海、一発
その頃、おじいさんはログアウトしていて、テーブルで公式ガイドブックを読んでいた。
「ええと……、レスカカルは……」
おじいさんは、丸い野球ボールのような石が沢山あるというレスカカルの場所を探して地図を見ていた。
「あぁ、ここか。……ええと、島のようだなぁ」
おじいさんが地図でレスカカルを調べると、大きめの島にレスカカルと書いてあった。
「どうやって行くのだろうか……。ええとレスカカル、レスカカル……」
おじいさんは目次を頼りにレスカカルを探すと、メインクエストのページにレスカカルの事が書いてあった。
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【メインクエスト第3章】
南の島、レスカカル
レスカカルは岩に囲まれている大きな島だ。島に入るには、船で島の中へ続く洞窟に入ろう。
洞窟の入り口には触手を叩きつける墨吹きタコが待ちうけている。倒してレスカカルへの道を開けばクエスト完了だ。
墨吹きタコは遠距離攻撃ができるプレイヤーがいると攻略しやすいぞ!
レスカカルには密林の中に転職ができる神殿がある。必ずチェックしておこう!
ボス:墨吹きタコ
報酬:1000プクナ
SP:100
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おじいさんはそれを読むと、ウンウンと頷いて呟いた。
「なるほど、メインクエストの第3章だったのか。これは進めなければなりませんね」
おじいさんは静かに攻略本を閉じると、歯を磨きに洗面所へ向かった。
ー シャーム ー
イークラトでモリブデン・ソードを買ってもらった海は、ルルとベンドレと一緒にゴールデンシャワーのある丘へと向かっていた。
途中、ベンドレが海にアドバイスした。
「海、シャーム・タイガーの一撃は強いが、攻撃は遅い。だが、お前の使う両手剣も攻撃が遅い」
「で、ではどうしたら……」
「先にシャーム・タイガーに攻撃をさせるんだ。避けてから斬ればいい。アクションゲームの基本だ」
「なるほど! ぼく、とにかく斬りかかってました」
「はっはっは、それではダメだ。敵に攻撃させて、避けてから斬って離れる。その繰り返しが基本だぞ」
「はい! 頑張ります!」
「それと、石を拾っておくんだ」
「石ですか?」
「シャーム・タイガーは群れでいるのだろう? 石を当てて、1頭づつ誘き出して倒すんだ。これも基本だぞ」
「分かりました、やってみます!」
海たちは話しながら道を進んでいると、シャーム・タイガーの群れが見えてきた。
海は石を1つ拾うと、ベンドレに言った。
「ベンドレさん、石を投げてみます」
「よし、がんばれ」
「はい」
シュッ……、トン
海は石を投げると、1頭のシャーム・タイガーに当たった。
シャーム・タイガーは海のほうを見ると、眼光鋭くゆっくりと歩いて近づいてきた。
「き、来た……」
海が呟くと、ベンドレが海に言った。
「シャーム・タイガーの攻撃は引っ掻きと噛み付き、そして突進だ。3つしかない。よく見れば避けられるぞ」
「はい! 頑張ります!」
海はモリブデン・ソードを構えると、ゆっくりとシャーム・タイガーに近づいていった。
「ガァァオオオオ!」
シャーム・タイガーが海を威嚇すると、海は念仏を唱えるように呟いた。
「敵の攻撃をよく見ろ。敵の攻撃をよく見ろ。敵の攻撃をよく見ろ。敵の攻撃をよく見ろ……。よし!」
海はモリブデン・ソードを構えながら小さく笑うと、シャーム・タイガーが噛み付き攻撃を仕掛けてきた。
「ガァァオオオオ!」
ガブッ!!
シュゥゥゥウウ……
海はシャーム・タイガーに噛み付かれて静かに消滅していった。
「「ええーー!?」」
ルルとベンドレは消滅した海に驚いてその場を離れると、ピンデチへと転移していった。
◆
ルルとベンドレが急いでピンデチの時計台に転移してくると、海が下を向いたまま立ち尽くしていた。
ベンドレは海に近づくと優しく話しかけた。
「大丈夫だったか」
「すみません。敵を良く見すぎて噛まれました」
「うむ。そのようだったな。避けなければならなかったな」
「すみません、おれが下手すぎてご迷惑を……。せっかく教えてくださったのに」
「海、今日は私がとことん付き合おう。もう一度行くぞ」
「え、いいんですか?」
「もちろんだ。お前は不器用で心配だ」
「す、すみません、ありがとうございます!」
するとルルがベンドレに言った。
「ベンドレ、ごめん。あたし明日の午前中に撮影入ってるんだよね。お肌の調子が悪いと困るから、今日は帰るね」
「わかった。頑張ってな」
「ありがと」
ルルは海にも話しかけた。
「海くん、あなた一生懸命でいいわね。がんばるのよ」
「は、はい! ありがとうございます!」
「じゃ、またねー」
ルルは手を振りながらログアウトしていった。
ベンドレはルルを見送ると腕を組んで少し考え込んだ。
そして、おもむろに海に言った。
「海、恐らくお前は両手剣に向いてない」
「ええ!?」
「私も両手剣を使うから分かるが、攻撃が遅いが故に敵の攻撃を先読みして剣を振る必要があるのだ」
「そうですね……」
「だが勘違いしないでくれ。これは、お前が悪いという訳ではない。相性の問題だ」
「相性……?」
「お前は逆にシャーム・タイガーに噛まれるまで動かなかった。それは恐怖で反射的に逃げないということだ」
「え?」
「普通の人間は反射的に逃げてしまうのだが、お前は逃げずに最後までシャーム・タイガーを見ていただろう」
「はい……」
「ならば、お前は大盾と槍が向いている」
「槍ですか?」
「そうだ、槍にも種類がある。盾を持たずに両手で操る攻撃的なスピア、大きな盾で身を守りながら戦う防御主体のランスだ。お前はランスが合うはずだ」
「ランス……」
「よし、では今からまたイークラトに行ってモリブデン・ランスと大盾を買ってやる。行くぞ!」
「え、ええ! ベンドレさん、それは申し訳ないです!」
「気にするな。つむぎさんは私の大恩人、ひろしさんのお孫さん。お前に頑張ってもらわないと困るのだ」
「わ、わかりました! がんばります!」
「よし、ではイークラトへ行くぞ!」
「はい!」
こうして海はベンドレ一緒にイークラトへ行ってランスを購入し、再びシャームタイガーに挑戦した。
ー 午前4時 ー
「や、やりましたベンドレさん! シャームタイガーを全部倒しました!!」
「お……? おう。やったな海」
ベンドレが眠い目を擦りながら答えると、海は満面の笑みで頭を下げた。
「ありがとうございます! ベンドレさんのお陰です! 一生ついていきます!!」
「え? あ、そ、そうか……」
海はランスを装備し、数時間にも渡る激闘の末にシャーム・タイガーの群れを倒したが、ベンドレは立ちながら半分寝ていた。
「海、すまんが私は今、寝落ちしてログアウトしてしまわないようにするので精一杯だ。もうゴールデーンなんとかは手に入れられるな」
「はい! あそこにあります!」
「よし、では私は寝て大丈夫だな」
「はい!」
「じゃあ、寝るな。おやすみ……」
「はい! お休みなさいませ! ありがとうございました!」
海が直角にお辞儀をすると、ベンドレは虚ろな目をしたまま手を振ってログアウトしていった。
ベンドレがログアウトすると、海は走ってゴールデンシャワーを取りに行った。
「うわぁ、すごい綺麗だ! きっと、つむぎちゃんも喜んでくれる!」
海は嬉しそうにすると、ゴールデンシャワーをアイテム欄に仕舞っていった。




