ひろし、出撃する
おばあさんたちが準備をしていると、総指揮官の山口がおばあさんのところへ駆け足でやって来た。
そして、おばあさんの肩で小さくなっているドラゴンに敬礼して話し始めた。
「ドラゴン殿。作戦で弓部隊の移動やドラゴン殿の背中に乗って空から攻撃や指揮をしたいのですが、可能でしょうか」
「はっはっは! 私は洋子様の眷属。洋子様が指示してくだされば何でも致します」
それを聞いたおばあさんはドラちゃんに言った。
「ドラちゃん、もし大丈夫そうだったら協力してあげて」
「承知しました洋子様。では、この方に協力いたしましょう!」
「ドラゴン殿、ありがとうございます!」
山口はドラちゃんに頭を下げると、また階段を少し上がって、みんなに大声で言った。
「各隊の隊長、副隊長、弓部隊はこちらへお願いします! 詳細な作戦の説明を致します!」
各隊から隊長、副隊長、先発隊のメンバーが出てくると、山口は木下の地図を片手に作戦の説明を始めた。
「みなさん、敵のアジトは中央の広場を中心に5つの通路が接続してします。そして、北西に高い山があります」
山口は地図に描かれた北西の山を指差した。
「敵はおそらくこの山に弓兵を配置すると思われます。こちらの弓部隊は先発隊としてドラゴンに乗り、上空から敵の弓兵を狙撃します。その間、分隊は待機していてくだい」
山口は次に地図の真ん中を指差して説明を続けた。
「そして、中央の広場が敵本陣と思われます。弓の先発隊は山の弓兵を殲滅後、山に着陸して本陣を狙撃します」
山口は5つの入り口を順番に指差しながら、さらに続けた。
「その後、私の指示で各分隊は中央へ向かって前進してください。交戦地域では転移が使えないとのことですので、弓の先発隊はドラゴンで各隊へお戻しします」
山口は話し終えると、隊長たちを見渡して尋ねた。
「何か質問のある方は、いらっしゃいますか?」
「はい」
「はい、どうぞ」
「もし、どこかの通路が破られた場合はどうしますか」
「そのまま作戦を続行します。私が各分隊長からの情報を元に判断しますので、もし撤退の必要があれば連絡します」
「はい」
「はい、どうぞ」
「かなりの人数差がありそうですが、どう思いますか」
「はい。こちらは60名ほど、敵は200名ほどです。しかし、作戦がうまく行けば先発隊が60名ほどの弓兵を減らします」
「先発隊が撃たれたら……」
「可能性はゼロではありませんが、こちらが有利です。弓は空へ撃つことが苦手です。逆に上空から撃てば威力が増します」
「魔法使いが居たら、危ないのではないでしょうか」
「はい、その通りです。ですので先発隊として敵の意表を突き短期戦で山の上を制圧します」
「はい」
「はい、どうぞ」
すると近くで話を聞いていた1人の女性賢者が前に出た。
「私は賢者のツーリ。私もドラゴンに乗せてください。魔法なら防御魔法陣で弾いてみせます」
「「おお!」」
するとそれを聞いていた黒猫がおばあさんに尋ねた。
「洋子殿。我も弓部隊に参加し、ご友人のナミ殿やドラゴンをお守りしたいのですが良いでしょうか」
「まぁ、それはいいわね」
「承知しました、洋子殿」
黒猫はおばあさんの了承を得ると、骸骨の魔法使いの姿になって立ち上がった。
「では、我も防御役として同行しましょう」
「「おお!!」」
「主人の洋子殿の命によりプレイヤーに手は出せませんが防御なら致します」
それを聞いたおばあさんは黒猫に言った。
「猫ちゃん、みんなをお願いするわね」
「はい、洋子殿。必ずやお役に立ってみせましょう」
山口は2人を見て大きく頷いた。
「お2人とも、助かります。宜しくお願い致します」
そして隊長たちを見渡しながら尋ねた。
「ほかに質問のある方はいらっしゃいますか?」
「「……」」
「では、質問が無いようですので、これより作戦を開始致します」
山口は地図を見せながら分隊長たちに言った。
「この5つの通路、どちらでもお好きなところを選んでください」
すると、おばあさんたちの分隊長マユは町から一番近い通路を選んだ。
イリューシュも、二番目に近い通路を選んだ。
そして他の分隊長も通路を選び、山口は全員が通路を選んだ事を確認すると、分隊長たちに言った。
「では、それぞれの通路を宜しくお願い致します。弓部隊が出発しましたら、担当の入り口近くで隊を待機させてください」
「「はい!」」
山口は階段に戻ると全員に一際大きい声で言った。
「これより作戦を開始します!! 勝利して帰り、喜びを分かち合いましょう!!」
「「「おおーーー!!!」」」
すると、山口は駆け足で屋敷の扉の前に行き、扉を開けた。
「弓部隊こちらへ!」
すると、弓使い6名と女性賢者のツーリ、そして黒猫とドラちゃんがやって来た。
「我ら弓部隊がこの戦いのカギを握ります。共に頑張りましょう」
「「はい!」」
山口は弓部隊と並ぶと、息を大きく吸い込んで腹から声を出した。
「では出撃いたします! みなさん続いてください!」
「「はい!!」」
山口は屋敷の扉を開けて外へ出ると、メンバー全員を引き連れて村の外へ向かって歩いていった。
ザッザッザッザッザッザッ
みんなと一緒に歩いていたアカネは、少し笑いながら黒ちゃんに話しかけた。
「なんか熊じぃと黒ちゃんの装備が白いのが新鮮。白ちゃんだな」
「はっはっは。実はわたしも慣れないのだ。漆黒の剣士から純白の剣士になってしまった」
「ははは、なんか少女漫画に出てきそうだな……、ん? あれ、あの人って……、あ! タマちゃん!」
なんと集合時間に遅れたタマシリが申し訳無さそうにしながら前から走ってきた。
するとタマシリを見つけたイリューシュが、タマシリに声をかけた。
「Hey, Tamashiri!」
「Oh, イリューシュ! 遅くなってごめんなさい!」
「「あれ、日本語!!」」
驚くみんなに黒猫が説明をした。
「わたしの周りに翻訳の魔法をかけました」
「すげーな骸骨さん!」
アカネが骸骨の黒猫に驚くと、タマシリは慌てた表情でイリューシュに言った。
「寝過ごしてしまったよ。はは」
「あら、タマシリさん。まだ出発前なので、良かったら私のチームに参加してくれませんか。少し人数が少ないんです」
「もちろんだよ。ではイリューシュに付いていくね」
「ええ。でも、わたしは先に弓部隊として出撃しますから、ひろしさんたちと一緒に居てくださいね」
「オーケー!」
タマシリはおじいさんたちに笑顔で挨拶をして合流した。
イリューシュは山口にボイスチャットで報告した。
「山口さん。イリューシュ隊、武闘家が1人合流しました。宜しくお願いします」
「了解しました。宜しくお願いします」
こうしてタマシリがイリューシュ隊に加わった。




