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ひろし、追いかける

 アカネとめぐがナミのところへ行くと、うさぎや鹿、ヤギやひつじがナミにくっつくように座っていた。


 それを見ためぐがナミに尋ねた。


「ナミさん、すっごく(なつ)かれてますね。良いエサあげたんですか?」


「ぅうん。なんにも、ぁげてない」


「「ええっ!」」


 アカネとめぐが驚くと、ナミの様子を見ていた一人のプレイヤーがナミに(たず)ねてきた。


「す、すみません! どうやって、こんなに(なつ)かれたんですか?」


「待ってただけ」


 すると突然アカネが叫んだ。


「あ! さっきのエサ売り!!」


 なんと、ナミに話しかけたプレイヤーは、アカネに(えさ)を高く売りつけたエサ売りだった。


「あ! さ、さっきのお客さん!」


「エサ、100プクナで売ってるじゃんかー! (だま)したなー」


「す、す、すみません! お金はお返しします!」


 エサ売りはそう言うとアカネにプクナを返した。


 返金されたアカネは一瞬で機嫌(きげん)を治すと、逆にエサ売りに尋ねた。


「てか、なんでエサ高く売ったりしてたの?」


「すみません。実は私、テイマーになりたくて」


「テイマー??」


 すると、近くで大熊笹と一緒にヒツジにエサをあげていたイリューシュがアカネに説明した。


「テイマーは、動物やモンスターたちを手懐(てなず)けて、バトルに使う職業なんです。この島の神殿で転職できるんですよ」


「ええ!? そんな事ができるんすか! 今まで見たことなかった」


「ええ。テイマーは動物やモンスターから(なつ)いてもらえる人じゃないと転職できないレアな職業なんです。わたしもダメでした」


「イリューシュさんでも?? なかなか難しそうな職業っすね」


 するとエサ売りがアカネに言った。


「そうなんですよ! なので、動物に(なつ)いてもらえるように訓練していたんです」


「そうかぁ。だからナミさんが(うらや)ましいんだ」


「そうなんです。私、毎日毎日いろんな食べ物を世界中から買ってきて動物に(なつ)いてもらおうと頑張っているのですが……」


 エサ売りは少しションボリしながら話を続けた。


「なかなか(なつ)いてくれず、お金も底をついてしまって……」


「なるほどな。それでエサを高く売ってたのか」


「はい、すみません……」


 すると突然、ナミがエサ売りに言った。


(なつ)いてもらおうって、ぉもうから、だめ」


「えっ!?」


 エサ売りが驚くとナミは続けた。


(なつ)いてほしいのは、人間のわがまま」


「わがまま?」


「ぅん」


「???」


 エサ売りが困惑していると、めぐがナミに言った。


「ナミさん。そんなに懐かれるならテイマーになったら良いんじゃないかな」


「ていまー?」


「動物とかモンスターを手懐(てなず)けて戦う職業なんだって」


「ぅうん。どうぶつを戦わせたらかわいそう」


「そっか。そうだよね」


 すると、それを聞いたイリューシュがナミに話した。


「ナミさん、テイマーは動物やモンスターを戦わせるだけじゃないんですよ。敵を守ることもできるんです」


「てきを、まもる?」


「ええ。テイマーなら弱った敵の動物やモンスターを『追い払う』ことができるんです。つまり敵の動物やモンスターを殺さずに追い払えるんです」


「あ、それぃぃ」


「ふふふ。ナミさんならそう言うと思いました。もちろん、味方の動物やモンスターもHPが減ったら呼び戻せますよ」


「それなら、テイマーになる」


 ナミがそう言うと、周りにいた動物たちも嬉しそうに鳴いた。



 おじいさんたちは、ひとしきり動物たちと触れ合うと村から神殿へと向かって出発した。


 ◆


 (しばら)く歩いて密林に入ると、アカネはの生き物の声に気がついてイリューシュに尋ねた。


「イリューシュさん、これモンスターの声っすかね」


「ええ。この島には独自(どくじ)生態系(せいたいけい)があって、動物やモンスターたちがお互い縄張(なわばり)り争いをしたり、捕食(ほしょく)したりしてるんです」


「え! それなら、プレイヤーには襲いかかってこないんすか」


「いえ、モンスターの縄張りに入って、敵だとみなされれば、プレイヤーにも襲いかかってきますよ」


「やっぱ、そうだよなぁ」


 アカネが肩を落とすと、めぐがイリューシュに尋ねた。


「モンスターの縄張りって見てわかるんですか?」


「それが残念ながら分からないんです」


「じゃあ、気をつけないといけないですね」


「そうですね。でも動物やモンスターたちは攻撃する前に大声をあげますから分かりますよ」



「「ギャギャギャギャギャ!!」」



 イリューシュがそう言った瞬間、動物が大声をあげるのが聞こえた。


 それを聞いたアカネが構えを取りながら言った。


「さっそく来た! 木の上に何かたくさん居る!」


 イリューシュも弓を構えると、振り返ってみんなに言った。


「おそらく大猿(おおざる)の群れです。人と同じくらいの大きさで素早いので気をつけてくださいね!」


「「はい!」」


 そこにいた全員が戦闘態勢を整えると、大熊笹が前に出てきてアカネに並んだ。


「アカネさん。相手が人と同じくらいの大きさの猿なら稽古(けいこ)丁度(ちょうど)いいかもしれませんよ」


「なるほど、そうだね熊じぃ!」


 アカネは嬉しそうに(うなず)くと大熊笹と一緒に前へ出た。


 そして、その後ろで黒ちゃんが剣を構えると、少し離れておじいさんたち遠距離武器のメンバーとめぐも準備を整えた。


「「ききききーーー!!」」


 大猿たちは一斉に木から飛び降りて来ると、アカネと大熊笹に襲いかかった。


 アカネはニヤリと笑うと、大猿の一団へ向かって走り出した。


「へへへ。思ったより速くないな!」


 アカネはそのまま1匹の大猿の胸元の毛と腕を掴むと、勢いよく投げ捨てた。


「ぎゃぎゃ!!」


 大熊笹も襲いかかってくる大猿たちを投げ捨てていた。


「はい!」

「よいしょ」

「はい、こっちも」

「それ!」


「「ぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」」


 大猿たちは投げられてHPを減らしながら少しづつ密林の奥へ下がっていったが、攻撃は止めなかった。


 アカネは襲いかかってくる大猿を投げ捨てながら大熊笹に言った。


「熊じぃ、なんかおかしいよ」


「そうですな。あの大猿たち、そこまで強くないのに戦うのをやめませんな」


「なんか、死ぬ気でかかってくるんだけど!」


 アカネがそう言うと、ナミとイリューシュがダッシュで横を走り抜け、大猿たちを追い抜いて密林の奥へと入っていった。


 すると大猿たちは一斉に攻撃を止め、ナミとイリューシュを追いかけていった。


「「ぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」」


 それを見たアカネは大熊笹に言った。


「熊じぃ、やばい! 猿たちを止めないと! イリューシュさんたち、どうしたんだろ!?」


「何があったか分かりませんが、とにかく行きましょう!」


「うん!」


 アカネと大熊笹は走ってナミとイリューシュを追いかけると、おじいさんたちもアカネと大熊笹の後を追った。

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