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ひろし、懐かれる

 ー 密林の奥 ー


 ナミとイリューシュはアカネたちを追い越して密林の中の道を走っていたが、ナミが急に立ち止まった。


「ぁ、このちかく」


 ナミは耳をすますと、かすかな鳴き声を聞いた。


「きぃききぃ」


「イリューシュさん、こっち」


「はい」


 ナミは(やぶ)をかき分けて中へ入っていくと、数匹の子猿たちが遊んでいるのが見えた。


「ぁ、ぃた」


「きききき!」


 ナミに驚いた子猿たちは集まって抱き合うと、ナミは弓と矢を地面に置いてしゃがみ込み、笑顔で静かに子猿たちに話しかけた。


「ごめんね、子猿さん」


 ナミはそう言うと、仰向(あおむ)けにゴロリと寝転んだ。


「ききっ」


 それを見た子猿たちはソロリソロリとナミに近づいていくと、1匹の子猿がナミの指先を()め始めた。


 その様子を見ていたイリューシュは笑顔で小さく頷くと、ナミに言った。


「ナミさんの言ったとおり、大猿たちは子猿たちのために縄張(なわば)りを守りたくて攻撃していたのですね」


「ぅん。イリューシュさん、みんなを止めて、ここに連れてきて」


「わかったわ!」


 イリューシュはアカネたちと合流するために道を戻った。



 その頃、アカネと大熊笹は大猿たちを足止めして投げ飛ばし続けていた。


「熊じぃ! これじゃキリがないよ!」


「そうですな! 猿たちには申し訳ありませんが、そろそろトドメを……」


 その時、遠くからイリューシュの声がした。


「みなさん、攻撃を止めてください!」


「「ええ!?」」


 アカネたちは驚いたが、大猿たちは攻撃を止めなかった。


「イ、イリューシュさん! そんな事言っても!」


「みなさん、走ってこちらへ!」


「「はい!!」」


 アカネと大熊笹は、おじいさんたちと一緒に大猿の攻撃を()けるように走り出すと、大猿たちも猛然と追いかけてきた。


 めぐは走りながらイリューシュに言った。


「イリューシュさん! 大猿が怒ってるみたいなんですけど!」


「大丈夫です! はやくこちらへ!」


「は、はい!」


 ダダダダダダダダダダ!


 イリューシュはみんなを先導するように走ると、密林の中をナミの元へと向かった。


 ズザザザザザザ


 そしてイリューシュを先頭に密林の奥に入り込むと、そこには子猿たちと遊んでいるナミがいた。


「あ! ナミさん!」


 めぐが驚いてナミに言うと、ナミがみんなに言った。


「こっちにきて、はやく」


「はい!」


 全員そのまま走ってナミの後ろへ行くと、大猿たちは立ち止まって様子を伺い始めた。


 ナミは大猿たちの群れを見ると、1匹の子猿を()でながら優しく話しかけた。


「ぉ猿さん、怖がらせてごめんね。敵じゃないょ」


 大猿たちはナミの言葉に急に大人(おとな)しくなると、ゆっくりとナミの近くにやってきてナミ取り囲んだ。


 そして、ナミと遊んでいた子猿たちが親猿たちに飛び移ると、大猿たちはナミを警戒しながらも静かになった。


 それを見たナミが立ち上がると、大猿たちに話しかけた。


「ぁりがとぅ。これたべて」


 ナミはそう言うと、大量のレググリ銘物(めいぶつ)「溶岩ようかん」を出現させて包装(ほうそう)を開け、大猿たちの前に置いた。


「「「ききききききー!!」」」


 大猿たちは子猿たちと一緒に喜ぶと、嬉しそうに溶岩ようかんを食べ始めた。


「「うきき! うきききき!!」」


 その様子を見ていたアカネはめぐに言った。


「猿たち、めっちゃ嬉しそうに食べてるね」


「うん。っていうか、ナミさん凄いね。やっぱりテイマーになったほうがいいよね」


「だね。ってか、もしかして、あたしが戦う気迫(きはく)を出してなかったら、大猿たちもあんなに必死に襲いかかってこなかったのかも……」


 それを聞いた大熊笹も言った。


「わたしも反省しなくてはなりませんな。戦うべき相手を間違えるのは、武道の研鑽(けんさん)を積む者として恥じなければなりません。我々も食べ物を差し上げましょう」


 大熊笹はそう言うと、アイテム欄から食べられそうな物を地面に置いた。


 それを見たアカネも下を向きながら大熊笹に言った。


「熊じぃ、確かにそうだね。あたしも食べ物をあげるよ」


 アカネはそう言うと、ドラゴン大福を3箱地面に置いて箱を開け始めた。


 それを見ていためぐはアカネに聞いた。


「あれ、アカネ。いつの間に、そんなにドラゴン大福を?」


「あっ!!」


 アカネは慌てて2箱アイテム欄に戻すと、それを見ていたイリューシュが笑いながらアカネに言った。


「ふふふ。アカネさん、大丈夫ですよ。戸棚(とだな)から無くなったら、いつも黒ちゃんさんが補充してくださっていますから。ふふふ」


「え!? いや、あのぅ。ははは。ストックっていうか……。黒ちゃん、ごめんな」


「はっはっは、良いのだアカネ。わたしも大福を喜んでもらえれば嬉しいのでな」


「な、なんだよ黒ちゃん」


 アカネは再びドラゴン大福の箱を出現させると、恥ずかしそうに箱を開けて、大猿たちに差し出した。



 大猿たちは(もら)った物を食べ終わると、落ち着いた表情に変わって日常を取り戻したかのように振る舞い始めた。


 数匹の大猿はナミの周りに集まっていき、ナミの頭の上にいるアルマジロを珍しそうに見つめた。


 するとその時、一際(ひときわ)小さな子猿がおじいさんのところへやってきた。


 おじいさんは子猿に気づくと手を差し出して一緒に遊び始めた。


「ははは。小さいお猿さんだなぁ」


 子猿は楽しそうにおじいさんと遊んでいると、急におじいさんに抱きついた。


「おやおや」


 おじいさんは子猿を(かか)えあげて頭を()でると、子猿は急に安心したようにウトウトし始めた。


「あぁ、眠いのかな。ははは」


 おじいさんは笑顔で子猿を()で続けると、子猿は子供の赤ちゃんのようにスヤスヤと寝始めた。


「ははは、かわいいなぁ」


 おじいさんは笑顔で優しく子猿を撫で続けると、子猿は眠りながら嬉しそうな表情になった。


 ◆


 しばらくして、おじいさんたちは再び神殿に向けて出発することにした。


 すると、ナミの周りには体格の良い大猿が5匹、ナミを護衛するように取り囲みながら付いてきた。


 アカネはそれを見ながらめぐに言った。


「めぐ、ゴツい猿たちがナミさんのボディガードみたいになってるね」


「だね。ナミさん要人扱(ようじんあつか)いみたいになってる」


 おじいさんは眠っていた子猿を優しく起こして地面に置いたが、子猿はおじいさんをよじ登ってきた。


 おじいさんは子猿の頭を撫でると、再び地面に戻しながら言った。


「この先は危ないかもしれないから、お父さん、お母さんのところへ帰りなさい」


「き……」


 子猿は小さく返事をすると、その場から動かなくなった。


 それを見たおじいさんが笑顔になると、子猿も嬉しそうにして、おじいさんを見つめた。


「元気に生きるのですよ」


 おじいさんは子猿に手を振ると、おじいさんはみんなと一緒に出発した。


 子猿は出発するおじいさんを嬉しそうに見つめ続けた。

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