ひろし、神殿に着く
ー 密林の神殿 ー
おじいさんたちは川を渡って神殿に辿り着いた。
そしてイリューシュを先頭に中へ入ると、中は大きな広間になっていて、中心に2体の龍の石像が並んでいた。
2体の石像には、それぞれの石像の周りを光る珠が数個、ふわふわと浮かびながらゆっくりと回っていた。
イリューシュはみんなに神殿の説明を始めた。
「みなさん。2体の龍のうち、右の龍が昇格転職をさせてくれる龍です。周りを回っている光る珠を見てみてください」
みんなは回る珠を見てみると、珠には昇格転職できる職業名とアイコンが描いてあった。
それを見ためぐは、魔法騎士の珠を見つけてイリューシュに言った。
「イリューシュさん、魔法騎士の珠がありました!」
するとナミもテイマーの珠を見つけてイリューシュに言った。
「イリューシュさん、この黄色いの『テイマー』ってかいてぁる」
「お2人とも、その珠を手に取ってくださいね」
「はい」
「ぅん」
めぐとナミはそれぞれ魔法騎士とテイマーの珠を手に取ると、珠は2人の手の中に吸い込まれていった。
「え?」
「ぁ」
2人が驚いていると龍の石像が語りかけた。
「プレイヤー、めぐ。そなたは魔法騎士を所望か」
「え、あ、はい!」
「ステータスが足りないようだが、持っているステータスポイントで補っても良いか」
「はい、お願いします!」
「よかろう。ステータスは全て0に戻り、100ポイントを授ける。良いか」
「はい!」
すると、めぐの体が輝き出し、龍の石像の目が赤く光った。
「そなたの望み、しかと聞き入れた。今から魔法騎士となる事を許す。今後は武器を使って魔法を発動するがよい」
「ありがとうございます!」
シュゥゥウウウ……
めぐの体の光が収まると、龍の石像はナミに話しかけた。
「プレイヤー、ナミ。そなたはテイマーを所望か」
「ぅん」
「ほう。そなたは動物たちと意思疎通ができるようだな」
「ぅん」
「よかろう。素質は問題ない。ステータスは全て0に戻り、100ポイントを授ける。良いか」
「わかった」
すると、ナミの体が輝き出し、龍の石像の目が赤く光った。
「そなたの望み、しかと聞き入れた。今からテイマーとなる事を許す!」
「ぁりがとぅ」
シュゥゥウウウ……
ナミの体の光が収まると、ナミの前に短い木の棒が置いてあった。
「ナミよ。その木の棒は『タクト』という。動物やモンスターを呼び出す時は、呼び出したい動物やモンスターの名前を言いながらタクトを振るがよい」
「わかった」
「ただし、そなたが呼び出せるのは契約した動物やモンスターのみ。そなたに動物やモンスターが従順な態度を見せた時、タクトを相手の額に当てれば契約ができるであろう」
「ぅん」
ナミはタクトを拾うと龍の石像に頭を下げた。
こうして、めぐは魔法騎士、ナミはテイマーに転職を済ませ、みんなは神殿を後にした。
神殿を出ると、すっかり外は暗くなっていた。
黒ちゃんは剣に着火剤を振りかけると地面で着火して松明代わりにしながら先頭を歩き出した。
それを見たアカネは、笑いながら黒ちゃんに言った。
「ははは。その剣、便利だね。めっちゃ明るく燃えるじゃん」
「うむ。もう少しメインクエストを進めるとダンジョンもあるのだが、炎属性の剣は便利だったぞ」
「へぇぇ。そういえば、黒ちゃんは昇格転職しないの?」
「うむ。私は騎士のままステータスを上げすぎてしまってな。今さら0にしてやり直すのは……」
「あ、そっか。転職するなら転職に必要なステータスが溜まったらすぐ転職しないと損だもんね」
「そうなのだ。一応、救済措置もあるようなのだが、他に似合いそうな武器もないのでな」
「ははは、確かにそうだね。魔法使いの杖を持たせても、杖で殴りそうだし」
「そうだな……」
「やっぱ黒ちゃんは頭を全く使わないで両手剣でガンガンいって欲しいな!」
「お、おう」
黒ちゃんは一瞬、褒められているのかディスられているのか分からなかったが、アカネが楽しそうにしているので良しとした。
するとその時、ナミが立ち止まって呟いた。
「どうぶつ……、こわがってる声がする」
「え?」
アカネはナミの呟きを聞くと、静かにして耳をそばだてた。
「ク……、クォォ」
「あ、ほんとだ。何か聞こえる」
アカネがそう言うと、ナミは弓を手に持って声のする方へ走り出し、河原へ出た。
おじいさんたちも走ってナミに付いていくと、なんと少し遠くで巨大なヘビが2頭、小さな獣を威嚇していた。
イリューシュはそれを見ると、みんなに言った。
「あれは川大蛇です。そして、あの小さいモンスターは……」
するとナミが言った。
「たぶんララガ。でも、子供とおもう」
「ええ、そうですね。川大蛇は水を吐き出して攻撃しますから、ララガの天敵です。あのままでは……」
イリューシュがそう言うと、急に空が明るくなった。
ブワァァァアアアア
ドカァァアアアアアン!!
「「わーー!!」」
「あの爆発は!」
アカネがそう言うと、イリューシュが顔を上げながら言った。
「大人のララガです!」
みんなが爆発したほうを見ると、体に炎を纏わせた成獣のララガが川大蛇の一匹に飛びかかって噛みつく姿が見えた。
「あ! さっきのララガ! ヘビに飛びかかった!」
アカネがそう言うと、めぐも大声で言った。
「きっとあの小さいララガの親だよね。頑張れ!!」
黒ちゃんは少し離れて冷静にイリューシュに話しかけた。
「これもレスカカルの生態系ですね。皆、生きるためには弱い子供を狙う。ララガには頑張って欲しいですが、川大蛇も生きなければなりません」
「ええ、そうですね。川大蛇もお腹を空かせているでしょうから必死でしょうね」
ダダダッ!
黒ちゃんとイリューシュが話していると、ナミが突然走り出した。
イリューシュは驚いてナミに言った。
「ナミさん、どこへ!」
「子供たすける」
ナミはそのままララガの子供のほうへ走っていった。
◆
ナミはララガの子供がいる所へ走っていく途中、ウエストバッグのチャックを少し開けると、ウサギの姿になって眠っている魔法使いに話しかけた。
「ウサちゃん。手伝って」
「ナミ様、もちろんです」
ナミがララガの子供の所へ辿り着くと、ララガの子供は川大蛇に威嚇されて恐怖で震え、その場から動けなくなっていた。
「クゥゥ……」
ナミは急いでララガの子供を庇うように前に出ると、ウエストバッグのチャックを開けた。
ピョコン
「ウサちゃん、あのヘビさんたちを眠らせて」
「はい、おまかせを」
ポワン
ウサギは小柄な女性の魔法使いの姿になると、大きなあくびをした。
「ふぁぁあああ……。おやすみなさい」
バタン! バタン!!
ウサギの魔法使いがあくびをすると、2頭の川大蛇はすぐに眠りに落ちて横に倒れた。
すると、川大蛇に噛み付いていた親ララガは眠った川大蛇から離れ、猛然とナミに突進してきた。
「ぁ!」
ドガン!!
ズザァァアアアア
ララガは突進してナミを突き飛ばし、ララガの子供を咥えると、そのまま川下へ走り去っていった。




