ひろし、先導する
みんなが一斉にララガから離れて体を伏せると、ララガは口から勢いよく火の粉を吹き出した。
そして次の瞬間、
ドガァァアアアアアン!!
火の粉が大爆発を起こして、爆風がみんなのHPを削っていった。
「うわ、これヤバ!」
「きゃあぁ!」
「ぅ、ぅぅ」
「おっとと」
「くっ」
「しまっ……」
オオォォオン……
爆発の残響が残る中、イリューシュが大声で言った。
「みなさん、回復薬は飲まないでください! ララガは大技の後、回復薬を飲んでいるプレイヤーに追い打ちをかけてきます!」
「まじすか!?」
「え、こわっ!」
「ぅん」
「はっはっは。弱点を突いてきますな」
「HPが4になってしまったが仕方ない……」
イリューシュたちは警戒しながら距離を取ると、ララガはさらに炎を大きく膨らませながら近づいてきた。
アカネは、ゆっくりと近づいてくるララガを警戒しながら黒ちゃんに聞いた。
「なぁ、黒ちゃん。ララガめっちゃ強いけど、黒ちゃん勝ったことあるの?」
「ああ、もちろんだ。だが今は状況が違うのだ……」
「状況?」
「うむ。ララガは水属性の武器で何度か攻撃すれば炎を消すことができる。なのでララガを倒した時は水属性の両手剣で戦ったのだ」
「まじで! じゃあ早く水の剣にしてよ」
「すまん。売ってしまった」
「はあっ!?」
「……いや、何というか、ゲームを進めると水属性の武器があまり使えなくてな……。他の属性の両手剣だけを集めてしまって……」
「まじか!!」
「いや、おそらくイリューシュさんも……」
黒ちゃんがイリューシュを見ると、イリューシュは少し照れ笑いしながらアカネに言った。
「ごめんなさいアカネさん。わたしも水属性の武器は全て売ってしまいました。ふふふ」
「ええー!!」
アカネはみんなを見回すと呟いた。
「めぐは雷、ナミさんは……、たぶん属性無いな。で、あたしと熊じぃは無職……。うん、誰も水属性じゃない」
アカネはそう呟くと、イリューシュに言った。
「イリューシュさん。正直、勝てそうっすか」
「ふふふ。このままだと……、ちょっと厳しい……かな」
「おっけーっす。いい考えがありまーす」
アカネはイリューシュにそう言うと振り返ってみんなに大声で言った。
「逃げろーー!!!」
「「わーーーー!!」」
アカネの声をキッカケに全員密林に向かって走り出すと、ララガも走って追いかけてきた。
「うわ、やば! 来た!!」
「きゃぁあ」
「急ぎましょう!」
ダダダダダダダダダダ
するとその時、密林からおじいさんがヒョッコリと現れて大声で言った。
「みなさん! こちらです!」
「あ! じいちゃん!」
「おじいちゃんだ!」
「ひろしさん!」
「今行きます!」
みんなは一斉に方向を変えておじいさんのほうへ向かった。
おじいさんはみんなが走って来る事を確認すると、密林の中へ入っていった。
「みなさん、付いてきてください!」
「「はい!!」」
しかしララガも諦めずに猛然と追いかけてきた。
「やばい! ララガまだ追いかけてくる!」
アカネが叫ぶと、頭の上から何かが飛んできた。
ヒュッ ヒュッ ヒュッ ヒュッ ヒュッ
そしてそれはララガに当たって破裂した。
ビチャッ ビビチャッ ビチャッビチャッ
「グゥゥウウウ」
「うきききっ!」
みんなが鳴き声のしたほうを見ると、なんとナミを護衛していた大猿たちが木の上から大きな木の実を投げてララガの顔に命中させていた。
ララガは木の実が破裂して視界を失うと、その場に立ち止まって動かなくなった。
それを見たナミは大きな声で大猿たちにお礼をした。
「猿さん、ぁりがとぅ!」
「「きききききぃー!」」
大猿たちはナミの声に答えると一斉に木の上へ逃げていった。
おじいさんはその隙に子猿の先導で密林の中へ走ってゆき、倒れた細い木を登って密林の上へとあがっていった。
みんなもおじいさんの後を追って上へあがると、そこには信じられない光景が広がっていた。
密林の上部は沢山の蔦や枝が絡まって丈夫な床ができていて、樹上にもう一つの世界が広がっていた。
密林の上にあがってきたアカネとめぐは、驚いて思わず声をあげた。
「すごいな! 童話の世界だ!」
「ほんと! あ、リス! あっちはウサギも」
「鳥もたくさん居る!」
上の階層では小さな動物たちが伸び伸びと暮らしていて、木の実も豊富にあった。
イリューシュは驚きながら呟いた。
「密林の上にこんな世界があるなんて……」
イリューシュが周りを見渡していると、おじいさんが子猿を抱え上げてみんなに言った。
「ここまで来れば恐らく大丈夫です。先程は、ここから皆さんを見つけて石を投げていたんです」
それに驚いたアカネは周りを見渡すと、おじいさんに言った。
「へぇぇ。それにしても密林の中にこんな所があるなんて」
「この子猿さんが大きなライオンから逃げる時に案内してくれたんです」
「えらい子猿だなぁ」
「ききっ」
子猿は嬉しそうにおじいさんの懐に入ると、顔を出してアカネを見つめた。
めぐはおじいさんのところへやって来ると、子猿の頭を撫でながらお礼をした。
「子猿さん、ありがとう。助かったよ」
「きっ」
子猿はめぐの手を触りながら嬉しそうに鳴いた。
「うふふ、かわいい」
すると、アカネがおじいさんに尋ねた。
「そういえば、じいちゃんララガの爆発大丈夫だったの?」
「あ、はい、必死に子猿さんを抱えて逃げていたのですが、大丈夫でした」
「まじで!? あたし爆風に当たっただけで死にそうだったよ。ララガ調子悪かったのかなぁ」
「ははは、そうかもしれませんね。子猿さんが巻き込まれては大変だったので、急いで密林に逃げました」
おじいさんは新しいジャージの属性ダメージ無効の効果で救われていた事には全く気づいていなかった。
おじいさんはアカネと話しながら奥へ進んでゆくと、なんと川の上流近くに出た。
「みなさん、ここを降りれば河原に戻れます」
「やった、戻れる!」
「うん」
「ひろしさんのお陰で助かりました」
「ぅん」
「いやぁ、一時はどうなる事かと……」
「それにしても水属性が無いとララガは強いな……」
黒ちゃんは回復薬を飲みながら河原の先を見てみると、ララガがゆっくりと密林から出てくるのが見えた。
そしてララガは体の炎を消すと、静かに川下へ向かって歩いていった。
「ララガも諦めたようだな。危なかった……。後で水属性の両手剣を鍛冶屋で作っておこう……」
黒ちゃんはララガが去っていくのを確認するとみんなに言った。
「みなさん、ララガは去ったようです。では改めて神殿に向かいましょう」
「「おー!」」
みんなは下に伸びた蔦を滑り降りて地面に降りると、回復薬を飲みながら神殿へ向かった。




