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ひろし、連れて帰る

 HPを大きく減らしたナミは起き上がって回復薬を飲むと、後を追ってきたみんながナミに駆け寄ってきた。


「ナミさん、大丈夫? あのララガひどいなぁ」

「もう! せっかくナミさんが子供助けたのに、ひどい!」


 アカネとめぐがララガの親の行動に怒ると、ナミが2人に言った。


「親だから、ひっしだった。しょうがなぃ」


 ナミはそう言うと「溶岩ようかん」をたくさん出現させて川大蛇の近くに置いた。


「ごめんね。起きたら、これたべて」


 ナミはそう言いながらウサギに戻った魔法使いを拾い上げると、みんなに頭を下げながら言った。


「かってに行動して、ごめんなさぃ」


「いやいや、ララガの子供が食べられるとこなんて見たくなかったし」

「そうそう!」


「ナミさんの行動は素晴らしかったですよ」


「わたしもそう思います」

「ききっ!」


 みんながナミを称賛すると、ナミは少し下を向いて恥ずかしそうにした。


 ◆


 おじいさんたちは河原を離れると密林の中の道を戻り、その途中で大猿たちの住処(すみか)に立ち寄った。


 おじいさんは(ふところ)から顔を出している子猿の頭を撫でるとジャージの中から抱き上げて地面に置いた。


「さぁ、帰ってきましたよ。お帰りなさい」


「ききっ」


「あなたのお陰で、ほんとうに助かりました。ありがとう」


「きっ!」


 子猿は嬉しそうにおじいさんを見つめると、おじいさんに抱きついた。


「ははは。どれ、お父さんとお母さんの所へお帰りなさい」


 おじいさんは子猿の頭を撫でると、優しく両手で持ち上げて再び地面に置いた。


 子猿は嬉しそうにおじいさんを見つめると、またおじいさんの足に抱きついた。


 それを見ていたナミは、おじいさんに言った。


「おじぃさん。その子、親がぃないとぉもう」


「ええ?」


 おじいさんが驚くとナミは話を続けた。


「だから、おじぃさんに甘えてる」


「……なるほど、そうですか」


 子猿は嬉しそうにおじいさんの体をよじ登ると、ジャージのファスナーを手で下げた。


「ははは。もう覚えてしまったんだな」


 そして子猿はおじいさんの懐に入ると、嬉しそうに顔を出した。


「ききっ」


 おじいさんは子猿の頭を撫でると、子猿に言った。


「では……、一緒に行きましょうか」


「きっ」


 子猿は手でおじいさんの顔を触りながら嬉しそうに返事をした。



 おじいさんたちは、大猿の住処(すみか)を後にするとレスカカルの村へと向かった。


 途中、アカネが懐の子猿と遊びながら、おじいさんに(たず)ねた。


「じぃちゃん、この子猿の名前はどうするの?」


「あぁ、そうですね……。うぅん……、あ、辰夫(たつお)さんでどうでしょうか」


「た、辰夫(たつお)さん?」


「変でしょうか……」


「え、いや、……うん、変……かなぁ。……じゃあさ、タッちゃんは?」


「タッちゃん……。あぁ、それは良いですね、可愛らしい名前で」


 それを聞いた子猿は嬉しそうにアカネを見つめた。


「きききっ!」


「ははは、子猿さんも喜んでいますね。ではタッちゃんにしましよう。アカネさん、ありがとうございます」


「え、あ、いやいや、良かったよ!」


 アカネがそう言うと、おじいさんはタッちゃんの頭を撫でながら言った。


「タッちゃん、これからも宜しくおねがいしますね」


「きっ」


 タッちゃんは嬉しそうにおじいさんを見つめると、ジャージの中でおじいさんに抱きついた。


 するとその時、イリューシュが声を漏らした。


「あ、あれは……」


 なんと、ララガの親子がレスカカルの村へ続く道を(ふさ)ぐように座っているのが見えた。


 黒ちゃんはそれを見てイリューシュに言った。


「イリューシュさん、どうしましょうか」


「ええ。今は炎が消えていますが、近づいたら戦闘になるかもしれません」


「ですね……」


 黒ちゃんとイリューシュが警戒していると、ナミが静かにララガ親子の元へと歩いていった。


「あ、ナミさん!」


「イリューシュさん。あの子たちは大丈夫」


「ええ!?」


 ナミはそう言うと、ララガの親子へ近づいていった。


 そしてララガの親子の近くで立ち止まると、子供のララガがナミに近づいてきてナミの足元に(ふせ)せた。


「クルルルルッ」


「よしよし」


 ナミはしゃがむとララガの子供の頭を優しく()でた。


「よしよしよし」


 コロン


 するとララガの子供は地面に転がって腹を出した。


「よしよしよしよし」


 ナミはララガの子供の腹をワシャワシャすると、ララガの子供は嬉しそうにした。


 するとララガの親もゆっくりとナミに近づいてきた。


 それを見たアカネはイリューシュに言った。


「イリューシュさん、ナミさん大丈夫かなぁ」


「あの距離では、何かあっても助けることができません。ここは見守りましょう」


「そ、そうっすね」


 ララガの親はナミの近くまで来ると、ナミを見つめた。


「よしよし」


 ナミはララガの親の鼻先を撫でると、


 ズゥウン


 なんと、ララガの親も地面に転がって腹を出した。


「よーしよしよし」


 ナミは親のララガの腹もワシャワシャすると、それを見たイリューシュがナミに言った。


「ナミさん、それはララガの服従のポーズです。タクトで手懐(てなず)けられますよ」


「……ぅん。でも……」


「ふふふ。ナミさん、きっとララガを(したが)えるのが申し訳ないのですね」


「ぅん。じゆうに生きてほしぃ」


「でもナミさん。もしかしてですが、このララガの親子は他に家族がいないのでは」


「ぇ?」


「ララガの母親は一度に3~4頭の子供を産み、家族は2頭の親と一緒に行動すると聞いています。もしかしたら、このララガの兄弟と親の1頭は……」


「……そぅか。そぅかも」


 ナミはララガの親子を()でながら下を向くと、イリューシユがナミに優しく言った。


「ナミさんがタクトで手懐ければ、ララガの親子は安全なところへ転送できます。もう川大蛇に狙われる事もありませんよ」


「ほんと?」


「ええ。タクトをララガの(ひたい)に当ててみてください」


「わかった」


 ナミはタクトを手に出現させると、ララガの親の額に当てた。


 ララガの親は静かに目をつむると、ナミの視界に世界地図が現れた。


「ナミさん、世界地図が出ましたか?」


「ぅん。あと右上にテイマーズ・ヤードっていうのもでた」


「テイマーズ・ヤードは土地を持ってない人が(したが)えたモンスターを送るところです。ララガはG区画の家へ送りましょう」


「ぃいの?」


「ええ。地図を拡大してG区画の家の庭を触れてください」


 ナミは地図を両手で拡大すると、G区画の家の庭を見つけた。そして庭に触れると、視界が戻った。


「ぁ」


 ナミの視界が戻ると、すでにララガは居なかった。


 ララガの子供は一瞬驚(いっしゅんおどろ)いた様子だったが、ナミが優しく撫でると安心したように目をつむった。


「すぐ、ぉかあさんに会えるよ」


 ナミはララガの子供の額にタクトを当てると地図に触れてG区画の庭に送った。


 アカネはナミがララガの親子を送ったのを見届けると、めぐに話しかけた。


「なぁ、めぐ。なんか野生に生きるのって大変だな。さっき、ララガの親を倒せなくてよかったよ」


「うん。もし倒しちゃったら、あのララガの子供は1人になっちゃってたかもね」


「だよな」


 すると黒ちゃんがアカネに言った。


「ララガは主に魚を食べる。だが川の近くには川大蛇がいて生存競争(せいぞんきょうそう)が厳しいのだ」


「そうかぁ。ナミさんが助けたララガたちだけでも幸せになってもらいたいね」


「うむ、そうだな」


 こうしておじいさんたちは少し真剣な話しをしながらレスカカルの村へと向かった。


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