカネに言った。


「ちょっ、アカネ! この魚ちっさ!!」


 なんと手の平くらいの大きさの魚が甲板(かんぱん)でピチピチしていた。


「あれぇ? 引きは強かったんだけどなぁ……」


 近くにいた大熊笹はアカネの釣った魚を押さえつけると、手で締めてアカネに言った。


「アカネさん、これはアジですね。小さい魚ですが味は良いですぞ」


「あ、知ってる! スーパーで売ってるやつだ。でも今度はもっとデカイの釣りたいなぁ」


「ききっ」


 すると子猿のタッちゃんがおじいさんの懐から飛び出してアカネが釣り上げたアジに飛びついた。


 はむはむ


 そして嬉しそうに魚を食べ始めると、それを見たアカネがめぐに言った。


「あはは、タッちゃんサイズだったね」


「うん。でもタッちゃん嬉しそうだから、いいよね」


 すると今度は黒ちゃんが大声を上げた。


「来た! これは本当に大きいぞ! うおぉぉおおおお!」


 それを聞いたアカネが黒ちゃんに言った。


「まじで? そんなこと言っちゃって、手の平サイズの魚なんじゃないの?」


 黒ちゃんは釣り竿を抱えるように引き上げると海面から大きな影が見えてきた。


「うわ黒ちゃん、まじで大物じゃんか!」


「はっはっは! これは大きいぞ!! おりゃぁぁぁあああ!!」


 黒ちゃんは力いっぱい釣り竿を引き上げると大きな触手が海面から姿を現した。


 ザバァァアアアアア!!


 ベチャァァアン!!


「え?」


 なんと黒ちゃんは墨吹きタコに針をかけてしまい、タコは船を見つけて()い上がってきたのだった。


「「うわーーー!」」


 みんなは慌てて戦闘態勢を整えると、


 ペッ!


 ベチョッ!


「ぐわっ! なんでいつも私だけ!」


 黒ちゃんはタコの墨を食らって視界が狭まった。


 黒ちゃんが後ろに下がると、イリューシュがナミに言った。


「ナミさん、ララガを呼び出してみたらどうですか? 墨吹きタコは海の生き物ですが水属性の攻撃はできませんから」


「ほんとに?」


「ええ。ここに呼び出せばララガも早くご飯を食べられますよ。もしララガが危なくなったら戻しましょう」


「ぅん、わかった。どぅやるの?」


「タクトを振りながら、ララガと言えば現れるはずです」


 ナミはタクトを振りながら大きな声でララガと言った。


「ララガ!」



 その頃、G区画の家の庭ではベンドレたちがララガと遊んでいた。


 恐る恐るララガに(さわ)っていたルルも少しずつ慣れてきて、ララガの親の背中を()でていた。


「ねぇ、ベンドレ。ララガもさぁ、攻撃してこなければ可愛いわね」


「うむ、そうだな」


「なんか毛並みが良くてモッフモフ。うふふ」


 そしてルルがララガの背中に顔をうずめようとした瞬間、


 スカッ、ドシャッ


「いたっ!!」


 ララガの親子は消えてルルは地面に倒れた。



 ブゥーーン


 ナミに呼び出されたララガの親子は船の甲板に現れた。


 ララガの親は墨吹きタコに気づくと頭を低くして戦闘態勢に入ったが、ララガの子供は静かに後ずさりした。


「ごめんね。こっちにぉいで」


 ナミはララガの子供を(かか)えあげて()っこすると、ララガの子供は嬉しそうにナミの顔を()めた。


 ブォォオオオオ!


 ララガの親は全身に炎を(まと)わせると、悠然(ゆうぜん)と墨吹きタコに近づいていった。


 その悠然(ゆうぜん)とした(あゆ)みを見たアカネは大熊笹に言った。


「ねぇ、熊じぃ。ララガの歩き方って師範(しはん)が弟子に近づいてくる感じじゃない? 熊じぃみたい」


「はっはっは。ララガは全く負ける気がしないのでしょうな」


「まじで?」


 アカネがそう言った瞬間、墨吹きタコが触手でララガを狙った。


 ビュゥゥゥウ!!


 パァン!!


 しかしララガは触手を尻尾で軽く弾き返すと体の炎を揺らしながら、ゆっくりと距離を()めていった。


「ガァァアアアア!」


 そしてララガは口から火の粉を勢いよく吐き出すと、火の粉はタコを大きく(おお)った。


 それを見たイリューシュは大声でみんなに言った。


「みなさん危ない! 伏せて!」


「「わーー!!」」


 チッ……


 ドガァァアアアアアン!!



 ビチャァァアアア!


 ビチッ ビチャッ ブチョ 


 ララガの火の粉が大爆発を起こすと、墨吹きタコは跡形(あとかた)もなく吹き飛び、足だけが残っていた。


 それを見たアカネが黒ちゃんに言った。


「うわわ、あの爆発まともに食らったら、あんなになるんだ」


「うむ。わたしの鎧はガチャで出るレアな鎧だが、直撃すれば危ない」


「まじか! ララガが味方になって良かったー」


 アカネがそう言うと、ララガの親は倒されたタコが特殊素材として落とした「タコの足」を咥えてナミのところへ歩いていった。


 ナミに抱っこされていたララガの子供はタコの足をもらうと嬉しそうに食べはじめた。


「よしよし」


 ナミはララガの親の頭を撫でると、ララガの子供も嬉しそうにした。



 ララガの親子が満足いくまでタコの足を食べ終えると、船はちょうどG区画の海岸に到着した。


 おじいさんたちは船から降りると、みんなでG区画の家へ向かって歩いていった。

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