ひろし、バリードレに到着する
ー 黒の屋敷 ー
おじいさんたちが黒の屋敷に辿り着くと、扉の前に袴姿のイチが立っていた。
そして、おじいさんに気がつくと、おじいさんたちを中へ案内した。
「こんばんは。さ、どうぞ中へ」
「こんばんは。今日は宜しくおねがいします」
おじいさんたちは屋敷の中に入った。
中に入ると大勢のプレイヤーたちが待機していた。
そして先に到着していた、おばあさんたちの姿もあった。
奥にいた翠はおじいさんたちに気づくと、近くにやって来てイリューシュに声をかけた。
「こんばんは。一度お会いしましたね」
「ええ」
すると翠は頭を深く下げていった。
「先日はすみませんでした。自分たちが踊らされてるとも知らずに」
「翠さんですね。見事な弓さばきでした。今日は味方です。一緒にがんばりましょう」
イリューシュが笑顔でそう言うと、翠は下を向きながら答えた。
「ありがとうございます。今日はよろしくおねがいします」
「はい、宜しくおねがいします」
イリューシュは翠に手を差し出すと、翠は少し笑顔になってイリューシュと握手を交わした。
ー 深夜0時 ー
翠は入り口の広間の階段を数段上り、集まったプレイヤーたちに大声で言った。
「みなさん、今日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。宜しくおねがいします」
「「おねがいします」」
「敵のアジトは山の中にあります。しかし残念ながら、詳細な情報はありません」
すると元自衛官の山口が手を上げて言った。
「失礼致します。発言しても宜しいでしょうか」
翠は、迷彩服を着た老人を見て普通ではないと思い、山口を招いた。
「どうぞ、こちらへいらしてください」
山口は翠の横へ行くと、翠に自己紹介をした。
「はじめまして。私は元陸上自衛隊、陸曹長、山口と申します。我々はここへ来る途中、上空からアジトと思われる山間を観察しました」
「ほんとうですか」
「はい。中央の広場へ5つの道が接続し、敵は弓兵3、近接武器5、その他2ほどの割合です。そして全員が黒装束でした」
「なるほど、黒装束なら間違いなく敵のアジトですね」
すると山口は木下を呼んだ。
木下はスケッチした地形を山口に手渡すと、山口は翠に見せた。
「これが上空から見た地形です」
それを見た翠は、スケッチの細密さに驚いて言った。
「みなさん、慣れていますね」
「いえいえ、ただの老いぼれです。少しばかり戦闘訓練の経験があるだけで……」
「山口さん。もしよろしければ、総指揮を執っていただけないでしょうか」
「えっ!?」
「わたしは少人数での戦闘は得意ですが、大人数での戦いは経験がありません。どうかお願いできないでしょうか」
それを聞いた木下が山口に言った。
「山口殿、これだけの人数を動かすには経験者でなければできません。訓練で数々の指揮をサポートしてきた経験のある山口殿が適任かと」
「木下……。しかし我々は新参者。それに私も陸曹長ではあったが下士官。指揮を執るなど……」
すると翠がそこに居る全員に問いかけた。
「みなさん! この中で大人数での戦いを経験したことのある方は居ますか?」
「「……」」
翠は山口のほうを向いて言った。
「この中には誰ひとりとして大人数での戦いの経験があるものは居ません。おそらく敵にも居ないでしょう。山口さん、お願いできませんか」
「……。わかりました」
それを聞いた翠は全員に宣言した。
「みなさん、これから、こちらの山口さんが全体の指揮をとります! 宜しくお願いします!」
ザワザワ……
すると山口は緊張した面持ちで、敬礼をしながら大声で言った。
「元陸上自衛隊、陸曹長、山口と申します!! これより総指揮を執らせて頂くこととなりました。宜しくお願い致します!!」
「「「おおーーー!!」」」
パチパチパチパチ
凛々しく敬礼する老兵の姿にプレイヤーたちは歓声を上げた。
◆
こうして総指揮官となった山口は、まず、見分けがつくように黒色の装備のメンバーは鎧や服の色を白に変更するように指示を出した。
そして全プレイヤーを5つの分隊に分けて、隊長と副隊長を決めるように指示を出した。
すると、プレイヤーたちは友達や中の良い者同士で集まって分隊を結成し、隊長と副隊長を決めた。
■イリューシュ隊 隊長イリューシュ、副隊長黒ちゃん
■マユ隊 隊長マユ、副隊長ロビ
■翠隊 隊長翠、副隊長タツ
■マサ隊 隊長マサ、副隊長ラッキー
■サクラ隊 隊長サクラ、副隊長ラオウ
さらにその他に、弓使いだけで編成した弓部隊を結成した。
弓部隊にはイリューシュや翠、ナミなど弓が使えるプレイヤーが参加した。
山口は指示をし終えると、階段の上から全員に言った。
「今決めました5つの分隊でそれぞれ5つの道から攻め込みます。隊長。副隊長を先頭に5列に並んでください」
すると全員隊長を先頭に5列に並んだ。
「ありがとうございます。分隊長、副隊長のみなさん、ボイスチャットが出来るようにフレンド申請をお願いします」
分隊長と副隊長たちは山口とフレンド交換をした。
「まずは、弓部隊が最初に山岳地帯の制圧をします。弓部隊のみなさんもフレンド申請おねがいします」
弓部隊のプレイヤーたちも山口とフレンド交換をした。
フレンド交換を終え、準備を整えた山口は凛々しい顔つきで全員を見渡して言った。
「これより、作戦の説明をいたします。まずは弓部隊で北西の山の制圧を試みます。そして制圧に成功したら5つの通路から突撃して頂き、そして中央本陣の制圧を試みます」
「「はい!」」
「北西の山を制圧しましたら、弓部隊に参加しているプレイヤー様をお戻しします。各通路のリーダーの合図で突撃してください」
「「はい!」」
山口は作戦の説明を終えると、一度深呼吸をして姿勢を正した。
そして力強く敬礼をすると、声を張って宣言した。
「この作戦は、私の全責任のもと指揮を執らせて頂きます! 宜しくお願い致します!」
「「「おおーーー!!!」」」
プレイヤーたちは指揮官の言葉に声を上げた。
プレイヤーたちは士気を高めて準備を始めると、イリューシュはナミを見つけて話しかけた。
「ナミさん。弓部隊、一緒に頑張りましょうね」
「ぅん、がんばる」
「キュゥキュゥ」
頭の上にいるアルマジロも嬉しそうに頷いた。
「あら、アルマジロもご一緒なんですね」
「ぅん。このコだけ起きてきた。いつも守ってくれる」
するとイリューシュはアルマジロの頭を撫でながら言った。
「あなたも一緒に頑張りましょうね」
「キュゥキュゥ」
アルマジロはイリューシュをクンクンした。
「ぁと、うさぎもぃる」
ナミはウエストバッグのチャックを開けた。
「あら、うさぎ」
「呼んだら助けてくれるって」
「うふふ。ナミさんは、助けてくれるお友達が多いですね」
「ぅん。たすかる」
イリューシュとナミが話していると、翠が階段から降りてきて哲夫のところへやって来た。
「おじいちゃん、わたし別の分隊になっちゃうから、これ受け取って」
『翠さんから豪炎の壺20個が贈られました』
「翠ちゃん、ありがとう。これは?」
「敵に投げつけると、燃え上がって、けっこう大きなダメージを与えるんだ」
「そうか、それは助かるよ翠ちゃん」
「敵が突っ込んできたら使ってね。おばあちゃんも助けてあげて」
「ああ、分かった」
こうして哲夫も準備を整えた。




