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ひろし、ぐにゃぐにゃと戦う

 レスカカルへ向かう船の上で、アカネはおじいさんのジャージの胸の部分に何か付いているのを見つけた。


「あれ、じいちゃん。その胸のワッペンみたいなの、なに?」


「あ、ははは。このジャージは、ベストピッチャー賞を頂いた副賞でもらったジャージなんです。ボールとグラブが描いてあるんです」


 アカネがワッペンをよく見るとグラブとボールの刺繍(ししゅう)に「The Best Pitcher」と書いてあった。


「え? ザ、ベスト、ピット……、ピ?」


 すると黒ちゃんがアカネに教えた。


「アカネ、それはピッチャーと読むのだ」


「ああ、なるほどな! それにしても、じいちゃんまた緑のジャージだね」


「えぇ、社長さんが同じ色にしてくださったみたいで」


「へぇぇ、そうなんだ。そのジャージって防御力高いの?」


「ええっと、ちょっと待ってくださいね」


 おじいさんはステータスを確認してみた。


 物理攻撃力 6884

 魔法攻撃力 なし

 物理防御力 1000(TBPジャージ■)

 魔法防御力 1000(TBPジャージ■)

 素早さ   500(TBPジャージ■)

 器用さ   500(TBPジャージ■)


 【全デバフ無効/全属性ダメージ無効】


「ええと……、カッコにTBPジャージと書かれているのですが……」


 それを聞いたイリューシュがおじいさんに説明した。


「カッコはステータスを付与できる防具の名前です。TBP……、はおそらく『The Best Pitcher』の略ですね」


「あぁ、なるほど。そうすると、物理防御力と魔法防御力が1000づつで、素早さと器用さも500づつあります」


 それを聞いたアカネは驚いておじいさんに言った。


「ええ!? すごいな、じいちゃん!」


「えぇ、ありがたいジャージを頂きました。ははは」


 おじいさんは恥ずかしそうに頭を()いた。



 アカネがおじいさんのジャージを物珍(ものめずら)しそうに見ていると、めぐがイリューシュに尋ねた。


「イリューシュさん、さっき神殿を解放すれば昇格転職できるって言ってましたけど、私も転職できるんでしょうか」


「ええ。先日の戦いでステータスポイントが溜まっていますよね」


「え、はい。貯めていた分の合わせて6000くらいあります」


「では恐らく昇格の条件は満たせそうですね。なりたい職業はありますか?」


「ええと、実は騎士になりたいんです」


「「ええ!?」」


 それを聞いたみんなが驚くと、めぐは首を振りながらイリューシュに言った。


「あ、いえいえ、この間の戦いで盾を持っていた騎士が居たじゃないですか。あれ良いな思って」


「なるほど、たしかに盾は攻撃を防げますからね」


「はい。ホワイトドラゴンと戦った時も防御できない怖さを知ってしまって。ははは」


「それでしたら、転職の方法は2つありますよ。ステータスをそのままにして騎士に並行転職するか、魔法騎士に昇格転職するか」


「え、どう違うんですか?」


「並行転職の場合は、魔法を使うときは(つえ)、物理攻撃の時は武器、と持ち替える必要があります。でも魔法騎士は武器で魔法を発動できます」


 その時、めぐの頭の中には可憐(かれん)な女性の騎士が、剣の先から雷の魔法をに放つ姿が思い描かれた。


「イリューシュさん、昇格します!」


「でも昇格転職すると、ステータスポイントは0になって100ポイントを振り分けるところからやり直しですけど、大丈夫ですか?」


「ぃやりますっ!!」


 めぐが目をキラキラさせながらイリューシュに言うと、イリューシュは笑顔で答えた。


「うふふ。ナミさんも昇格転職したらステータスが戻ってしまいますし、あとで一緒にステータスポイントを(かせ)ぎに行きましょう」


「はい、お願いします!」

「ぉねがいします」


 近くにいたナミも一緒に頭を下げた。


 そんな事を話していると、船頭のプンペが甲板(かんぱん)に上がってきて大声で言った。


「大変だ! 大きなタコが船を狙っているぞ!」


 それを聞いたイリューシュはみんなに言った。


「みなさん、メインクエスト第3章のはじまりですよ。頑張りましょう!」


「「はい!」」


 ザバァァアアア!


 その瞬間、船の外に巨大なタコが姿を現した。


 それを見たアカネが言った。


「でかっ! ってか、あたしあんなの投げられないよ!」


 すると大熊笹がアカネに言った。


「アカネさん、投げられなくてもアレがあるではありませんか」


「え? アレ? ……、ああ! あれか! おっし!」


 アカネと大熊笹はお互いに(うなず)き合うと、タコから離れるように走り出した。


 タコは触手を高く上げると、黒ちゃんに向かって叩きつけた。


 ビターン!!


 しかし、黒ちゃんは素早く()けると、そのまま触手に斬りかかった。


「この程度の攻撃など()らわん!!」


 ペッ! ベチャッ


 その瞬間、タコは黒ちゃんに墨を吐いた。


「ぐわっ!」


 黒ちゃんは墨をまともに食らい、真っ黒になって視界が(せば)まった。


「な、なぜ、いつもわたしだけが!」


 黒ちゃんが目をこすりながら後ろへ下がると、めぐが詠唱を始めた。


「聖なる雷を司る者たちよ。我にその慈悲と慈愛を与えたまえ。清く正義の力をもって嘆願する。あの者に裁きの雷を!」


 ズガガガガガン!!


 めぐの大呪文が炸裂(さくれつ)すると、タコは大きくのけぞった。


「ナミさん、今です!」

「ぅん!」


 イリューシュがナミに指示を出すと、イリューシュとナミは同時に矢を放った。


 ヒュッ……、ズドドドドドドドド!

 ヒュッ……、ドドドッ!


 そこへ、おじいさんの石も飛んでいった。


 シャァァアア……、ベチッ!


「グォォォオオオオオ!!」


 おじいさんの石はタコの眉間(みけん)(とら)え、タコは悲鳴をあげながら海へ(もぐ)っていった。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……、ブシャァァアア!


 ベチャン!


 すると突然タコが海から飛び出し、船の甲板に着地した。


 おじいさんたちは戦闘態勢を整えると、タコは触手でめぐを狙った。


 ビュゥゥウウ


 その時、アカネと大熊笹が走り出し、タコの顔に向かって何かを投げつけた。


 べちょ


「グォォォオオオ」


 タコは苦しそうに前に倒れるとアカネは嬉しそうに大熊笹に言った。


「熊じぃ! 効いたね!」


「はっはっは! くさい排泄物はタコにも効きますな!」


 アカネと大熊笹はさらにタコに走り込むと、今度は前に倒れたタコの目に向かって目潰しを投げつけた。


「やぁ!」

「ほい」


 ブワッ!


「グ、グ、グォォオオ」


 タコは目をやられると、すかさず黒ちゃんがタコに斬りかかった。


「うぉぉぉおお!」


 ズバッ ズバッ ズバッ!!


「聖なる雷を司る者たちよ。我にその慈悲と慈愛を与えたまえ。清く正義の力をもって嘆願する。あの者に裁きの雷を!」


 ズガガガガガン!!


 そこへ、めぐが追い打ちをかけると、


 ヒュッ……、ズドドドドドドドド!

 ヒュッ……、ドドドッ!


 イリューシュとナミが追撃した。


「グォォオオオオオ!」


 さらに、おじいさんが剛速球のストレートが唸りを上げて飛んでいった。


 シャァァアアァァアアア……、ベチン!


「グォォオオオオオ!」


 おじいさんの石がタコの頭を撃ち抜くと、タコは大きくのけぞりながら静かに消滅し始めた。


『100ポイントのステータスポイントを獲得しました』

『メインクエスト 第三章 完』


「「やったー!」」


 タコを倒したみんなは抱き合って喜んだ。

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