アカネ、値切る
その頃、海とつむぎはコーシャタの園芸専門店で買い物をしていた。
「あっ! きれいな鉢。かわいいね」
「え、う、うん!」
「海くんだったら、こっちの鉢と、あっちの鉢、どっち選ぶ?」
「え、あ、あの……。こっちかな」
「じゃあ、こっちにしようかな。うふふ」
つむぎは嬉しそうに鉢を手に取ると、レジへ持っていった。
「あ、ちょっとまって! ぼくが選んだし、ぼくに買わせて」
「え、どうして?」
「どうして? え、いや……、ぼくも、つむぎちゃんのお手伝いできたらな……、って」
「え、ほんとに!?」
つむぎが笑顔になると、海も照れくさそうに笑った。
◆
二人は楽しそうに会計を済ませると、つむぎが海に言った。
「ねぇ海くん。次は、どこかでおごらせてね」
「え、いや、いいよ大丈夫。気にしないで」
「でも……。あ、そうだ海くん、カフェに行かない? おごるから」
「え、いいよいいよ。カフェじゃ鉢より高くなっちゃうから……」
海が遠慮していると、つむぎの後ろに鬼の形相をしたルルが立っていた。
ルルはコーヒーをすするジェスチャーをすると「行け」と合図した。
「つ、つむぎちゃん、ありがとう! カフェに行こう。ぼくも出すから月乃珈琲店に……」
「あ、知ってる! うん! 行こう」
すると海の視界にメッセージが現れた。
『ベンドレさんから1億プクナが贈られました』
「ええ!? いっ、いちおく!?」
海は慌ててベンドレからのメッセージを開いた。
『これで、おごってやるのだ』
「ええっ! パンケーキのダブルでドリンクつけても1000プクナですけど!」
海が思わず声を出すと、つむぎが心配そうに言った。
「だ、大丈夫? 海くん」
「うん、ごめん、つむぎちゃん! か、カフェにいこう!」
「うん!」
2人は笑顔で月乃珈琲店へ向かった。
ルルは「やれやれ」といった表情になるとベンドレに尋ねた。
「ねぇベンドレ、いくら送信したの?」
「え? ああ、1億プクナだ」
「はぁ? この世界で豪邸建つじゃん! そんな大金驚いちゃうでしょ!」
するとベンドレの視界にメッセージが現れた。
『海さんから1億プクナが贈られました』
「おぉ、海くんからプクナを返されてしまった……」
「そりゃそうでしょ。カフェなんて2人で食べても3000プクナくらいなんだから、1万プクナくらいでいいのよ」
「あ、ああ、そうか、すまん。あまりにもプクナが貯まり過ぎていて感覚が……」
ベンドレは再び1万プクナを海に送信した。
「もぅ、行くよ。あたしもパンケーキ食べたい」
「そうか、では行こう」
ベンドレとルルも月乃珈琲店へ向かった。
その頃、おじいさんたちはレスカカルの入口付近にある村に到着していた。
村からは島の中心にある火山と、それを取り囲むように密林があるのが見えた。
イリューシュは密林を指差すと、みんなに言った。
「あそこに見える密林の東側に、転職できる神殿があります」
それを聞いたアカネが嬉しそうに言った。
「おぉ~、なんかワクワクするなぁ。動物とかにも、たくさん会えそう」
「ふふふっ、動物にはたくさん会えますよ。猛毒のリスとか、麻痺攻撃するウサギとか、一撃で気絶させられるクマとか、火を吹くライオンとか……」
「ええっ! なんか動物ヤバくないっすか? なんだか会いたく無くなっちゃったなぁ」
「「はははは」」
みんながアカネの言葉に笑うと、思い出したようにイリューシュがおじいさんに言った。
「ひろしさんが探している丸い石も途中の河原で拾えますよ」
「ああ、それは良かったです。たくさん持って帰ります」
おじいさんはそれを聞いて嬉しそうに笑うと、ナミが何かを見つけてイリューシュに尋ねた。
「イリューシュさん、ぁれなに?」
「え?」
イリューシュがナミの指差すほうを見ると、人だかりの中に動物たちがいた。
「あ、あれはレスカカル名物の『ふれあい動物コーナー』ですよ。見に行きますか?」
「ぅん。みたい」
すると、めぐとアカネも言った。
「わたしも見たいかも」
「あたしも!」
「じゃあ、みんなで見に行きましょう!」
「「はーい!」」
みんなは、ふれあい動物コーナーへ向かった。
動物コーナーの近くに行くと、数人が競争するように動物のエサを売っていた。
「はい、エサ買ってくださいねー。エサを買うと、たくさん動物が寄ってきますよー」
「こっちのエサは朝とってきたばっかり! 新鮮だよ!」
「こっちのエサは安いよー」
それを見ていたアカネとめぐは少し困った顔で話した。
「え? なんかエサ売ってる人多くない?」
「うん。どうしよう。誰から買えばいいんだろう」
すると1人のエサ売りがアカネに近づいてきた。
「お嬢さん、このニンジンなら、うさぎがたくさん寄ってきますよ!」
「ええ、ほんと? じゃあ、ください」
「はい、1000プクナになります」
「高っ! 高くない?」
「え、じゃあ500プクナで」
「安っ! 一気に半額??」
「ええい、じゃあ400プクナで!」
「買った!」
「まいどありー」
アカネはニンジンを数本もらうと、400プクナを送金した。
エサ売りが居なくなるとアカネはめぐに言った。
「ってか、最初から400プクナで売ればいいのにな」
「きっとアカネみたいに『高い』って言えない人には1000プクナで売るんだよ」
「きったねーなー。まぁ、あたしは安く買えたからラッキーだな!」
めぐとアカネはそんな事を話しながら動物コーナーに行くと、コーナーのすぐ近くにエサの自動販売機があった。
めぐはそれを見つけるとアカネに言った。
「あれ、自動販売機もあるんだ。わたし販売機で買おうかな」
「あ、ほんとだ……、あっ!!」
なんと自動販売機には「動物のエサ100プクナ」の文字があった。
「あのエサ売りにダマされた!」
アカネはキョロキョロとさっきのエサ売りを探したが、すでに姿は無かった。
「くっそー、どこにも居ないや」
「ははは、やられちゃったね……。でもニンジンだったらウサギも喜ぶよ」
「うーん、そうかぁ……。そうだね」
めぐがアカネを慰めていると、一匹のウサギがアカネが手に持っているニンジンを欲しそうにしていた。
それに気づいたアカネはしゃがんでウサギにニンジンをあげた。
「はい、ニンジンだよー。食べて食べて」
カリカリカリ……
アカネがニンジンを差し出すとウサギはカリカリとニンジンを食べ始めた。
「ははは、かわいいなぁ」
すると、アカネのニンジンにつられて他のウサギもやってきた。
「あ、もう一匹来た! ははは」
アカネは嬉しそうに両手でニンジンを食べさせると、さらにもう一匹ウサギがやってきた。
「うわ、ニンジンすげーな! 買って良かったかも。なぁめぐ?」
アカネが嬉しそうにめぐを見ると、めぐは自動販売機で買ったエサの袋を開けながら微妙な表情をしていた。
それを見たアカネは不思議そうな顔でめぐに尋ねた。
「めぐ、どしたの?」
「え? あ、えっと、なんかごめん」
めぐはエサの袋に入っていたニンジンを取り出した。
「あっ、ニンジン!」
「なんか、ニンジンもけっこう入ってた……」
「くっそぉ……。あのエサ売り、見つけたら許さないぞ」
アカネが膨れっ面そう言うと、めぐが驚いた表情でアカネに言った。
「ちょ、アカネ! あれナミさんだよね」
めぐの視線の先には、やたら動物に懐かれているナミがいた。
「え? あ、うわ! めっちゃ懐かれてる!」
「ちょっと、わたしたちも行ってみようよ」
「うん」
めぐとアカネはナミのところへ向かった。




