ひろし、第3章
その頃、ピンデチの村でクエストの手伝いを請け負っているロビと後輩のミツとゆぅは、ピンデチ周辺で報告されていたプレイヤーキラーを捕獲して質問していた。
(プレイヤーキラー:他のプレイヤーを殺すプレイヤー)
ロビはプレイヤーキラーの男性に、丁寧に質問を始めた。
「今、動画を録画しています。プレイヤーIDも確認しましたので、逃げないで質問に答えてください」
「ちっ。わかったよ」
「なぜ、そんなにプレイヤーを殺すのですか」
「プレイヤーを消せば、金がもらえるんだよ」
「お金? 誰から?」
「は? 言えるわけねぇだろ」
「まぁ、そうですよね。それにしても、そのレッドドラゴンの剣はどうやって手に入れたのですか? 戦った感じではレッドドラゴンと戦えるほどでは無さそうですが」
「ちっ……。強ぇ人たちと一緒に行ったんだよ。鍛冶屋さえ解放されてりゃ、素材あれば作れるだろ」
「ふむ。その強い人たちもプレイヤーキラーですか?」
プレイヤーキラーの男性は少し驚くと、下を向いたまま何も話さなくなった。
それを見たロビはミツとゆぅに言った。
「これはどうやら組織がありそうですね。イークラトで監視しましょう」
「はい」
「はぃ」
ロビは2人にそう言うとプレイヤーキラーの男性にも言った。
「あなたの事は、あとで被害者の証拠を集めてフリマアプリの運営とゲームの運営に通報させていただきます」
「え、ちょっ!!」
「人に迷惑をかけたのですから、償わなければなりません」
ロビがそう言うと、プレイヤーキラーの男性は急に怒りを顔に滲ませ、剣を抜いてロビに襲いかかった。
「てめぇ、調子に乗りやがって!!」
それを見たゆぅはプレイヤーキラーの男性の前に踏み込むと、一瞬で剣を弾き飛ばした。
キンッ!
「なっ!」
弾き飛ばされたレッドドラゴンの剣が地面に転がると、ゆぅは即座プレイヤーキラーの男性の足を払って倒した。
スザッ!
「うっ!」
そしてゆぅは、そのままプレイヤーキラーの男性を盾で地面に押しつけた。
プレイヤーキラーの男性は地面に倒されながら大声で叫んだ。
「くそっ! 殺せ! おまえら、プレイヤーキラーの俺を殺したいんだろ!?」
それを聞いたロビは静かに答えた。
「いえいえ、ステータスポイントも大した事なさそうですから殺す意味がありません」
「は?」
するとミツがプレイヤーキラーの男性に弾かれたレッドドラゴンの剣を差し出した。
「どうぞ」
「え?」
剣を受け取ったプレイヤーキラーの男性が少し狼狽えるとロビが言った。
「僕たちイークラトへ転移したいので、剣を納めて戦闘状態を解除してくれませんか?」
それを聞いたプレイヤーキラーの男性は下を向きながら剣を納めると、悔しそうにしながら答えた。
「……ちっ。わかったよ。おまえら強すぎるわ……。くそっ」
それを見たロビたちは軽く頭を下げてイークラトへ転移していった。
ー 翌日の昼 ー
海はつむぎと待ち合わせの約束をしたコーシャタ行きのバス停にやって来た。
海はキョロキョロとつむぎを探していると、海の後ろから声が聞こえた。
「海くん」
「は、はいっ!!」
海が振り向くと、笑顔のつむぎが居た。
「こんにちは、海くん。この服、選んでもらったんだ。どうかな」
「あ、は、あの! つむぎちゃん、その、と、とっても可愛いですっ!!」
「良かった。ありがとう」
「え、あ、はい!!」
「じゃあ、バスに乗ろう」
「は、はいっ!」
海は大量の汗をかきながらロボットのようにバスへ向かい、つむぎと一緒にバスに乗り込んだ。
その様子を、遠くからベンドレと仕事を終わらせてきたルルが見守っていた。
ルルは海を見ながらベンドレに言った。
「海くん、ガッチガチじゃない。大丈夫かしら」
「うむ。なぜか私も緊張してきたぞ」
「は? なんでよ」
「い、いや、緊張が伝わってくるのだ」
「ふぅん。あたしは何だかワクワクしてきたわ。……あ、バスが出るわよベンドレ!」
「よし!」
ベンドレはビッグスクーターのモービルを出現させると、ルルと2人乗りをしてバスの後をついていった。
ベンドレはビッグスクーターを運転しながらルルに尋ねた。
「ルル、コソコソとついていくなんて良いのだろうか……」
「うーん。なんか海くんってさー、とってもいいコなんだけど不器用で気になっちゃうのよね」
「まぁ、たしかにそうだな」
「だから、今日のデートも心配でさぁ」
「うむ。そのとおりだな」
「あたしたちもデートでコーシャタに居れば、もし海くんが何も喋れなくなったりとか、ヤバそうになっても偶然を装って助けてあげられるじゃない? ダブルデートみたいに」
「ダ、ダブル、デ、デート!?」
「は? なに? あたしとデートじゃ嫌なの?」
「え、いや、よ、喜んで!」
ルルは笑顔になるとアイテム欄の中を探し始めた。
「ベンドレさぁ、いつもセンス悪い鎧着てるから、今日はコレね」
ルルはベンドレに服を送信した。
「あ、ああ、センスが悪いか……」
ベンドレは片手で操作して服を受け取ると服を装備した。
ポワン
それを見たルルは嬉しそうに言った。
「やっぱ似合ってるわ! タートルネックにクラシカルなグレースーツ。ベンドレに似合うと思ったんだよねー」
「ありがとうルル。最近は在宅勤務ばかりでこのような服を着てなかったから嬉しい」
「うふふ。じゃあ、あたしも大人コーデしないとね」
ポワン
ルルはワイドパンツにタートルネックのニット、そしてジャケットを羽織ってベンドレに合わせた。
それをミラーで見たベンドレは嬉しそうにルルに言った。
「ルル、大人っぽい服も似合うな」
「まぁね。うふふ」
ルルは嬉しそうに笑うとアクセサリーを選び始めた。
その頃、おじいさんはゲームにログインして、いつものようにG区画の家にやってくると、みんなが迎えてくれた。
「じいちゃん、おはよう! あ、もう昼か」
「あ、おじいちゃん」
「ひろしさん、こんにちは」
「ああ、ひろしさん。こんにちは」
「ひろしさん、こんにちは」
「みなさん、こんにちは」
おじいさんは深々と頭を下げると、みんなに話した。
「みなさん、実はレスカカルの島に行きたいと思っているのですが、もしお暇でしたら……」
それを聞いたイリューシュは笑顔で答えた。
「メインクエストの第3章ですね、ひろしさん」
「はい、そうなんです。野球ボールみたいな丸い石もあるみたいで……」
それを聞いたアカネは笑顔で立ち上がって言った。
「メインクエストいいね! みんなで行こうよ!」
すると、めぐと大熊笹と黒ちゃんも笑顔で答えた。
「行こう!」
「いいですな」
「行きましょう!」
「みなさん、ありがとうございます」
みんなはしばらくお喋りを楽しむと、レスカカルへ行く準備を整えてG区画の家を出発した。
◆
おじいさんたちがG区画の家を出て海へ向かおうとすると、前からナミが歩いてきた。
ナミに気づいたイリューシュはナミに声をかけた。
「こんにちは、ナミさん」
「こんにちわ、イリューシュさん。弓習らいにきた」
「きゅうきゅう」
ナミの頭の上のアルマジロも一緒に挨拶するとイリューシュはナミに尋ねた。
「あ、ナミさん、ちょうどいいわ。一緒にレスカカルへ行きませんか?」
「レスカカル?」
「ええ。レスカカルに行って神殿を開放すれば昇格転職できるんです。大弓も使えるようになりますよ」
「ほんと? なら、いきたぃ」
「じゃあ、一緒に行きましょう!」
「ぅん。みなさん、よろしくおねがぃします」
「よろしくな!」
「よろしくね」
「よろしくおねがいします」
「よろしくおねがいしますね」
「宜しくおねがいします」
こうして一行は、ナミと一緒にG区画の海岸から船でレスカカルへと向かった。




