表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
47/116

ひろし、選別する

 猿の集落を出発した一行は密林を抜けて河原に出ると、イリューシュは立ち止まっておじいさんに言った。


「ひろしさん。この河原に、あの丸い石がありますよ」


「ほんとうですか!」


「ええ、ご覧になってください」


「ありがとうございます」


 おじいさんがイリューシュに頭を下げると、目の前には丸い石だらけの河原があった。


 おじいさんは走っていって石を1つ拾うと、笑顔になりながらイリューシュに言った。


「イリューシュさん、素晴らしい石です! これなら変化球も思い通りに投げられそうです」


「ふふふ。ひろしさんの嬉しそうな顔を見ると、わたしも嬉しくなります。どうぞ、お好きなだけ拾ってくださいね」


「あぁ、ありがとうございます!」


 おじいさんは嬉しそうにしゃがむと、丸い石を手に持ちながら野球ボールに近いものを集め始めた。


 すると黒ちゃんが空を見上げながらイリューシュに言った。


「イリューシュさん、そろそろ日が落ちます。炎獣(えんじゅう)ララガが出るかもしれません」


「あ、そうでしたね。では、わたしたちは先に神殿への道を開いておきましょう」


 イリューシュはそう言うと、石を拾っているおじいさんに言った。


「ひろしさん、わたしたちは日が落ちる前に神殿の入口を(ふさ)ぐ石像の魔物を倒してきます」


「あ、すみません。もう大丈夫です。一緒に行きます」


「いえいえ、ひろしさん。せっかくですから良い石を拾っていってください」


 すると、をれを聞いていたアカネとめぐも言った。


「そうだよ、じいちゃん。あたしたちに任せて!」

「うん。おじいちゃん、ゆっくり石を選んで」


 みんなが笑顔でおじいさんに言うと、おじいさんも笑顔でみんなに頭を下げた。


「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて、急いで石を集めて追いかけます」


「気にしないでよ、じいちゃん!」

「せっかくだから、良い石さがしてね」

「ひろしさん、お気になさらず」

「ぅん」

「では先にいきますね」


「みなさん、すみません。すぐに追いつきます」


 みんなが次々とおじいさんに声をかけると、おじいさんは深々と頭を下げて見送った。



「ききっ!」


「おや?」


 おじいさんが猿の声に気づいて振り向くと、両手に丸い石を持った子猿がいた。


「あぁ、さっきの子猿さん」


「きっ」


 子猿は嬉しそうにおじいさんに近づくと、丸い石を両手で差し出した。


「この丸い石をくれるのかい」


 子猿は嬉しそうにおじいさんを見つめると、おじいさんは笑顔で丸い石を受け取った。


「これは丁度(ちょうど)いい石ですね。ありがとう子猿さん。それにしても、1人で付いてきてしまったのかい」


 おじいさんは辺りを見渡してみたが、子猿の仲間がいる気配はなかった。


「1人で来てしまったようですね。では一緒に神殿に行きましょうか。帰りに送っていきますね」


 おじいさんは笑顔で子猿に話しかけると、子猿は嬉しそうにおじいさんをよじ登り始めた。


「おやおやおや。ははは」


 おじいさんは子猿を抱えて頭を撫でると、ふと呟いた。


「子猿さんを抱えていては、何かあった時に石が投げられないか……。そうだ」


 おじいさんはジャージのファスナーを少し下げると子猿に言った。


「どれ、この中にお入りなさい」


「ききっ」


 子猿は嬉しそうにおじいさんの(ふところ)へ入ると、ファスナーの上から、ひょっこりと顔だけ出した。


「ははは、これなら大丈夫」


 おじいさんがそう言うと、子猿は嬉しそうにおじいさんの顔を見上げた。


 おじいさんは子猿の頭を撫でると、また石を拾い始めた。



 その頃、イリューシュたちは石像の魔物と対峙(たいじ)していた。


 石像の魔物は2体1組で剣を構え、神殿の入口を守るように(ふさ)いでいた。


 アカネは石像を見ると少し嬉しそうにイリューシュに言った。


「へへへ。イリューシュさん、この石像強そうっすね」


「ええ。動きは遅いですが、一撃が強いので気をつけてくださいね」


「おっけーっす!」


 アカネはそう言うと、石像の1体に走っていった。


「あたしが一番乗りだっ!」


 アカネは素早く石像の(ふところ)へ入ると剣を持っている腕を(つか)んで足を(はら)いにいった。


「やぁああ!!」


 ゴツッ!!


「いったぁーー!!!」


 なんと、石像が重すぎて重心を動かせず、アカネは(かた)い石像の足を()っただけになってしまった。


「くっそーー!!」


 アカネは素早く後ろへ下がると、再び構えをとった。


 すると後ろから大熊笹が現れてアカネに言った。


「アカネさん、敵は相当重いでしょうな。しかし動きが遅いですから、やり方次第では倒せるでしょう」


「まじで?」


「我々には滑るアレがあるではありませんか」


「え? あ、そっか!」


 大熊笹はそう言いながら石像の前へ出ると、2体の石像がゆっくりと同時に襲いかかってきた。


 ゴ、ゴゴゴゴ


 2体の石像は剣を振りかぶると、一直線に大熊笹に剣を振り下ろした。


 ビュゥゥウウ!!


「ほいっ」


 ドガン! ドガン!!


 大熊笹は剣をヒラリとかわすと、剣は2本とも地面に突き刺さった。


 ゴゴゴゴゴ、ゴゴゴゴゴ


 するとなんと、2体の石像は自分の重さが災いして、剣が深く地面に刺さってしまい、剣が抜けなくなってしまった。


 それを見た大熊笹は左側にいる石像へ走り込みながら、みんなに言った。


「わたしは左の石像と戦いますから、右の石像をお願いします!」


「「はい!」」


 剣が抜けずに身動きが取れなくなった右側の石像には、黒ちゃんが走り込み、イリューシュとナミが弓を引き、めぐが詠唱を唱えた。


「おぉぉおりゃぁあ!」

 ドガン、ドガン!!


 ヒュッ……、ズドドドドドドドド

 ヒュッ……、ドドドッ


「聖なる雷を司る者たちよ。我にその慈悲と慈愛を与えたまえ。清く正義の力をもって嘆願する。あの者に裁きの雷を!」


 ズガガガガガン!!


 総攻撃を受けた右側の石像は(たま)らず剣から手を離すと、近くにいた黒ちゃんにタックルを食らわせて吹き飛ばした。


 ドガン!

「ぐわっ!」


 ズザァァアアア


 そして黒ちゃんを吹き飛ばした石像は、ゆっくりと走り出してナミに向かっていった。


 ズシン ズシン ズシン


「「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!!」」


 それを見た大猿たちはナミを取り囲むように守りを固めると、アカネは後ろから石像に近寄りながら言った。


「へへへ。そんな遅い走り方じゃコレの餌食(えじき)だな。くらえっ!」


 アカネはバナナの皮を出現させると、石像の足元に投げつけた。


 ズシン ズシン ツルッ!


 ドゴゴォォオオオン!!!


 石像は豪快にすっ転んだ。


「グゴゴオォォ」


 石像は転んだ衝撃で大ダメージを食らってHPが無くなり、静かに消滅していった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ